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第2話:地獄の朝食
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第2話:地獄の朝食
「……ん、うぅ……」
カーテンの隙間から差し込む朝日が、彼女の瞼を容赦なく叩いた。
身体中が重い。特に喉の奥と、昨夜何度も打ち付けられた腰のあたりが、鈍い痛みを訴えていた。
隣を見ると、夫はまだ穏やかな寝息を立てている。その横顔は、昨夜、壁一枚隔てた向こう側で自分の妻がどんな目に遭っていたかなど、微塵も疑っていない、純粋な男の顔だった。
(……夢じゃ、なかったんだ)
彼女は這い出すようにしてベッドを出た。
浴室の鏡に映る自分。シャワーで必死に洗ったはずなのに、首筋の赤黒い痕は、昨日よりもさらに鮮明に、自らの「不浄」を主張している。
彼女は、一番襟の高いシャツを選び、ボタンを一番上まで留めた。
キッチンに立ち、機械的に朝食の準備を始める。
卵を割る音、トーストが焼ける匂い。いつもと変わらない「幸せな家庭」の音。
けれど、彼女の鼻腔には、まだあの男の放ったシトラスの香水と、どろりとした生臭い匂いが、へばりついて離れなかった。
「……おはよう。おっ、いい匂いだな」
夫が起きてきた。昨夜の酒が抜けたのか、顔色は驚くほど良い。
「昨日は悪かったな、あんなに遅くなって。でもさ、あいつ……親会社のあいつ、本当にすごい奴なんだ。俺たちの将来のことを、自分のことみたいに真剣に考えてくれててさ」
夫はトーストを口に運びながら、嬉々として男を称賛し始めた。
「お前のことも、すごく褒めてたぞ。『あんなに綺麗な奥さんがいるなら、君の仕事のモチベーションも高いはずだ』って。……あいつが推薦してくれれば、俺、本当に本社に返り咲けるかもしれないんだ」
「……そう、よかったわね……」
彼女は、夫と視線を合わせることができなかった。
自分の口が、つい数時間前まで、その「親友」のモノを咥え込まされていたなんて。
夫が喜んでいる「未来」の対価が、今朝、自分の喉を通っていったあの「汚れ」だなんて。
その時だった。
テーブルの上に置いていた彼女のスマートフォンが、短く震えた。
一通のメール。件名はない。
彼女は指を震わせながら、画面を開いた。
そこには、動画ファイルが一つ添付されていた。
再生ボタンを押す必要はなかった。プレビュー画面に映し出されていたのは、
——涙と「白い汚れ」で顔を塗り潰され、白目を剥いて絶頂する、自分自身の醜悪な姿。
画面の下には、一言だけ、メッセージが添えられていた。
『いい朝だな。昨夜の検品結果、旦那にも共有してやろうか?』
「……どうかしたか? 顔色が悪いぞ」
夫が心配そうに覗き込んでくる。
「……何でもないの。ちょっと、立ちくらみがしただけ……」
彼女はスマートフォンの画面を伏せ、無理やり笑顔を作った。
今、この場所で夫が笑っていられるのは、自分が男の所有物になったから。
夫を愛しているからこそ、彼女はこの地獄を、誰にも言えないまま一人で飲み込むしかなかった。
「……ねえ、あなた。今日の夜は、遅くなるの?」
「ああ、今日はあいつ……親友に誘われて、接待の打ち合わせがあるんだ。もしかしたら、お前にも協力してもらうことになるかもしれないって言ってたぞ」
夫のその言葉が、次なる凌辱への招待状であることに、彼女は気づいていた。
彼女の日常は、もう、どこにも残っていなかった。
「……ん、うぅ……」
カーテンの隙間から差し込む朝日が、彼女の瞼を容赦なく叩いた。
身体中が重い。特に喉の奥と、昨夜何度も打ち付けられた腰のあたりが、鈍い痛みを訴えていた。
隣を見ると、夫はまだ穏やかな寝息を立てている。その横顔は、昨夜、壁一枚隔てた向こう側で自分の妻がどんな目に遭っていたかなど、微塵も疑っていない、純粋な男の顔だった。
(……夢じゃ、なかったんだ)
彼女は這い出すようにしてベッドを出た。
浴室の鏡に映る自分。シャワーで必死に洗ったはずなのに、首筋の赤黒い痕は、昨日よりもさらに鮮明に、自らの「不浄」を主張している。
彼女は、一番襟の高いシャツを選び、ボタンを一番上まで留めた。
キッチンに立ち、機械的に朝食の準備を始める。
卵を割る音、トーストが焼ける匂い。いつもと変わらない「幸せな家庭」の音。
けれど、彼女の鼻腔には、まだあの男の放ったシトラスの香水と、どろりとした生臭い匂いが、へばりついて離れなかった。
「……おはよう。おっ、いい匂いだな」
夫が起きてきた。昨夜の酒が抜けたのか、顔色は驚くほど良い。
「昨日は悪かったな、あんなに遅くなって。でもさ、あいつ……親会社のあいつ、本当にすごい奴なんだ。俺たちの将来のことを、自分のことみたいに真剣に考えてくれててさ」
夫はトーストを口に運びながら、嬉々として男を称賛し始めた。
「お前のことも、すごく褒めてたぞ。『あんなに綺麗な奥さんがいるなら、君の仕事のモチベーションも高いはずだ』って。……あいつが推薦してくれれば、俺、本当に本社に返り咲けるかもしれないんだ」
「……そう、よかったわね……」
彼女は、夫と視線を合わせることができなかった。
自分の口が、つい数時間前まで、その「親友」のモノを咥え込まされていたなんて。
夫が喜んでいる「未来」の対価が、今朝、自分の喉を通っていったあの「汚れ」だなんて。
その時だった。
テーブルの上に置いていた彼女のスマートフォンが、短く震えた。
一通のメール。件名はない。
彼女は指を震わせながら、画面を開いた。
そこには、動画ファイルが一つ添付されていた。
再生ボタンを押す必要はなかった。プレビュー画面に映し出されていたのは、
——涙と「白い汚れ」で顔を塗り潰され、白目を剥いて絶頂する、自分自身の醜悪な姿。
画面の下には、一言だけ、メッセージが添えられていた。
『いい朝だな。昨夜の検品結果、旦那にも共有してやろうか?』
「……どうかしたか? 顔色が悪いぞ」
夫が心配そうに覗き込んでくる。
「……何でもないの。ちょっと、立ちくらみがしただけ……」
彼女はスマートフォンの画面を伏せ、無理やり笑顔を作った。
今、この場所で夫が笑っていられるのは、自分が男の所有物になったから。
夫を愛しているからこそ、彼女はこの地獄を、誰にも言えないまま一人で飲み込むしかなかった。
「……ねえ、あなた。今日の夜は、遅くなるの?」
「ああ、今日はあいつ……親友に誘われて、接待の打ち合わせがあるんだ。もしかしたら、お前にも協力してもらうことになるかもしれないって言ってたぞ」
夫のその言葉が、次なる凌辱への招待状であることに、彼女は気づいていた。
彼女の日常は、もう、どこにも残っていなかった。
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