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第1部
第2話:無防備な境界線
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第2話:無防備な境界線
兄貴が出張に出てから三日が過ぎた。
この数日で分かったことは、義理の姉という生き物が、俺が想像していた以上に「無防備」だということだ。
お嬢様育ちで、ずっと女子校、そのままお見合いで兄貴と結婚したという経歴のせいか、彼女には「男の視線」に対する警戒心が絶望的なまでに欠如している。あるいは、俺のことを「血の繋がらない弟」として、完全に安全圏に分類してしまっているからだろうか。
「ねえ、弟くん。洗濯物、乾いたから取り込んでおいたわよ」
リビングのソファで俺が仕事の資料をめくっていると、彼女が洗濯カゴを抱えて入ってきた。
その格好を見て、俺は思わず眉をひそめた。
家の中だからといって、薄手のキャミソールに、丈の短いショートパンツ。ブラウスを着ている時は隠されているが、こうして見ると彼女のスタイルは、兄貴が自慢したくなるのも頷けるほどに完成されていた。
屈み込んでカゴを置くたびに、キャミソールの胸元が大きく開き、豊かな膨らみが零れ落ちそうになる。
「……義姉さん、その格好。兄貴の前でもしてるのか?」
「え? ああ、これ? 楽でいいじゃない。お兄さんは『可愛いね』って言ってくれるわよ。……もしかして、お姉ちゃんが綺麗すぎて、目のやり場に困っちゃう?」
彼女は茶目っ気たっぷりに笑いながら、カゴの中から俺のシャツを手に取った。
その余裕。その、俺を完全に「男」として見ていない、残酷なまでの無知。
「綺麗すぎて、じゃなくて。だらしないって言ってるんだ。あんた、一応人妻だろ」
「もう、また『あんた』なんて。本当、可愛くない弟ね。お姉ちゃんがせっかく尽くしてあげてるのに」
彼女は頬を膨らませて見せたが、その隙に俺はカゴの中に視線を落とした。
俺の地味な下着やシャツの間に、場違いなほど繊細な、淡いピンクのレースが混ざっている。彼女の、清楚な外見からは想像もつかないほど高価そうな下着。
彼女はそれを、俺の目の前で平然と手に取り、丁寧に畳み始めた。
俺の視線がそこに固定されていることにも気づかずに。
「……手伝うよ」
「えっ? いいわよ、お義弟くんにそんなこと……」
「居候してるんだ。これくらいさせろよ」
俺は無理やりカゴを引き寄せ、彼女のブラジャーを手に取った。
指先に触れる、滑らかなシルクと硬いワイヤーの感触。そこからは、昼間の食卓で嗅いだものより、もっと濃密な彼女自身の香りが漂ってくる。
「……っ、ちょ、ちょっと……」
さすがに羞恥心を感じたのか、彼女の顔がわずかに赤らむ。だが、それでも彼女は俺を突き飛ばしたりはしなかった。
「……ありがとう。やっぱり、優しいところもあるのね。お姉ちゃん、見直しちゃった」
彼女は照れ隠しのように俺の頭を撫でようと手を伸ばしてきた。
その瞬間、俺は彼女の手首を掴み、そのまま引き寄せた。
「……! 弟くん?」
「義姉さん。あんた、さっきから『お姉ちゃん』ってうるさいけど。俺とあんた、血は一滴も繋がってないんだぞ。……分かっててやってるのか?」
掴んだ手首から、彼女のドクドクと速まる鼓動が伝わってくる。
彼女の瞳に、初めて「戸惑い」と「恐怖」が、一滴のインクを落としたように混ざり合うのを、俺は見逃さなかった。
「そ、そんなの……分かってるわよ。でも、家族だもの。そうでしょ?」
震える声で、彼女は「姉」という仮面を死守しようとする。
俺はフッと鼻で笑い、その手首を放した。
「そうだな。……家族だな」
俺は畳み終えた彼女の下着を、彼女の手に押し返した。
彼女が去った後、俺は自分の指先に残る、かすかな香りと感触を確かめた。
聖域は、少しずつだが確実に、内側から湿り気を帯び始めている。
その夜。彼女が風呂に入っている間、俺は洗面所へと向かった。
扉の向こうから聞こえる、水の音と、彼女が時折漏らす吐息。
俺は、彼女が脱ぎ捨てていったばかりの、あのラフなキャミソールを手に取った。
温もりが残る布地を鼻に押し当て、俺は暗闇の中で、静かに欲望を昂らせていった。
第2話 完
兄貴が出張に出てから三日が過ぎた。
この数日で分かったことは、義理の姉という生き物が、俺が想像していた以上に「無防備」だということだ。
お嬢様育ちで、ずっと女子校、そのままお見合いで兄貴と結婚したという経歴のせいか、彼女には「男の視線」に対する警戒心が絶望的なまでに欠如している。あるいは、俺のことを「血の繋がらない弟」として、完全に安全圏に分類してしまっているからだろうか。
「ねえ、弟くん。洗濯物、乾いたから取り込んでおいたわよ」
リビングのソファで俺が仕事の資料をめくっていると、彼女が洗濯カゴを抱えて入ってきた。
その格好を見て、俺は思わず眉をひそめた。
家の中だからといって、薄手のキャミソールに、丈の短いショートパンツ。ブラウスを着ている時は隠されているが、こうして見ると彼女のスタイルは、兄貴が自慢したくなるのも頷けるほどに完成されていた。
屈み込んでカゴを置くたびに、キャミソールの胸元が大きく開き、豊かな膨らみが零れ落ちそうになる。
「……義姉さん、その格好。兄貴の前でもしてるのか?」
「え? ああ、これ? 楽でいいじゃない。お兄さんは『可愛いね』って言ってくれるわよ。……もしかして、お姉ちゃんが綺麗すぎて、目のやり場に困っちゃう?」
彼女は茶目っ気たっぷりに笑いながら、カゴの中から俺のシャツを手に取った。
その余裕。その、俺を完全に「男」として見ていない、残酷なまでの無知。
「綺麗すぎて、じゃなくて。だらしないって言ってるんだ。あんた、一応人妻だろ」
「もう、また『あんた』なんて。本当、可愛くない弟ね。お姉ちゃんがせっかく尽くしてあげてるのに」
彼女は頬を膨らませて見せたが、その隙に俺はカゴの中に視線を落とした。
俺の地味な下着やシャツの間に、場違いなほど繊細な、淡いピンクのレースが混ざっている。彼女の、清楚な外見からは想像もつかないほど高価そうな下着。
彼女はそれを、俺の目の前で平然と手に取り、丁寧に畳み始めた。
俺の視線がそこに固定されていることにも気づかずに。
「……手伝うよ」
「えっ? いいわよ、お義弟くんにそんなこと……」
「居候してるんだ。これくらいさせろよ」
俺は無理やりカゴを引き寄せ、彼女のブラジャーを手に取った。
指先に触れる、滑らかなシルクと硬いワイヤーの感触。そこからは、昼間の食卓で嗅いだものより、もっと濃密な彼女自身の香りが漂ってくる。
「……っ、ちょ、ちょっと……」
さすがに羞恥心を感じたのか、彼女の顔がわずかに赤らむ。だが、それでも彼女は俺を突き飛ばしたりはしなかった。
「……ありがとう。やっぱり、優しいところもあるのね。お姉ちゃん、見直しちゃった」
彼女は照れ隠しのように俺の頭を撫でようと手を伸ばしてきた。
その瞬間、俺は彼女の手首を掴み、そのまま引き寄せた。
「……! 弟くん?」
「義姉さん。あんた、さっきから『お姉ちゃん』ってうるさいけど。俺とあんた、血は一滴も繋がってないんだぞ。……分かっててやってるのか?」
掴んだ手首から、彼女のドクドクと速まる鼓動が伝わってくる。
彼女の瞳に、初めて「戸惑い」と「恐怖」が、一滴のインクを落としたように混ざり合うのを、俺は見逃さなかった。
「そ、そんなの……分かってるわよ。でも、家族だもの。そうでしょ?」
震える声で、彼女は「姉」という仮面を死守しようとする。
俺はフッと鼻で笑い、その手首を放した。
「そうだな。……家族だな」
俺は畳み終えた彼女の下着を、彼女の手に押し返した。
彼女が去った後、俺は自分の指先に残る、かすかな香りと感触を確かめた。
聖域は、少しずつだが確実に、内側から湿り気を帯び始めている。
その夜。彼女が風呂に入っている間、俺は洗面所へと向かった。
扉の向こうから聞こえる、水の音と、彼女が時折漏らす吐息。
俺は、彼女が脱ぎ捨てていったばかりの、あのラフなキャミソールを手に取った。
温もりが残る布地を鼻に押し当て、俺は暗闇の中で、静かに欲望を昂らせていった。
第2話 完
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