元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。

あはははは

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始まりの物語。

始まりの始まりの物語 改

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本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。
願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。
王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。

わあああぁ  人々の歓声が上がる。
そして王は言った。

「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」
誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。

「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」

彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。

そう、愛だったのだ。彼女は愛に飢えていた。
自分のことを避ける父親、自分をおいて行方不明になった母親、優秀だがただ淡々としているだけの使用人。
彼女にとって本当に味方と言えたのは小さい頃、まだ母親が生きていた幸せだった頃からの付き合いの専属侍女のエリナだけ。しかし、エリナは侍女。身分の差がとても大きい。二人の絆がいくら強いとは言えど友人のようにはいかないのである。あくまで、侍女と主人の関係なのである。

それでも幼少期、天啓の日まではまだマシだったと言えるだろう。

そう、悪夢は全てあの日から─。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10歳の時の典型の日、わたくしが授かった「役」は舞姫(バヤデール)でした。役とは、個人の能力の総まとめと言えばわかりやすいでしょうか。例えば、料理人にはレシピと言う能力があります。名前の通り、頭の中に料理のレシピができるようになるんです。一度作ったものの作り方が記されるようになり、レシピの本などが必要ないのです。

役は、個人の職業となることが多いです。そしてわたくしの役は舞姫(バヤデール)だった、ただそれだけです。
舞姫(バヤデール)の能力は聖なる踊りを踊ることで自分の主君を強化するというものです。その力は絶大で、さらに貴重なものでした。王家はわたくしを殿下、今私を断頭台に立たせた本人と婚約させました。

わたくしの家系は代々王家に使える騎士の家柄で、爵位も公爵と言う高い地位でした。王家に絶対の忠誠を誓うわたくしの家に拒否権はありませんでした。
まぁ、止めてくれる方などいませんが…エリナは心配していましたが。そもそも基本的に、殿下との婚約はめでたい事ですからね。

わたくし一人の気持ちなど、どうでもいいのです。そもそもわたくしは殿下が大嫌いでした。とても彼が良い人には見えなかったのです。昔からわたくしには誰がどのような人なのかをなんとなく知ることができました。しかもそれは見事に当たるのですからね。

初めて殿下の姿を拝見したとき、知ってしまったんです。彼の本質を。彼もまだ気づいていない本質を。
きっと今も理解していないのでしょう。彼にとって自分は完璧ですからね。

婚約してからは地獄の日々でした。王妃とはこんなに大変なのかと思うくらいには。王妃教育は血を吐きそうなほどつらく、難しく、覚えることが多かったのです。
それでもわたくしはなんとか日々を過ごしていました。
いくら殿下の本質がだめでも、今はまだそれは出ていないようでした。きっとなにかきっかけが起きることで目覚めるのでしょう。それがなければ確かにいい方だと思います。そう、今の性格はとても好ましいのです。今の、そして性格は。

わたくしを応援してくださっていました。
さらに、私が王妃教育に耐えられたのは、ある方のおかげでもあったのです。そのお方のおかげで私はどんなに救われたか。そのお方のご家族もとても素晴らしい人でした。彼らのおかげでわたくしは日々を過ごしていけました。彼らのようになれるように、いつしかそれがわたくしの心を突き動かしていました。今の今までずっと。わたくしが今ここにいるのはそれが原因でもあるのでしょう。それでもわたくしはこの国を存続させたかった。この国のためになりたい、と彼らを見ていて、彼らに支えられていて思ったのです。少しでも役に立てれば…と。わたくしが支えれば、殿下も今のままでいられるのでは、と。何がいけなかったのでしょうね。
この頃からでしょうか。
そんな上辺だけの彼に恋心を抱いたのは。
女というのは、少し優しくされれば、顔も地位も手に入るなら、ころっといってしまうものなのですよ。

すべてが狂い出したのは、あの少女が来てからでしょうか。わたくしは王妃教育もこなし、殿下が少しでもいい王様になれるようにと、勉強してください、と言い聞かせていた頃のことです。彼らが突然なくなりました。ただ一人を残して…
そして殿下は突然国王となることを強要されたのです。…ちょっといい方が間違っているかもしれません。殿下は親が死んだことを悲しむことよりも自分が王になる事を喜んでいたんですから。前の少なくともその時のわたくしが知っている限りではこんな事を言うような人ではありませんでした。
…彼は自分の本質を表に出すようになっていました。
何故?そう考えているわたくしは見たのです。
悩む私をよそに傍らに並ぶ黒髪の美しい女といちゃいちゃしている殿下を。
高位の貴族なんかは血筋をつないだりするために側室や愛人は作るので、常に広い心で、という王妃教育で習った事を守り、そのときはあまり重く考えていませんでした。それよりも殿下の本質がなぜ出てしまったのか、きっかけの事の方に集中していました。

しかし、皇太子は日に日にその本質をより強固なものにしていきました。勉強のあまり出来ない彼が、更に勉強をしなくなり、黒髪の美しい女と一日を過ごすようになってしまったのです。

もう私の声は聞こえないようで、何を言っても無駄でした。
「この国の未来を担う方なのですから、もう少しお勉強を…」「あまりその人に執着しすぎますと、世間への示しが付きません。」
そういえば必ず殿下の傍らにいる彼女は泣き出しながらこう言いました。
「ひどいわ。いくら私が大事にされてるからって、私と彼を引き離そうとするなんて…!嫉妬する女は見にくいのよ…!」
わたくしは呆れてものが言えませんでした。確かに電化に対してわたくしは淡い恋心をいだいていたのでしょう。しかし、最近はもう、その胸のトキメキを感じません。きっともう、殿下のことは、なんとも思っていないのでしょう。少し、ほんの少しだけ、胸がチクリとするのは気のせいなのでしょうか?
流石にこれは殿下も止めるだろう、と私は思っていました。愛人か側室かの分際で正妃にあの様なことを言ってはならないのです。しかし、わたくしは殿下の愚かさを甘く見ていました。
「あぁ、可愛そうに。本当にこの女は醜いな…もう近寄らないでくれ。可愛そうだ。彼女が可愛くて嫉妬するのは別に構わないが、それを口に出したらいけないんだぞ?それに聞けば、毎日くだらない嫌がらせを続けているようじゃないか。この前なんか、ならず者を雇って彼女を襲わせたとか…こんな非道なことを見逃してやるこの私の寛大さに感謝しろよ。」
「…え?」
「しらばっくれるなんて酷いですわ…」

結果はこのザマ。さらにあろうことかわたくしは冤罪をかけられてしまいました。
それからはろくに彼らに近づくチャンスはなく、しかし彼女からのわたくしへの嫌がらせは数を増し、エスカレートしていきました。
さらに、誰に訴えても彼女を何一つ疑おうとはしなかったのです。あろうことか恋をしたように頬を赤く染める人までいました。
辛くて辛くて…ただひたすらに悲しくて…誰にも信じてもらえないのが悲しくて…愛されないわたくしの心にはたくさんのヒビが入っていきました。

そんなある日、疲れて庭で気に寄りかかってきたときのことです。

「疲れているのですか?」

彼女がわたくしに話しかけてきました。
しかもなんと、気遣いの言葉で。
(今更なんのようですか?) 
わたくしは彼女の手を煩わせないように
「お気遣い、ありがとうございますわ。
ですが私は大丈夫ですわ。」 と答えました。
すると彼女は言いました。
含みのある声色で。

「残念です。(笑)」 

不審に思っていましたら、殿下がいらして私はひざまずきました。
そしたらいきなり体に大きな衝撃と鈍い痛みがはしりました。何が起こったかを理解する前に殿下が言いました。
「あんたには失望したよ。ユリア。
せっかくの彼女の行為を無駄にするなんて、失礼にもほどがないか?さらに、彼女はあの伝説の役、聖女なのだぞ?!」

なんと言うことなのでしょう。運命が、これほどまでに残酷に感じたのはこれが初めてです。

そこからはあっという間でした。気力も何もかも抜け落ちたわたくしは聖女に対する冤罪、聖女、殿下への不敬罪、更には彼らに対する反逆といえ全くの冤罪まで着せられて捕まりました。父は何もしてはくれませんでした。

わたくしに伝えられるまもなく、反逆者の親として処刑されました。いくら愛されてはいなかったとはいえ、わたくしの父親に変わりはないのです。
絶望でもう未来に希望を感じない、いっそここで命を絶とう、そう思いました。

それでもわたくしが今日の今日まで生きていた理由。それは、わたくしなりの、最後の抵抗です。
仮にも殿下の公約者、未来の王妃が、自殺をしたらどうなりましょう?きっと世間では、散々に言われることでしょう。そして、罪に耐えられなくなって…
そういう風に、冤罪を認めさせることになってしまいます。だから終わりが来るその時まで、まっすぐ前を向いていることにしました。

恋愛物の小説ではよくある悪役令嬢の最後。それは、最後まで悪役でいること。一度悪役になったら、なかなかもとのように戻ることはできない。悪役は最後まで悪役なんです。そして悪役は皆、最後まで堂々としているのです。わたくしも同じ悪役なら、いえ悪役なのですから、ね…

そろそろお別れのようですね。最後まで堂々と、接辞を伸ばして…
ギラリと太陽に反射して光る銀の鉄。私の顔の先には真っ暗な箱。怖い…でも…
「ごめんなさい。やっぱりわたくしは最後まで堂々としていることができません。最後くらい、弱音を吐いてもいいですよね。」

「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」

そういえば、私をかつて応援してくれていた彼らの中で唯一生きている彼も、わたくしを助けようとしてくれていたみたいなんです。あの精魂が腐りきった殿下と彼女にバレて謹慎処分らしいですけど。
わたくしは、ちゃんと人の役に立てたのでしょうか。誰かに、世界中で誰か一人には愛されていなのでしょうか。エリナ…早めに契約を切っておいてよかったです。彼女まで巻き添え食らって死ぬことはないでしょう。
父様は…いつもわたくしを避けるとき、悲しそうにしていました。私がもっと歩み寄っていれば、あの目の意味を知ることができたのでしょうか。基本父様は無表情でわからないので… ……今更何を考えているのでしょう。ばからしすぎて逆に笑えてきますね。
この国はこのあとどうなるのでしょうか。
王妃様がなくなってからというもの、わたくしは王妃様の変わりに王妃のする公務をしていました。
そして、殿下の仕事をほとんど全て片付けていました。大丈夫…なわけ無いですよね… わたくしを助けようとした彼がいるので初めは、大丈夫でしょう。しかし、できない分が消化しきれずに溜まっていっていずれ破滅へ向かっていくような気がします。
今更こんなことを考えて…
どうかこの国が、少しでも長く存続しますように…


落ちてくる銀の鉄。赤がよく映えそうです。


最後に見たのは、それはそれは美しく笑う、彼女の顔でした。

もし、やり直せるなら…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どうして…!どうして…!私はユリア様のためなら、死んでも構わないのに…」
罪人の葬られる墓地ですすり泣く一人の女。
彼女の声は、ただ虚しく空に吸い込まれていった…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

同じく罪人の葬られる墓地で。
「私は自分が許せないわ。犯した過ちに気づくのはいつも、全て終わったあとなのね…」
「…っ、…っ、、っ…」
女の涙は止まることを知らないかのように、流れ続けた。
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