立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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入隊試験編

第17章 二次試験その8 決着

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「あれは、水属性のオーラ⁉︎オーラに水そのものを取り込むなんて、初めて見ました。」

メタルの剣が変貌を遂げたのを見たレイチェルが、驚きの声を上げた。
自らも属性を持った魂気を練り出すために、炎や氷に対するイメージを固め、自分の中でオーラの波長に変化をつけるトレーニングは重ねてきた。だが、身のまわりにあるものの力を取り込んでオーラの質を変える戦い方は、初めて目にするものであった。

「へぇ!やるじゃん、少年!」

シェリーは真剣な眼差しでメタルの力を見定めながらも、嬉しそうな表情だ。

バルトスは黙ってメタルの姿を見ていた。
このような戦い方は、彼が教えたものではない。メタルが彼の中に持つピースを組み合わせてたどり着いた、一つの形なのだろう。
表情は変えないまま、静かに頷いた。

「へっ、新しい曲芸か⁉︎今更ムダだぜ!」

ギーメルもまた、剣を構えるメタルの様子を観察する。どこか遠くを見つめるような目をして、恍惚とした表情を浮かべている。肩や膝の力が自然と抜けた、一層しなやかな構えだ。

「(ビビる必要はない。どうと言うことはねぇ。頭が朦朧として体に力が入らないだけだ。あと少し突くだけで倒れるハズだ!)
オレぁ、まだまだギンギンだぜぇ⁉︎」

己を振るい立たせたギーメルが振りかぶったとき、ある異変が起きた。

メタルはギーメルが拳を放つよりも早く、脱力した構えから流れるような動きで剣を振り下ろしていた。同時に、刀身から無数の魂気の斬撃が放たれる。斬撃は刀身と同じように、水のようにゆらめく青いオーラを纏っている。水の力を宿した刃だ。

「早漏れかぁ⁉︎しゃらくせぇ!」

ギーメルは全身に電流を纏わせ、限界を超えた瞬発力で斬撃の合間を抜いながら、距離を詰めようとする。

そのとき、まるで高所から落ちた水滴が空気抵抗を受けたときのように、水の刃が弾け散り、ギーメルの行手をさえぎった。
分裂した刃がギーメルの体に浴びせられ、高圧のウォーターカッターのごとく皮膚を切り裂いた。

「ぬおおっ!」

ギーメルが苦悶の声を上げて、動きを止める。
ギーメルを苦しめたのは、水の斬撃による痛みだけではなかった。体に纏わりついた水属性のオーラが、漏電を引き起こしていた。ギーメルは『大雷台祭(サンダーカーニバル)』でその身に電流を纏うことができなくなったばかりか、体内に通わせていた電流さえも本来の循環経路を巡ることができなくなり、電光石火の身のこなしを封じられていた。

「ガアアアアァァーー!」

ギーメルは悲鳴を上げて身悶えした。今までの傍若無人ぶりからは想像もつかない姿だった。

だが、かろうじて倒れるのを踏みとどまり、眼光鋭くメタルを睨みつけると、体をのけ反らせながら絶叫し、身に纏わりつく水のオーラを跳ね飛ばした。

「このオレが!このオレが!負けてたまるか!
もう一度だ、『雷光演舞(サンダーダンサー)』!」

今一度体を発光させ、脅威のアジリティでメタルの周りを駆け巡る。

「(さっきはやたらと早く攻撃を繰り出してきやがったが、偶然に決まってる。スピードでかき乱して、急所に一発ぶち込んじまえば、どんな力を使えるようになろうが同じことだ!)」

ティルと接近戦を繰り広げたとき以上のスピードで、ステージを縦横無尽に駆け回った。

ここに来てなお底力を見せてくるギーメルに、
観戦者たちも驚きを見せた。

「まだ分からんな。」

「もう決まったかと思ったんだけどね。あんな奴でも、根性はあるみたいだね。」

ジェノとシェリーが、ギーメルのしぶとさを評した。

「ホント、ゴキブリみたいな奴ですね。メタルさん、次でフィニッシュですー!」

レイチェルはぶれずに辛辣だ。杖を高々と掲げて声を張り上げる。おとなしそうだった第一印象からの豹変ぶりに、バルトスが少したじろいだ表情を見せていた。

メタルは、自身を撹乱するように動き回るギーメルの姿を、ゆったりと眺めていた。
不思議な感覚だ。負ける気がしない。少し前まで、目でとらえることも難しかったはずのギーメルの動きが、ゆっくりに見える。

ギーメルの強烈な膝蹴りで昏倒したダメージ、それを受けてなお心に灯る、こいつにだけは負けたくないという思い。そして、事態を打開する術を必死で模索し、結果、表層意識に浮かび上がった父の教え。それを手がかりに掴んだ、新しい戦い方。

一連の出来事が刺激となり、メタルの脳の情報処理速度は、一時的にではあるが平常時をはるかに上回る状態になっていた。ムダな力が体から抜け、時間の流れがゆっくりになったかのような感覚を覚えていた。深いダメージを負っているにも関わらず、今のメタルは最高のパフォーマンスを発揮できるコンディションにあった。

メタルは微動だにせずに、ギーメルの気配をとらえていた。

やがて、背後に回ったギーメルが仕掛けて来る。

「呆けちまったか、無防備にしやがって!後ろから突いてやるぜぇ!」
 
渾身の右ストレートを放たんとする。狙いは後頭部。

だが、メタルはそれをわかっていたかのように振り向きざま、水の剣を大上段に振り上げる。
背後から飛び込んで来たギーメルに向けて、力強く剣を降り下ろした。

「『タイダルクラッシュ』!」

水の剣を用いての必殺の一撃が、背後から飛び込んで来たギーメルに、カウンター気味に炸裂した。

水の力を宿した衝撃波に飲み込まれたギーメルは、爆風によるダメージに加えて、体中の電気をかき乱された激痛に襲われた。全身を狂ったように大きく震わせた後、顔面から地面に崩れ落ちた。

昏倒して動かなくなったギーメルの姿を見たメタルは、遠い目で空を見上げながら、大きく息を吐いた。

「第3試合、勝者、メタル!」

ガルドの声が会場に響き渡った。



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