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第1話:再会の火種、日常の終わり
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第1話:再会の火種、日常の終わり
夜の帳が下りた住宅街に、不釣り合いなほど陽気な男たちの笑い声が響いていた。
彼女はリビングの時計が深夜を回るのを確認し、小さく、重いため息をつく。真面目だけが取り柄の夫が、これほど遅く、しかも泥酔して帰宅するのは、結婚して以来初めてのことだった。
(……何があったのかしら)
不安を胸に、ガチャリと鍵が開く音がした玄関へと向かう。
「ごめん、遅くなった……。いやぁ、今日は人生で最高の夜だよ、本当に。」
夫は同僚に肩を貸され、だらしなく顔を綻ばせている。その背後、玄関の街灯に照らされた場所に、「その男」は立っていた。
仕立ての良いダークネイビーのスーツを、皺一つなく着こなした長身の男。街灯の逆光で顔は影になっていたが、その立ち姿だけで、夫の会社の人間とは明らかに違う「質の良さ」が伝わってきた。
「初めまして。彼とは学生時代からの友人で……現在は、彼の勤める会社の親会社に籍を置いております。今日はつい、話し込んでしまって」
男が名乗った瞬間、彼女の心臓は、まるで氷水を直接注ぎ込まれたかのように凍りついた。
その声の響き。低く、鼓膜を優しく撫でるような、記憶の底にこびりついて離れない甘い低音。
(……嘘、でしょ……そんな…)
目の前にいるのは、彼女がこの世で「一番見られたくない、会いたくない」と思っていた男だった。十数年前、若さゆえの過ち、あるいは行き場のない情熱に任せて身を投げ出した、あの一晩だけの相手。彼女が夫と出会う前、まだ「清廉な妻」という皮名を持たず、危うい遊びに身を焦がしていた頃の、消し去りたい記憶の象徴。
「……あ、妻です。いつも主人がお世話になって……」
震える声を必死に押し殺し、彼女は深く頭を下げた。視線を合わせることができない。合わせれば、自分の内側にある醜い過去がすべて暴かれ、今の平穏な生活が砂の城のように崩れてしまうような気がした。
夫を寝室へ運び、ベッドに横たえるまでの間、彼女の背中には常に男の視線が突き刺さっていた。男は「手伝いますよ」と紳士的に振る舞いながら、夫の身体を支える際、わざと彼女の指先に自分の指を重ねてきた。
その瞬間、肌に走った不気味なほどの熱。彼女は思わず手を引っ込めたが、男は動じることなく、昏い愉悦を宿した瞳で彼女を見つめていた。
「……彼、随分と張り切っていましたよ。親会社の人間とパイプができたって。彼の出世は、私のさじ加減一つなんです」
寝室を出る際、男が囁いたその言葉は、明確な警告だった。
夫が規則正しい寝息を立て始めると、二人はリビングへと戻った。
「……コーヒー、淹れますね。すぐにお帰りになるでしょうけど」
彼女は逃げるようにキッチンへ入り、豆を挽き始めた。ガリガリと豆を砕く音が、今の自分の理性を削る音のように聞こえる。手が震えて、豆が数粒、床にこぼれた。
「忘れるわけないだろ。あの夜のこと」
背後から届いたのは、丁寧な敬語を完全に脱ぎ捨てた、かつてのままの傲慢な声だった。
彼女の肩が、目に見えて大きく跳ねる。
「……何のことでしょうか。人違いです。……お願いですから、もう帰ってください」
「とぼけなくていい。……君のその声、今でも耳に残ってるよ。あの狭いアパートで、俺の下で何度も狂ったみたいに鳴いていた……あの声をね」
かつての卑猥な記憶を、平然と日常のリビングで口にする男。その一言で、彼女がこの数年で必死に積み上げてきた「幸せな妻」という仮面が、音を立てて粉砕された。
彼女はゆっくりと振り返る。そこには、ソファーに深く腰掛け、品定めするように自分を見つめる男の姿があった。
「あの時、黙って消えただろ? 俺は結構、執念深くてね。……君を探し出すのに、少し時間がかかったよ。まさか、俺の支配下にある子会社の社員に、こんなに大人しく収まっているとはね」
「……っ、そんなの、もう昔の話よ。今は私は、彼の妻なの。彼を愛しているし、この生活を大切にしているの。お願い、壊さないで……」
「壊す? 滅相もない。俺はむしろ、彼を助けたいと思っているんだよ。……親会社の、それも人事権を握る部署にいる俺が目をかければ、彼の今後のキャリアは、地方の平社員では終わらない。君だって、夫には成功してほしいだろ?」
男がポケットからスマートフォンを取り出し、テーブルの上に置いた。
「ただ、そのためには君の『協力』が必要だ。……これを見てから、返事を聞かせてよ」
画面がタップされ、動画が再生される。
そこには、十数年前の、あまりにも無防備な自分の姿があった。
粗い画質のビデオの中で、彼女は男に跨がり、恍惚とした表情で声を上げ、腰を振っている。今の夫には一度たりとも見せたことのない、淫らな雌の顔。
「……っ! なんで、それを……! あの時、目の前で消したって言ったじゃない……!」
彼女は男からスマホを奪おうと手を伸ばしたが、男はその細い手首を易々と掴み、自分の膝の上へと強引に引き寄せた。
「バックアップは大事だよ、奥さん。……ほら、よく見て。この時の君、今の百倍はいい顔をしてる。今の君は、夫に愛されているつもりで、その実、枯れきっているんじゃないかな?」
男の指が、彼女のタートルネックの襟元をなぞり、首筋に這う。その感触だけで、彼女の身体は裏切るように反応し、嫌な汗が吹き出した。
「……お願い。彼には、彼にだけは見せないで……。何でもするから……何でもするって言ってるでしょ……っ」
「何でも、か。……いい言葉ですね」
男は再び、冷徹なまでの紳士的な微笑を浮かべた。そして、自由になった方の手で、ゆっくりと自分のネクタイを緩め始めた。
「じゃあ、まずはその服を脱いで。……俺が今から、この部屋のどこかに君の『汚れ』を刻みつける。……それを明日、何も知らない彼に朝食を作ってやるまで、どうやって隠し通すか。……二人でじっくり、考えようか」
深夜のリビング。
壁を隔てたすぐ隣の寝室からは、夫の安らかな寝息が聞こえてくる。
そのすぐ側で、彼女は自分の守りたかった日常が、冷たく暗い、底なしの泥の中に沈んでいくのを感じていた。
男の大きな手が、彼女のスカートのジッパーに掛かる。
ジッ……という、静かな、しかし決定的な破滅の音が、静まり返った部屋に響き渡った。
その乾いた金属音は、彼女がこの数年、必死に守り続けてきた「幸福」という名の薄氷が砕け散る音だった。
「あ……っ」
スカートが重力に従って床に落ち、彼女の細い脚が、深夜の冷えた空気に晒される。膝が小刻みに震え、足元にまとわりつく布切れが、まるで自分を縛り上げる鎖のように感じられた。
「ほら、立って。よく見せてください。親会社の役員が、君のためにわざわざ時間を割いているんだ。相応の礼儀というものがあるだろう?」
男の言葉はどこまでも静かで、それでいて抗いがたい威圧感に満ちていた。
彼女は屈辱に頬を染めながらも、言われるがままに、力なく立ち上がった。
ブラウスの裾から下、露わになったのは、夫との平穏な日常を象徴するような、飾り気のない、しかし清楚なレースの下着。
男の視線が、獲物を検分するようにゆっくりと、彼女の身体を上から下へと這い回る。その視線が触れる場所が、まるで物理的に撫で回されているかのように熱く、粟立つ。
「……ふむ。旦那さんは、ずいぶんと質素なものが好みのようだ。それとも、君が彼に合わせて『貞淑な妻』を演じているのか?」
「やめて……そんな言い方……っ。もう、満足でしょう? 帰って……お願いだから……」
懇願する彼女の声は、自分でも驚くほど弱々しく、震えていた。
しかし男は、そんな彼女の絶望を愉しむかのように、ソファーに深く背を預けたまま、足を組み替えた。
「満足? まさか。これからだよ。君が、俺の『恩恵』をどれだけ受け入れられるか、テストを始めなきゃならない」
男はテーブルの上にあるスマホを指先で弄びながら、冷徹な微笑を浮かべる。
「この動画を彼に送れば、明日の朝、君たちの家庭は終わる。彼は親友と妻の両方に裏切られたことを知り、会社での居場所もなくなる。親会社の俺が、彼を『不祥事』として処理するのは造作もないことだ」
男の言葉が、鋭いナイフのように彼女の胸を切り裂く。
夫の顔が脳裏に浮かぶ。真面目で、不器用で、自分の成功よりも「君が笑ってくれればそれでいい」と言ってくれる、心優しい夫。
その夫を、自分の過去が、そして今この瞬間の醜態が、破滅へと導こうとしている。
「……彼を、助けて。彼には、何の関係もないことだわ……」
「そう、すべては君次第だ。彼が明日も笑顔で出社し、やがて東京の本社へと栄転し、輝かしい未来を手に入れるかどうかは……今、この場所で、君がどれだけ俺を満足させられるかにかかっている」
男は立ち上がり、ゆっくりと彼女の間近まで歩み寄った。
逃げようとした彼女の腰を、男の大きな手が強引に引き寄せる。
「まずは、そのブラウスを。……俺が、君の身体を隅々まで『検品』してやる。彼が触れている場所に、俺の刻印を上書きしてやるよ」
男の指が、ブラウスの一番上のボタンに掛かる。
彼女は目を固く閉じ、奥歯を噛み締めた。
壁を隔てたすぐ隣の寝室からは、夫の安らかな寝息が、変わらず聞こえてきている。
夫が信じて疑わない「愛する妻」が、今、夫の親友の手によって、一枚ずつ、その殻を剥がされていく。
「ぁ……、んっ……あ……」
最後の一枚、ブラウスが床に落ちた。
深夜のリビングで、下着姿のまま男の前に晒された彼女。
その白く震える肌には、すでに男の冷たい視線と、隠しようのない欲望が、深い「汚れ」となって刻まれ始めていた。
下着姿で、逃げ場のないリビングの真ん中に立たされた彼女。
深夜の静寂の中、夫の寝息だけが時折、残酷なリズムで聞こえてくる。
男はすぐ目の前で、品定めするように彼女の震える肩を、そして薄いレースに包まれた胸元を見つめていた。
「……ひどい、震えだ。そんなに俺が怖いか? それとも、すぐそこにいる旦那に、今この姿を見られるのが怖いのか?」
男の指先が、彼女の鎖骨の窪みをなぞる。
「ひっ……、あ……」
冷たい指が触れた瞬間、彼女の身体は裏切るように跳ねた。十年前、この指が自分のどこを触り、どのように快楽を強いたのか。細胞が、脳の拒絶を追い越して記憶を呼び覚ましていく。
「……やめて、お願い……。もう、帰って……」
「帰る? まだ君の『品質』を確かめてもいないのに。……さあ、ソファーに座れ。親会社の役員として、この地元の工場の『管理状況』を隅々までチェックさせてもらうよ」
男の言葉は比喩などではなかった。彼は彼女を無理やりソファーに押し倒すと、自身のネクタイを緩め、膝の間に割り込んできた。
「……っ! だめ、そこは……!」
彼女の脚を強引に割り開き、男はその長い指を、下着のレースの縁に掛けた。
「旦那さんは、ここを丁寧に扱っているのか? それとも、俺が教えたみたいに、もっと強引に欲しがっているのか……?」
男の指が、薄い布越しに、彼女の最も敏感な場所に触れた。
「あ、ぁあっ……!」
声が出そうになり、彼女は咄嗟に自分の口を両手で塞いだ。
指先から伝わる執拗なまでの圧力。男は彼女の反応を愉しむように、円を描くように、ゆっくりと、しかし容赦なくそこを揉み解していく。
「……濡れているな。口では嫌がっていても、身体は親会社の命令に従順だ。……この場所は、十年前から俺を求めていたままだ」
「……んんっ、んぅ……っ!!」
布越しに伝わる男の熱。指の関節が、彼女の秘部を抉るように押し込まれる。
夫との営みは、いつも穏やかで、慈しむようなものだった。だが、この男の指は違う。まるで彼女の理性を引き摺り出し、獣のように暴くための、暴力的な快楽。
男はさらに身を乗り出し、彼女の耳元で淫らな言葉を吐きかけながら、もう片方の手で彼女の胸元を露わにした。
「……ほら、よく見てごらん。君の身体は、旦那ではなく俺の指でこんなに震えている。……彼が今このドアを開けたら、どんな顔をするだろうな? 『いつもお世話になっております』と頭を下げた親友が、自分の妻をこんな風に弄んでいる姿を見て」
男の指先が、ついに下着の隙間から中へと滑り込んだ。
粘膜に直接触れる、男の皮膚。
「ヌチュッ……」
静まり返ったリビングに、あまりにも淫らな、水を含んだ音が響く。
「……っ、ぁ、あぁっ!!」
彼女は背中を反らせ、爪がソファーの革を強く擦った。
指が中を掻き回す。一本、二本と増やされ、彼女の最奥を、夫さえ知らない角度で突き上げる。
「あ……っ、だめ、おかしく、なっちゃう……! ……ごめんなさい、ごめんなさい……っ!」
心の中で夫に詫びるほど、身体の感度は狂ったように跳ね上がっていく。
男の指は、彼女が一番弱い場所を正確に捉え、弾くように、あるいは抉るように動かされる。
「ほら、もっと声を出せ。彼を呼んでみろよ。……それとも、声を出せないように、俺が口を塞いでやろうか?」
男は彼女の口を強引に塞ぎ、舌をねじ込んだ。
口内を蹂躙され、下では指が激しく抜き差しされる。
上下からの暴力的な愛撫に、彼女の意識は白濁し、視界がチカチカと明滅し始めた。
「あ、はぁっ……んんぅ……ッ!」
絶頂が訪れようとしたその瞬間、男は残酷にも指を止めた。
「……おっと。まだ終わりじゃない。……君を完成させるのは、俺の『本物』だ。……その前に、君自身の手で、そこを俺に見せびらかしてもらおうか」
男は彼女を、寝室のドアが見える方向に無理やり向かせた。
「ほら。旦那が寝ているあっちを見ながら、自分でそこを広げろ。……親会社の俺に、君がどれだけ汚されたいか、態度で示すんだ」
屈辱。
自分の人生を、夫を、家庭を。
すべてを天秤にかけさせられ、彼女は震える手で、自ら自身の最深部を、男へと、そして寝室の夫へと曝け出した。
男の長い指が、彼女の秘部の奥深く、もっとも柔らかな粘膜を執拗に抉り、弾き続ける。
「ひっ、あ、ぁ……っ!!」
絶頂へと無理やり引きずり上げられる強烈な快楽と、すぐ隣の寝室に夫がいるという極限の恐怖。その矛盾に、彼女の精神は悲鳴を上げていた。
男は彼女を背後から抱きしめるように固定し、濡れそぼった耳元へ、毒を流し込むように囁いた。
「……知っているか? 君の旦那は、この一ヶ月、毎日終電ギリギリまで働いていたよ。親会社からの無理な注文、理不尽な納期……。彼はそれらを、すべて笑顔で引き受けていた。君との、この慎ましい家庭を守るためにね」
「……っ、やめて……」
「彼は必死だよ。君を幸せにしたい、もっといい生活をさせてやりたい……その一心で、俺たち親会社の連中に、何度も何度も頭を下げている。……その彼が今、この壁一枚隔てた先で、自分の最愛の妻が、自分が一生かかっても勝てない男に……こんな風に、メス犬のように鳴かされているとは夢にも思わずにな」
男の言葉は、指による愛撫よりも深く、彼女の心を切り刻んだ。
夫が汗水垂らして、プライドを捨てて稼いできた金で買ったソファー。その上で、彼女は今、男に弄ばれている。
「……あ、あぁっ! いや……そんな、こと……っ」
「いいや、本当のことだ。これからの接待でも、俺は彼を徹底的に『使う』よ。彼が俺の機嫌を取るために必死に酒を注いでいる間、君はテーブルの下で俺の靴を舐めていろ。……彼が昇進を喜べば喜ぶほど、君の身体は俺のものになっていくんだ」
男の指が、最も敏感な突起を、鋭い爪で弾くように弄った。
「あがっ……! ひ、ぅ、あああぁっ!!」
声にならない悲鳴が口から漏れる。
その瞬間、彼女の脳裏に、封印していた十年前の光景がフラッシュバックした。
若かったあの頃。なぜ、自分はこの男に一度、すべてを委ねてしまったのか。
当時の彼は、今よりもずっと野蛮で、けれど圧倒的な支配力を持っていた。就職活動に失敗し、将来への不安に押しつぶされそうだった自分を、彼は「救う」のではなく、「壊す」ことで支配した。
(……あの時と同じ。私は、この人に壊されるのが、怖くて……でも、どこかで……)
十年前の、狭いワンルームのアパート。安っぽいベッドの上で、男に力ずくで組み伏せられた時の、あの「自分という存在が消えていく感覚」。今の凌辱が、その時の記憶と共鳴し、彼女の身体に忌まわしい熱を呼び覚ます。
ふと、リビングに静寂が訪れた。
外を走る深夜のタクシーの走行音。
古ぼけた冷蔵庫が、重苦しく唸る低い駆動音。
そして……壁の向こうから、時折聞こえる夫の、無垢で、信頼に満ちた寝息。
その「日常の音」が聞こえるたびに、彼女は自分の置かれた異常な状況を、これ以上ないほど鮮明に自覚させられる。
「……くっ、ふ、ふぅ……っ、やだ、もう……っ」
「いいや、身体は正直だ。……ほら、冷蔵庫の音に合わせて腰が動いているぞ。旦那の寝息を聞きながら、俺の指でこんなに潮を吹いて……。君は、清廉な妻なんかじゃない。……十年前から変わらない、ただの、俺の玩具だ」
男は彼女の腰をさらに強く引き寄せると、自身の指を抜き、その代わりに熱く硬い「支配の象徴」を、彼女の剥き出しの臀部に押し当てた。
「さあ、本番だ。……君の旦那が、明日の朝『昨日はよく眠れた』と笑って起きてこられるかどうか。……君のこれからの奉仕にかかっているよ」
彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ち、男に汚されたソファーの革を濡らした。
しかし、その唇はもはや拒絶の言葉を紡ぐことはなく、ただ、次に訪れる耐え難いほどの快楽を待つように、かすかに震えていた。
「……さて、指だけでは『検品』にならん。本社の基準はもっと厳しいんだ」
男はそう言い放つと、彼女をソファーから床へと突き落とした。
「あ……っ」
冷たいフローリングに、露わになった肌が直接触れる。屈辱に震えながら見上げると、そこにはスラックスのジッパーを下ろし、凶暴なまでに昂ぶった「支配の象徴」を剥き出しにした男が立っていた。
「……っ、うそ、……それだけは……っ」
彼女は首を激しく横に振る。だが、男はその長い指で、テーブルの上に置いたスマートフォンを再び手に取った。
「忘れたのか? 君が拒めば、この画面の中にある十年前の醜態が、今すぐ寝室の彼に送信される。それとも、今ここで俺が直接彼を叩き起こして、この状況を見せてやってもいいんだぞ?」
「……ぁ……っ」
彼女の喉が、恐怖で引き攣る。
男は冷徹な手つきでスマートフォンのカメラを起動し、レンズを彼女の顔、そして自身の股間へと向けた。
「さあ、跪け。……そして、親会社の俺に、君がいかに使い道のある女かを証明してみせろ」
逃げ場はなかった。
彼女は震える膝を突き、這いずるようにして男の足元へ近寄った。
すぐそこにある寝室のドア。その向こうには、自分を世界で一番愛してくれている夫が、無防備に眠っている。
その事実が、彼女の心を粉々に打ち砕く。
彼女は、意を決して、男の熱をその唇で受け入れた。
「……っ! んぐ、んぅ……ッ!!」
あまりの大きさに、喉の奥が押し潰されそうになる。
男は彼女の髪を力任せに掴み、カメラを固定したまま、容赦なく腰を突き入れた。
「……いいぞ。その絶望に満ちた顔、最高だ。十年前よりもずっと、いい『盛り』をしているじゃないか」
グチュ、グポッ……という、あまりにも生々しい肉のぶつかり合う音が、静まり返ったリビングに響き渡る。
彼女は涙で視界を滲ませながら、男の欲望を必死に飲み込み続けた。
男はその様子を、余さずスマートフォンのレンズに収めていく。
「ほら、レンズを見ろ。……これは君の『勤務評定』だ。これを後でじっくり見返して、自分がどれだけ汚れたかを、その脳に刻み込め」
男の動きは次第に激しさを増していく。
彼女の口内を蹂躙し、喉の奥を突き上げるたびに、彼女はむせ返り、涙を流した。
だが、男は止めるどころか、その髪をさらに強く引き絞り、彼女の顔を上向かせた。
「……あ、あぁ……っ、ん、んんぅーッ!!」
「……出すぞ。……君のその、夫に愛を誓った口の中に……俺の印を、たっぷりと注いでやる」
その瞬間、男の「支配」が、熱い奔流となって彼女の口内へと溢れ出した。
「……っ、んぐ、……げほっ、……んんっ!!」
逃れることは許されない。男の手が彼女の後頭部をしっかりと固定し、最後の一滴まで、その「汚れ」を飲み込むことを強いた。
やがて、男が満足げに腰を引くと、彼女は床に伏し、激しく咳き込んだ。
口元から溢れた白い汚れが、彼女の細い顎を伝い、床に落ちる。
男はそれを、勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、スマートフォンで撮影し続けた。
口内への一発目の「検品」が終わっても、男の欲望は衰えるどころか、さらに凶暴な熱を帯びていた。
彼女が床に伏し、荒い息をつきながら汚れを拭おうとしたその時、男の冷徹な声が再び頭上から降り注ぐ。
「……口だけで終わりだと思ったか? まだ『本題』が済んでいないだろう」
男は彼女の長い髪を掴み、無理やりソファーへと引きずり戻した。
「あ、あぁっ……! お願い、もう……もう許して……っ」
懇願も虚しく、彼女の身体は再び仰向けにされ、白く震える脚が、男の強い力によって左右に割られた。
「一発目は挨拶だ。二発目は、親会社の俺が、君という『子会社』の所有権を完全に登記させてもらう」
男は自身のスラックスを膝まで蹴り落とすと、二発目とは思えないほど硬く、猛々しく昂ぶった「支配の象徴」を、彼女の秘部の入り口に押し当てた。
「ひっ……! あ、あああぁっ!!」
潤滑などまったくないまま、暴力的な太さが、彼女の最奥へと一気に突き入れられた。
夫の優しさとは対極にある、内側から引き裂かれるような鈍痛。しかし、その痛みの中には、抗いがたい男の熱が混じり、彼女の神経を狂わせていく。
男はカメラを構えたまま、腰を激しく打ち付け始めた。
グチュッ、パンッ……と、肉と肉がぶつかり合う、この世のものとは思えない卑猥な音が、夫の眠る寝室のドアに跳ね返る。
「ほら、見てみろ。君の旦那がプレゼントしたソファーの上で、俺が君を犯している。……君の中は、俺のモノで溢れかえっているぞ」
「ん、ぁ……っ! ぁ、あぁ、あぁーっ!!」
男が腰を突き入れるたびに、彼女の頭はソファーの背もたれに激しく打ちつけられた。
男の言葉が脳を犯し、男の熱が子宮を犯す。
絶望的な屈辱感とは裏腹に、彼女の身体は、十年前の「あの夜」の快楽を完全にトレースし始めていた。
男は彼女の顔をグイと引き寄せ、スマートフォンのレンズを至近距離に向けた。
「……仕上げだ。君のその綺麗な顔を、俺の欲望で塗り潰してやる」
男の腰使いが速度を上げ、限界まで加速していく。
「あ、あ、ああああぁっ!!」
彼女が絶頂に達し、身体を弓なりに反らせたその瞬間、男は彼女の中から一気に抜き放ち、猛り狂った先端を、彼女の顔面へと突きつけた。
「……っ、ふ……!!」
ドロリとした、熱く、重い奔流が、彼女の瞳、鼻筋、そして震える唇へと次々に叩きつけられた。
一発目よりもさらに濃く、執着に満ちた白い濁りが、彼女の「妻としてのプライド」を物理的に塗り潰していく。
「げほっ、ん……ぅ……」
視界が白く濁り、男の吐き出した「汚れ」がまつ毛に絡みついて、目を開けることすらできない。
男はその惨めな、それでいて退廃的な美しさを放つ彼女の顔を、余さずスマートフォンの動画に収めた。
「……完璧だ。最高の絵が撮れたよ」
男は満足げに鼻で笑うと、まるで使い古した雑巾を捨てるかのように、彼女の顔に自分のネクタイを放り投げた。
「……それで拭いておけ。明日の朝、旦那に『顔が艶やかだな』と言われたら、俺のことを思い出して、心の中で笑ってやればいい」
深夜のリビングに、彼女のすすり泣く声だけが、虚しく溶けていった。
口元から溢れ、顎を伝う男の痕跡。
彼女は、自分がもう二度と、夫の愛した「あの頃の自分」には戻れないことを、身体に刻まれた熱さとともに、痛いほど理解していた。
男はテーブルの上のコーヒーを一口飲み、満足げに立ち上がった。
「……じゃあ、また近いうちに。……次は、もっと広い場所で、もっと大勢の『同僚』に見守られながら、君の奉仕を受けたいものだな」
玄関のドアが静かに閉まる。
後に残されたのは、深夜の静寂と、床に散らばった衣類。
そして、自身の身体の中に、そして心の中に、決して消えない「男の痕跡」を刻まれた、一人の妻の絶望だけだった。
玄関の鍵が閉まる、カチリという乾いた音が、彼女の意識を現実へと引き戻した。
男が去ったあとのリビングには、再び死のような静寂が訪れる。
彼女は床に崩れ落ちたまま、しばらく動くことができなかった。
口内に残る苦味と、太腿を伝い落ちる不快な熱。それらはすべて、たった今まで起きていたことが夢ではないことを、残酷なまでに証明していた。
(……洗わなきゃ……消さなきゃ……)
彼女は震える手で、床に散らばった衣類をかき集めた。男の指で引き裂かれた下着、床に落ちたブラウス。それらすべてが、今の自分を嘲笑っているかのように見えた。
フラフラと立ち上がり、彼女は浴室へと向かう。
リビングを横切る際、寝室のドアが目に入る。その向こうには、何も知らない夫が眠っている。その安らかな寝息さえ、今の彼女には鋭い刃となって胸に突き刺さった。
浴室に入り、鍵をかける。
脱衣所の鏡に映った自分の姿を見て、彼女は息を呑んだ。
髪は乱れ、瞳は赤く腫れ上がり、唇は男に蹂躙されてわずかに裂けている。そして、白い首筋には、隠しようのない赤黒い「痕」が、男の所有物であることを示す刻印のように浮き上がっていた。
「……う、あ……ぁ……」
声にならない悲鳴が漏れる。
彼女は裸になると、機械的な動きでシャワーを捻った。
冷たい水が身体を叩くが、肌にこびりついた男の感触は、どれだけ擦っても落ちる気配がなかった。
彼女は、石鹸を手に取り、狂ったように自分の身体を洗い始めた。
男が触れた首筋、男の指が抉った秘部、そして男の欲望を飲み込まされた喉。
皮膚が赤く爛れるほど強く、何度も、何度も、爪を立てるようにして擦り上げる。
(消えて、消えて……っ!!)
しかし、洗えば洗うほど、意識は逆行するようにあの瞬間の感覚を鮮明に呼び覚ました。
男の指が粘膜を弾く音、耳元で囁かれた夫を貶める言葉、そして、最奥を突き上げられた時の、あってはならない「快楽」。
「ん……っ、あぁ……」
不意に、身体の奥から熱が這い上がってきた。
男の熱い奔流が注ぎ込まれた感覚が、洗浄している指先を通じて脳へとフィードバックされる。
洗っているはずの自分の指が、いつの間にか男の指の動きをトレースし、疼きを鎮めるようにそこを愛撫し始めていた。
(……違う、これは私じゃない……私は、あんな男に……!)
自分自身の身体が、男に「書き換えられてしまった」という絶望。
清潔な水で満たされるはずの浴室で、彼女は自分の内側が、男のどろりとした執着で満たされていることを自覚させられた。
排水口へと流れていく白い泡の中に、先ほど男が放った「印」が混ざり込んでいく。
それは、彼女のこれまでの清廉な人生そのものが、濁流に飲み込まれていく光景のようだった。
鏡の中の「妻」は、もうどこにもいなかった。
そこにいるのは、身体の芯に男の火種を植え付けられた、ただの無力な獲物。
彼女は、濡れたままの身体で冷たいタイルの上にうずくまり、声を殺して泣き続けた。
浴室の換気扇の回る音が、彼女の絶望をどこまでも遠くへ、冷たく運び去っていった。
第2話へ続く。
夜の帳が下りた住宅街に、不釣り合いなほど陽気な男たちの笑い声が響いていた。
彼女はリビングの時計が深夜を回るのを確認し、小さく、重いため息をつく。真面目だけが取り柄の夫が、これほど遅く、しかも泥酔して帰宅するのは、結婚して以来初めてのことだった。
(……何があったのかしら)
不安を胸に、ガチャリと鍵が開く音がした玄関へと向かう。
「ごめん、遅くなった……。いやぁ、今日は人生で最高の夜だよ、本当に。」
夫は同僚に肩を貸され、だらしなく顔を綻ばせている。その背後、玄関の街灯に照らされた場所に、「その男」は立っていた。
仕立ての良いダークネイビーのスーツを、皺一つなく着こなした長身の男。街灯の逆光で顔は影になっていたが、その立ち姿だけで、夫の会社の人間とは明らかに違う「質の良さ」が伝わってきた。
「初めまして。彼とは学生時代からの友人で……現在は、彼の勤める会社の親会社に籍を置いております。今日はつい、話し込んでしまって」
男が名乗った瞬間、彼女の心臓は、まるで氷水を直接注ぎ込まれたかのように凍りついた。
その声の響き。低く、鼓膜を優しく撫でるような、記憶の底にこびりついて離れない甘い低音。
(……嘘、でしょ……そんな…)
目の前にいるのは、彼女がこの世で「一番見られたくない、会いたくない」と思っていた男だった。十数年前、若さゆえの過ち、あるいは行き場のない情熱に任せて身を投げ出した、あの一晩だけの相手。彼女が夫と出会う前、まだ「清廉な妻」という皮名を持たず、危うい遊びに身を焦がしていた頃の、消し去りたい記憶の象徴。
「……あ、妻です。いつも主人がお世話になって……」
震える声を必死に押し殺し、彼女は深く頭を下げた。視線を合わせることができない。合わせれば、自分の内側にある醜い過去がすべて暴かれ、今の平穏な生活が砂の城のように崩れてしまうような気がした。
夫を寝室へ運び、ベッドに横たえるまでの間、彼女の背中には常に男の視線が突き刺さっていた。男は「手伝いますよ」と紳士的に振る舞いながら、夫の身体を支える際、わざと彼女の指先に自分の指を重ねてきた。
その瞬間、肌に走った不気味なほどの熱。彼女は思わず手を引っ込めたが、男は動じることなく、昏い愉悦を宿した瞳で彼女を見つめていた。
「……彼、随分と張り切っていましたよ。親会社の人間とパイプができたって。彼の出世は、私のさじ加減一つなんです」
寝室を出る際、男が囁いたその言葉は、明確な警告だった。
夫が規則正しい寝息を立て始めると、二人はリビングへと戻った。
「……コーヒー、淹れますね。すぐにお帰りになるでしょうけど」
彼女は逃げるようにキッチンへ入り、豆を挽き始めた。ガリガリと豆を砕く音が、今の自分の理性を削る音のように聞こえる。手が震えて、豆が数粒、床にこぼれた。
「忘れるわけないだろ。あの夜のこと」
背後から届いたのは、丁寧な敬語を完全に脱ぎ捨てた、かつてのままの傲慢な声だった。
彼女の肩が、目に見えて大きく跳ねる。
「……何のことでしょうか。人違いです。……お願いですから、もう帰ってください」
「とぼけなくていい。……君のその声、今でも耳に残ってるよ。あの狭いアパートで、俺の下で何度も狂ったみたいに鳴いていた……あの声をね」
かつての卑猥な記憶を、平然と日常のリビングで口にする男。その一言で、彼女がこの数年で必死に積み上げてきた「幸せな妻」という仮面が、音を立てて粉砕された。
彼女はゆっくりと振り返る。そこには、ソファーに深く腰掛け、品定めするように自分を見つめる男の姿があった。
「あの時、黙って消えただろ? 俺は結構、執念深くてね。……君を探し出すのに、少し時間がかかったよ。まさか、俺の支配下にある子会社の社員に、こんなに大人しく収まっているとはね」
「……っ、そんなの、もう昔の話よ。今は私は、彼の妻なの。彼を愛しているし、この生活を大切にしているの。お願い、壊さないで……」
「壊す? 滅相もない。俺はむしろ、彼を助けたいと思っているんだよ。……親会社の、それも人事権を握る部署にいる俺が目をかければ、彼の今後のキャリアは、地方の平社員では終わらない。君だって、夫には成功してほしいだろ?」
男がポケットからスマートフォンを取り出し、テーブルの上に置いた。
「ただ、そのためには君の『協力』が必要だ。……これを見てから、返事を聞かせてよ」
画面がタップされ、動画が再生される。
そこには、十数年前の、あまりにも無防備な自分の姿があった。
粗い画質のビデオの中で、彼女は男に跨がり、恍惚とした表情で声を上げ、腰を振っている。今の夫には一度たりとも見せたことのない、淫らな雌の顔。
「……っ! なんで、それを……! あの時、目の前で消したって言ったじゃない……!」
彼女は男からスマホを奪おうと手を伸ばしたが、男はその細い手首を易々と掴み、自分の膝の上へと強引に引き寄せた。
「バックアップは大事だよ、奥さん。……ほら、よく見て。この時の君、今の百倍はいい顔をしてる。今の君は、夫に愛されているつもりで、その実、枯れきっているんじゃないかな?」
男の指が、彼女のタートルネックの襟元をなぞり、首筋に這う。その感触だけで、彼女の身体は裏切るように反応し、嫌な汗が吹き出した。
「……お願い。彼には、彼にだけは見せないで……。何でもするから……何でもするって言ってるでしょ……っ」
「何でも、か。……いい言葉ですね」
男は再び、冷徹なまでの紳士的な微笑を浮かべた。そして、自由になった方の手で、ゆっくりと自分のネクタイを緩め始めた。
「じゃあ、まずはその服を脱いで。……俺が今から、この部屋のどこかに君の『汚れ』を刻みつける。……それを明日、何も知らない彼に朝食を作ってやるまで、どうやって隠し通すか。……二人でじっくり、考えようか」
深夜のリビング。
壁を隔てたすぐ隣の寝室からは、夫の安らかな寝息が聞こえてくる。
そのすぐ側で、彼女は自分の守りたかった日常が、冷たく暗い、底なしの泥の中に沈んでいくのを感じていた。
男の大きな手が、彼女のスカートのジッパーに掛かる。
ジッ……という、静かな、しかし決定的な破滅の音が、静まり返った部屋に響き渡った。
その乾いた金属音は、彼女がこの数年、必死に守り続けてきた「幸福」という名の薄氷が砕け散る音だった。
「あ……っ」
スカートが重力に従って床に落ち、彼女の細い脚が、深夜の冷えた空気に晒される。膝が小刻みに震え、足元にまとわりつく布切れが、まるで自分を縛り上げる鎖のように感じられた。
「ほら、立って。よく見せてください。親会社の役員が、君のためにわざわざ時間を割いているんだ。相応の礼儀というものがあるだろう?」
男の言葉はどこまでも静かで、それでいて抗いがたい威圧感に満ちていた。
彼女は屈辱に頬を染めながらも、言われるがままに、力なく立ち上がった。
ブラウスの裾から下、露わになったのは、夫との平穏な日常を象徴するような、飾り気のない、しかし清楚なレースの下着。
男の視線が、獲物を検分するようにゆっくりと、彼女の身体を上から下へと這い回る。その視線が触れる場所が、まるで物理的に撫で回されているかのように熱く、粟立つ。
「……ふむ。旦那さんは、ずいぶんと質素なものが好みのようだ。それとも、君が彼に合わせて『貞淑な妻』を演じているのか?」
「やめて……そんな言い方……っ。もう、満足でしょう? 帰って……お願いだから……」
懇願する彼女の声は、自分でも驚くほど弱々しく、震えていた。
しかし男は、そんな彼女の絶望を愉しむかのように、ソファーに深く背を預けたまま、足を組み替えた。
「満足? まさか。これからだよ。君が、俺の『恩恵』をどれだけ受け入れられるか、テストを始めなきゃならない」
男はテーブルの上にあるスマホを指先で弄びながら、冷徹な微笑を浮かべる。
「この動画を彼に送れば、明日の朝、君たちの家庭は終わる。彼は親友と妻の両方に裏切られたことを知り、会社での居場所もなくなる。親会社の俺が、彼を『不祥事』として処理するのは造作もないことだ」
男の言葉が、鋭いナイフのように彼女の胸を切り裂く。
夫の顔が脳裏に浮かぶ。真面目で、不器用で、自分の成功よりも「君が笑ってくれればそれでいい」と言ってくれる、心優しい夫。
その夫を、自分の過去が、そして今この瞬間の醜態が、破滅へと導こうとしている。
「……彼を、助けて。彼には、何の関係もないことだわ……」
「そう、すべては君次第だ。彼が明日も笑顔で出社し、やがて東京の本社へと栄転し、輝かしい未来を手に入れるかどうかは……今、この場所で、君がどれだけ俺を満足させられるかにかかっている」
男は立ち上がり、ゆっくりと彼女の間近まで歩み寄った。
逃げようとした彼女の腰を、男の大きな手が強引に引き寄せる。
「まずは、そのブラウスを。……俺が、君の身体を隅々まで『検品』してやる。彼が触れている場所に、俺の刻印を上書きしてやるよ」
男の指が、ブラウスの一番上のボタンに掛かる。
彼女は目を固く閉じ、奥歯を噛み締めた。
壁を隔てたすぐ隣の寝室からは、夫の安らかな寝息が、変わらず聞こえてきている。
夫が信じて疑わない「愛する妻」が、今、夫の親友の手によって、一枚ずつ、その殻を剥がされていく。
「ぁ……、んっ……あ……」
最後の一枚、ブラウスが床に落ちた。
深夜のリビングで、下着姿のまま男の前に晒された彼女。
その白く震える肌には、すでに男の冷たい視線と、隠しようのない欲望が、深い「汚れ」となって刻まれ始めていた。
下着姿で、逃げ場のないリビングの真ん中に立たされた彼女。
深夜の静寂の中、夫の寝息だけが時折、残酷なリズムで聞こえてくる。
男はすぐ目の前で、品定めするように彼女の震える肩を、そして薄いレースに包まれた胸元を見つめていた。
「……ひどい、震えだ。そんなに俺が怖いか? それとも、すぐそこにいる旦那に、今この姿を見られるのが怖いのか?」
男の指先が、彼女の鎖骨の窪みをなぞる。
「ひっ……、あ……」
冷たい指が触れた瞬間、彼女の身体は裏切るように跳ねた。十年前、この指が自分のどこを触り、どのように快楽を強いたのか。細胞が、脳の拒絶を追い越して記憶を呼び覚ましていく。
「……やめて、お願い……。もう、帰って……」
「帰る? まだ君の『品質』を確かめてもいないのに。……さあ、ソファーに座れ。親会社の役員として、この地元の工場の『管理状況』を隅々までチェックさせてもらうよ」
男の言葉は比喩などではなかった。彼は彼女を無理やりソファーに押し倒すと、自身のネクタイを緩め、膝の間に割り込んできた。
「……っ! だめ、そこは……!」
彼女の脚を強引に割り開き、男はその長い指を、下着のレースの縁に掛けた。
「旦那さんは、ここを丁寧に扱っているのか? それとも、俺が教えたみたいに、もっと強引に欲しがっているのか……?」
男の指が、薄い布越しに、彼女の最も敏感な場所に触れた。
「あ、ぁあっ……!」
声が出そうになり、彼女は咄嗟に自分の口を両手で塞いだ。
指先から伝わる執拗なまでの圧力。男は彼女の反応を愉しむように、円を描くように、ゆっくりと、しかし容赦なくそこを揉み解していく。
「……濡れているな。口では嫌がっていても、身体は親会社の命令に従順だ。……この場所は、十年前から俺を求めていたままだ」
「……んんっ、んぅ……っ!!」
布越しに伝わる男の熱。指の関節が、彼女の秘部を抉るように押し込まれる。
夫との営みは、いつも穏やかで、慈しむようなものだった。だが、この男の指は違う。まるで彼女の理性を引き摺り出し、獣のように暴くための、暴力的な快楽。
男はさらに身を乗り出し、彼女の耳元で淫らな言葉を吐きかけながら、もう片方の手で彼女の胸元を露わにした。
「……ほら、よく見てごらん。君の身体は、旦那ではなく俺の指でこんなに震えている。……彼が今このドアを開けたら、どんな顔をするだろうな? 『いつもお世話になっております』と頭を下げた親友が、自分の妻をこんな風に弄んでいる姿を見て」
男の指先が、ついに下着の隙間から中へと滑り込んだ。
粘膜に直接触れる、男の皮膚。
「ヌチュッ……」
静まり返ったリビングに、あまりにも淫らな、水を含んだ音が響く。
「……っ、ぁ、あぁっ!!」
彼女は背中を反らせ、爪がソファーの革を強く擦った。
指が中を掻き回す。一本、二本と増やされ、彼女の最奥を、夫さえ知らない角度で突き上げる。
「あ……っ、だめ、おかしく、なっちゃう……! ……ごめんなさい、ごめんなさい……っ!」
心の中で夫に詫びるほど、身体の感度は狂ったように跳ね上がっていく。
男の指は、彼女が一番弱い場所を正確に捉え、弾くように、あるいは抉るように動かされる。
「ほら、もっと声を出せ。彼を呼んでみろよ。……それとも、声を出せないように、俺が口を塞いでやろうか?」
男は彼女の口を強引に塞ぎ、舌をねじ込んだ。
口内を蹂躙され、下では指が激しく抜き差しされる。
上下からの暴力的な愛撫に、彼女の意識は白濁し、視界がチカチカと明滅し始めた。
「あ、はぁっ……んんぅ……ッ!」
絶頂が訪れようとしたその瞬間、男は残酷にも指を止めた。
「……おっと。まだ終わりじゃない。……君を完成させるのは、俺の『本物』だ。……その前に、君自身の手で、そこを俺に見せびらかしてもらおうか」
男は彼女を、寝室のドアが見える方向に無理やり向かせた。
「ほら。旦那が寝ているあっちを見ながら、自分でそこを広げろ。……親会社の俺に、君がどれだけ汚されたいか、態度で示すんだ」
屈辱。
自分の人生を、夫を、家庭を。
すべてを天秤にかけさせられ、彼女は震える手で、自ら自身の最深部を、男へと、そして寝室の夫へと曝け出した。
男の長い指が、彼女の秘部の奥深く、もっとも柔らかな粘膜を執拗に抉り、弾き続ける。
「ひっ、あ、ぁ……っ!!」
絶頂へと無理やり引きずり上げられる強烈な快楽と、すぐ隣の寝室に夫がいるという極限の恐怖。その矛盾に、彼女の精神は悲鳴を上げていた。
男は彼女を背後から抱きしめるように固定し、濡れそぼった耳元へ、毒を流し込むように囁いた。
「……知っているか? 君の旦那は、この一ヶ月、毎日終電ギリギリまで働いていたよ。親会社からの無理な注文、理不尽な納期……。彼はそれらを、すべて笑顔で引き受けていた。君との、この慎ましい家庭を守るためにね」
「……っ、やめて……」
「彼は必死だよ。君を幸せにしたい、もっといい生活をさせてやりたい……その一心で、俺たち親会社の連中に、何度も何度も頭を下げている。……その彼が今、この壁一枚隔てた先で、自分の最愛の妻が、自分が一生かかっても勝てない男に……こんな風に、メス犬のように鳴かされているとは夢にも思わずにな」
男の言葉は、指による愛撫よりも深く、彼女の心を切り刻んだ。
夫が汗水垂らして、プライドを捨てて稼いできた金で買ったソファー。その上で、彼女は今、男に弄ばれている。
「……あ、あぁっ! いや……そんな、こと……っ」
「いいや、本当のことだ。これからの接待でも、俺は彼を徹底的に『使う』よ。彼が俺の機嫌を取るために必死に酒を注いでいる間、君はテーブルの下で俺の靴を舐めていろ。……彼が昇進を喜べば喜ぶほど、君の身体は俺のものになっていくんだ」
男の指が、最も敏感な突起を、鋭い爪で弾くように弄った。
「あがっ……! ひ、ぅ、あああぁっ!!」
声にならない悲鳴が口から漏れる。
その瞬間、彼女の脳裏に、封印していた十年前の光景がフラッシュバックした。
若かったあの頃。なぜ、自分はこの男に一度、すべてを委ねてしまったのか。
当時の彼は、今よりもずっと野蛮で、けれど圧倒的な支配力を持っていた。就職活動に失敗し、将来への不安に押しつぶされそうだった自分を、彼は「救う」のではなく、「壊す」ことで支配した。
(……あの時と同じ。私は、この人に壊されるのが、怖くて……でも、どこかで……)
十年前の、狭いワンルームのアパート。安っぽいベッドの上で、男に力ずくで組み伏せられた時の、あの「自分という存在が消えていく感覚」。今の凌辱が、その時の記憶と共鳴し、彼女の身体に忌まわしい熱を呼び覚ます。
ふと、リビングに静寂が訪れた。
外を走る深夜のタクシーの走行音。
古ぼけた冷蔵庫が、重苦しく唸る低い駆動音。
そして……壁の向こうから、時折聞こえる夫の、無垢で、信頼に満ちた寝息。
その「日常の音」が聞こえるたびに、彼女は自分の置かれた異常な状況を、これ以上ないほど鮮明に自覚させられる。
「……くっ、ふ、ふぅ……っ、やだ、もう……っ」
「いいや、身体は正直だ。……ほら、冷蔵庫の音に合わせて腰が動いているぞ。旦那の寝息を聞きながら、俺の指でこんなに潮を吹いて……。君は、清廉な妻なんかじゃない。……十年前から変わらない、ただの、俺の玩具だ」
男は彼女の腰をさらに強く引き寄せると、自身の指を抜き、その代わりに熱く硬い「支配の象徴」を、彼女の剥き出しの臀部に押し当てた。
「さあ、本番だ。……君の旦那が、明日の朝『昨日はよく眠れた』と笑って起きてこられるかどうか。……君のこれからの奉仕にかかっているよ」
彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ち、男に汚されたソファーの革を濡らした。
しかし、その唇はもはや拒絶の言葉を紡ぐことはなく、ただ、次に訪れる耐え難いほどの快楽を待つように、かすかに震えていた。
「……さて、指だけでは『検品』にならん。本社の基準はもっと厳しいんだ」
男はそう言い放つと、彼女をソファーから床へと突き落とした。
「あ……っ」
冷たいフローリングに、露わになった肌が直接触れる。屈辱に震えながら見上げると、そこにはスラックスのジッパーを下ろし、凶暴なまでに昂ぶった「支配の象徴」を剥き出しにした男が立っていた。
「……っ、うそ、……それだけは……っ」
彼女は首を激しく横に振る。だが、男はその長い指で、テーブルの上に置いたスマートフォンを再び手に取った。
「忘れたのか? 君が拒めば、この画面の中にある十年前の醜態が、今すぐ寝室の彼に送信される。それとも、今ここで俺が直接彼を叩き起こして、この状況を見せてやってもいいんだぞ?」
「……ぁ……っ」
彼女の喉が、恐怖で引き攣る。
男は冷徹な手つきでスマートフォンのカメラを起動し、レンズを彼女の顔、そして自身の股間へと向けた。
「さあ、跪け。……そして、親会社の俺に、君がいかに使い道のある女かを証明してみせろ」
逃げ場はなかった。
彼女は震える膝を突き、這いずるようにして男の足元へ近寄った。
すぐそこにある寝室のドア。その向こうには、自分を世界で一番愛してくれている夫が、無防備に眠っている。
その事実が、彼女の心を粉々に打ち砕く。
彼女は、意を決して、男の熱をその唇で受け入れた。
「……っ! んぐ、んぅ……ッ!!」
あまりの大きさに、喉の奥が押し潰されそうになる。
男は彼女の髪を力任せに掴み、カメラを固定したまま、容赦なく腰を突き入れた。
「……いいぞ。その絶望に満ちた顔、最高だ。十年前よりもずっと、いい『盛り』をしているじゃないか」
グチュ、グポッ……という、あまりにも生々しい肉のぶつかり合う音が、静まり返ったリビングに響き渡る。
彼女は涙で視界を滲ませながら、男の欲望を必死に飲み込み続けた。
男はその様子を、余さずスマートフォンのレンズに収めていく。
「ほら、レンズを見ろ。……これは君の『勤務評定』だ。これを後でじっくり見返して、自分がどれだけ汚れたかを、その脳に刻み込め」
男の動きは次第に激しさを増していく。
彼女の口内を蹂躙し、喉の奥を突き上げるたびに、彼女はむせ返り、涙を流した。
だが、男は止めるどころか、その髪をさらに強く引き絞り、彼女の顔を上向かせた。
「……あ、あぁ……っ、ん、んんぅーッ!!」
「……出すぞ。……君のその、夫に愛を誓った口の中に……俺の印を、たっぷりと注いでやる」
その瞬間、男の「支配」が、熱い奔流となって彼女の口内へと溢れ出した。
「……っ、んぐ、……げほっ、……んんっ!!」
逃れることは許されない。男の手が彼女の後頭部をしっかりと固定し、最後の一滴まで、その「汚れ」を飲み込むことを強いた。
やがて、男が満足げに腰を引くと、彼女は床に伏し、激しく咳き込んだ。
口元から溢れた白い汚れが、彼女の細い顎を伝い、床に落ちる。
男はそれを、勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、スマートフォンで撮影し続けた。
口内への一発目の「検品」が終わっても、男の欲望は衰えるどころか、さらに凶暴な熱を帯びていた。
彼女が床に伏し、荒い息をつきながら汚れを拭おうとしたその時、男の冷徹な声が再び頭上から降り注ぐ。
「……口だけで終わりだと思ったか? まだ『本題』が済んでいないだろう」
男は彼女の長い髪を掴み、無理やりソファーへと引きずり戻した。
「あ、あぁっ……! お願い、もう……もう許して……っ」
懇願も虚しく、彼女の身体は再び仰向けにされ、白く震える脚が、男の強い力によって左右に割られた。
「一発目は挨拶だ。二発目は、親会社の俺が、君という『子会社』の所有権を完全に登記させてもらう」
男は自身のスラックスを膝まで蹴り落とすと、二発目とは思えないほど硬く、猛々しく昂ぶった「支配の象徴」を、彼女の秘部の入り口に押し当てた。
「ひっ……! あ、あああぁっ!!」
潤滑などまったくないまま、暴力的な太さが、彼女の最奥へと一気に突き入れられた。
夫の優しさとは対極にある、内側から引き裂かれるような鈍痛。しかし、その痛みの中には、抗いがたい男の熱が混じり、彼女の神経を狂わせていく。
男はカメラを構えたまま、腰を激しく打ち付け始めた。
グチュッ、パンッ……と、肉と肉がぶつかり合う、この世のものとは思えない卑猥な音が、夫の眠る寝室のドアに跳ね返る。
「ほら、見てみろ。君の旦那がプレゼントしたソファーの上で、俺が君を犯している。……君の中は、俺のモノで溢れかえっているぞ」
「ん、ぁ……っ! ぁ、あぁ、あぁーっ!!」
男が腰を突き入れるたびに、彼女の頭はソファーの背もたれに激しく打ちつけられた。
男の言葉が脳を犯し、男の熱が子宮を犯す。
絶望的な屈辱感とは裏腹に、彼女の身体は、十年前の「あの夜」の快楽を完全にトレースし始めていた。
男は彼女の顔をグイと引き寄せ、スマートフォンのレンズを至近距離に向けた。
「……仕上げだ。君のその綺麗な顔を、俺の欲望で塗り潰してやる」
男の腰使いが速度を上げ、限界まで加速していく。
「あ、あ、ああああぁっ!!」
彼女が絶頂に達し、身体を弓なりに反らせたその瞬間、男は彼女の中から一気に抜き放ち、猛り狂った先端を、彼女の顔面へと突きつけた。
「……っ、ふ……!!」
ドロリとした、熱く、重い奔流が、彼女の瞳、鼻筋、そして震える唇へと次々に叩きつけられた。
一発目よりもさらに濃く、執着に満ちた白い濁りが、彼女の「妻としてのプライド」を物理的に塗り潰していく。
「げほっ、ん……ぅ……」
視界が白く濁り、男の吐き出した「汚れ」がまつ毛に絡みついて、目を開けることすらできない。
男はその惨めな、それでいて退廃的な美しさを放つ彼女の顔を、余さずスマートフォンの動画に収めた。
「……完璧だ。最高の絵が撮れたよ」
男は満足げに鼻で笑うと、まるで使い古した雑巾を捨てるかのように、彼女の顔に自分のネクタイを放り投げた。
「……それで拭いておけ。明日の朝、旦那に『顔が艶やかだな』と言われたら、俺のことを思い出して、心の中で笑ってやればいい」
深夜のリビングに、彼女のすすり泣く声だけが、虚しく溶けていった。
口元から溢れ、顎を伝う男の痕跡。
彼女は、自分がもう二度と、夫の愛した「あの頃の自分」には戻れないことを、身体に刻まれた熱さとともに、痛いほど理解していた。
男はテーブルの上のコーヒーを一口飲み、満足げに立ち上がった。
「……じゃあ、また近いうちに。……次は、もっと広い場所で、もっと大勢の『同僚』に見守られながら、君の奉仕を受けたいものだな」
玄関のドアが静かに閉まる。
後に残されたのは、深夜の静寂と、床に散らばった衣類。
そして、自身の身体の中に、そして心の中に、決して消えない「男の痕跡」を刻まれた、一人の妻の絶望だけだった。
玄関の鍵が閉まる、カチリという乾いた音が、彼女の意識を現実へと引き戻した。
男が去ったあとのリビングには、再び死のような静寂が訪れる。
彼女は床に崩れ落ちたまま、しばらく動くことができなかった。
口内に残る苦味と、太腿を伝い落ちる不快な熱。それらはすべて、たった今まで起きていたことが夢ではないことを、残酷なまでに証明していた。
(……洗わなきゃ……消さなきゃ……)
彼女は震える手で、床に散らばった衣類をかき集めた。男の指で引き裂かれた下着、床に落ちたブラウス。それらすべてが、今の自分を嘲笑っているかのように見えた。
フラフラと立ち上がり、彼女は浴室へと向かう。
リビングを横切る際、寝室のドアが目に入る。その向こうには、何も知らない夫が眠っている。その安らかな寝息さえ、今の彼女には鋭い刃となって胸に突き刺さった。
浴室に入り、鍵をかける。
脱衣所の鏡に映った自分の姿を見て、彼女は息を呑んだ。
髪は乱れ、瞳は赤く腫れ上がり、唇は男に蹂躙されてわずかに裂けている。そして、白い首筋には、隠しようのない赤黒い「痕」が、男の所有物であることを示す刻印のように浮き上がっていた。
「……う、あ……ぁ……」
声にならない悲鳴が漏れる。
彼女は裸になると、機械的な動きでシャワーを捻った。
冷たい水が身体を叩くが、肌にこびりついた男の感触は、どれだけ擦っても落ちる気配がなかった。
彼女は、石鹸を手に取り、狂ったように自分の身体を洗い始めた。
男が触れた首筋、男の指が抉った秘部、そして男の欲望を飲み込まされた喉。
皮膚が赤く爛れるほど強く、何度も、何度も、爪を立てるようにして擦り上げる。
(消えて、消えて……っ!!)
しかし、洗えば洗うほど、意識は逆行するようにあの瞬間の感覚を鮮明に呼び覚ました。
男の指が粘膜を弾く音、耳元で囁かれた夫を貶める言葉、そして、最奥を突き上げられた時の、あってはならない「快楽」。
「ん……っ、あぁ……」
不意に、身体の奥から熱が這い上がってきた。
男の熱い奔流が注ぎ込まれた感覚が、洗浄している指先を通じて脳へとフィードバックされる。
洗っているはずの自分の指が、いつの間にか男の指の動きをトレースし、疼きを鎮めるようにそこを愛撫し始めていた。
(……違う、これは私じゃない……私は、あんな男に……!)
自分自身の身体が、男に「書き換えられてしまった」という絶望。
清潔な水で満たされるはずの浴室で、彼女は自分の内側が、男のどろりとした執着で満たされていることを自覚させられた。
排水口へと流れていく白い泡の中に、先ほど男が放った「印」が混ざり込んでいく。
それは、彼女のこれまでの清廉な人生そのものが、濁流に飲み込まれていく光景のようだった。
鏡の中の「妻」は、もうどこにもいなかった。
そこにいるのは、身体の芯に男の火種を植え付けられた、ただの無力な獲物。
彼女は、濡れたままの身体で冷たいタイルの上にうずくまり、声を殺して泣き続けた。
浴室の換気扇の回る音が、彼女の絶望をどこまでも遠くへ、冷たく運び去っていった。
第2話へ続く。
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