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第二章フジヤマゲイシャスシテンプラハラキリデース!

2-5(日)大収穫デース

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 「驚きデース! あんなに美味しいローストビーフ食べたの初めてデース!!」


 確かに美味しかった。
 しかも紫乃のおススメのお店ってすごいボリューム。
 一番小さいのにしてもまるでタワーか火山のようになっていて真ん中に卵黄が入っていてホワイトソースが見栄えをよくして美味しいのなんの!

 久々に大満足だった私。


 「確かに美味しかったな。でもリンダちゃんいきなり生卵大丈夫だったの?」

 「平気デース! 混ぜて食べたら大丈夫でしたデース!!」


 あ、そう言えば外国人は生卵なんて食べないんだっけ?
 日本人が生卵食べていると驚くって聞いたけど、リンダは大丈夫だったみたい。

 「ローストビーフも半生だもの、それに絡めれば分からないわよ。でも美味しかったわね~」

 「本当です! 近所のショッピングモールのよりずっと美味しかったです!」

 「‥‥‥ここは美味しいもの多い。鳥のチャーシューで足丸々一つ入ったラーメンも絶品」

 「でもメイドさんカフェは割高なんだよ~。かわいいんだけどね~」

 「えっ!? そうなの紫乃ちゃん!!!? うわー、せっかくこの後みんなで行こうって言おうと思ったのに!」

 高橋静恵も矢島紗江もあのローストビーフを絶賛している。
 泉かなめはどうやら知っていた様で更にラーメンの事を言っている。
 あ、ちょっとラーメンも食べてみたいかも。

 しかし下僕その一、あんたなんで他の女が多い所へあたしたちを連れて行こうとしているのよ!?
 あのメイドさんたち胸大きかったじゃない?
 そんな所にお兄ちゃんなんか連れて行ったら大変な事になるじゃない!!

 後でこいつはお仕置きね。


 「それで、リンダちゃんこの後は何処行きたいの~?」

 「本とDVDが見たいデース!」

 紫乃の質問に元気に応えるリンダ。
 でも本屋なんかうちの近所にだってあるし、DVDとかもショッピングモールでも買えるんじゃないの?


 「ぬっふっふっふっふっ、ではとっておきのお店に連れて行っちゃおうかな~」


 なんか紫乃がやる気出している。
 私は少し不安になって紫乃たちに付いて行くのだった。


 * * *


 「何ここっ!?」


 「りゅうのあな」とか書かれた大きなビルに入る。
 すると途端に可愛らしい女の子のキャラクターポスターやら等身大看板が出迎えてくれる。

 
 「うおっ! これはこれで俺のハートを鷲掴みにする!!  すげーよな友也!」

 「可愛いのは分かるけど、ちょっとあざといと言うか‥‥‥」

 「でも新刊もこんなにそろってますね! 凄い!!」

 「‥‥‥ここには何でもある、アキバに来たら外せないお店」


 あたしも驚いたけどみんなも驚いているみたい。


 「OH-! ファンタスティック!! 凄いデース!!」

 「さあリンダちゃん、ここならあなたの欲望を満たせるよ~! いざ行かんお宝の山へ~」


 紫乃の掛け声にみんな思い思いに店を回っている。
 
 あたしも小説売り場に行ってみるけど何ここっ!?
 凄い種類だし、妹と兄の恋愛ものがこんなにっ!?

 い、いけない。
 欲しいっ!!

 あ、しかもこれって地元じゃ続巻買えなかったやつっ!

 思わず私はその小説を手に取る。
 カバーには宣伝の帯もついていていかにも新品っぽい。
 
 私はさらにいろいろと見て回る。

 と、紫乃とリンダが向こうの棚で何か見ている?


 「紫乃ぉ~、そっちって何?」

 「ああ、由紀恵ちゃん~。こっちは同人誌だよ~」

 同人誌って確か昨日も会場で売っていたあの本?
 でも会場で見たのはほとんどコピーだったけどここのってちゃんとした本だよ?


 「これって同人誌ってやつなの? って、何これ!? 薄っ!」

 私は取り上げた本がやたらと薄いので驚いた。
 そして値段を見て更に驚く。

 「ええっ!? こんなに薄いのにこんなにするの!?」

 「まあ製本は個人出版だからね~。商業用に比べると割高になっちゃうよねぇ~」

 「しかし凄いデース、流石JAPANデース! もうこれは買うしかないデース!!」

 こんな高い本買うんだ。
 私はどんな内容か気になって中をパラパラとめくってみると‥‥‥


 「うわっ!?」


 そこには男性同士がキスするシーンがっ!!
 驚き次のページを見ると半裸の男性同士が抱き合ってるぅぅっ!!!?

 「な、なにこれっ!? し、紫乃ぉ~!!」

 「由紀恵ちゃん、ここは大人しく楽しまないとだめだよぉ~。ここはR15だからセーフなんだよぉ~。よく言うじゃない、『ホモが嫌いな女の子はいません!』って~」

 「OH-! 紫乃それって巨乳の黒髪の子ですねデース! 帰国子女デース!!」

 またまた紫乃とリンダが訳の分からない事言ってるけど、確かにこれは凄い。
 私の知らない世界。
 そして絵が奇麗。

 思わず後ろのページをめくってしまう私。

 と、他の本も目に留まる。
 それは私がよくよく読んでいる兄と妹の恋愛小説の同人誌!

 思わず手に取ってそれをめくると‥‥‥

 
 「はうっ! ////」


 もう凄いのなんのっ!
 主人公の女の子がこんなにかっこいいお兄さんと、キ、キスするシーン!!


 なにこれすごぉぉおおおぉぉぉぃいいぃっ!! 


 思わず後ろまでめくってその物語を堪能してしまった。
 そしてお値段を見る。

 ぐっ! 
 確かに個人出版てやつだから高いんだろうけど‥‥‥

 しかし私は気づいてしまった。
 この本以外にも扉絵にもっと似ている本も有ると言う事を!


 「だ、駄目なんだからね、ほ、本当はダメなんだからね!」


 いつの間にか私は訳の分からない事を言いながらそれらの本を確認しまわっていた。

 「ああ、いたいた、由紀恵ちゃんそろそろ他の階にも‥‥‥ ってっ!? なにこれ修羅っ!?」

 高橋静恵が私たちを呼びに来たようだけど今は忙しい。
 私と紫乃、そしてリンダは心行くまでこの薄い本を吟味するのだった。


 * * *


 「まさかこんな事になるなんて‥‥‥」

 「でもお宝ゲットデース!」

 「ね、ここすごいでしょ~?」

 結局私も薄い本を二冊も買ってしまった。
 だってすごく絵が奇麗だし、あのシーンは見ているだけでニマニマしてしまうほど。
 もしこれが私とお兄ちゃんだったら何て思うともうそれだけで!!


 「なんか由紀恵ちゃんが遠くに行った気がするわ」

 「あれ、そうなんですか? 楽しそうですけど?」

 「‥‥‥とうとうこっちの世界に来たわね。歓迎するわ同志よ!」

 
 なんか後ろで言っている様だけど今は気にもならない。
 うん、良い買い物が出来た。

 その後紫乃のおススメの台湾かき氷マンゴー味をみんなで楽しんで、最初のフィギアのお店でリンダが英断でお高いフィギア買って駅に戻る。


 「はぁぁあああぁぁぁ~、最高でしたデース」

 「ふううぅぅ~、みんなを連れて行きたい所全部に連れて行けたねぇ~」

 「まあ楽しかったけど、流石に何度も来るのは考えものね? 私もなんだかんだ言って色々買っちゃったし」

 「そうですね~。バイトでもしないと欲しいもの買えないですし。本当にすごい所ですね?」

 「‥‥‥ふふふっ、今日は紫乃ちゃんのおススメだから大人しい方。本当はもっと。ふふふふっ‥‥‥」

 「うわっ! 泉のそれ怖いっ! って、でもあのメイドさんのお店は行ってみたいなぁ~」

 「なんだよ結局はメイドさんかよ剛志は?」

 「そう言う友也だって!」

 そう言って下僕その一は紙袋を取り出す。
 
 「後で俺のも見せてやるから友也のも見せてくれよな!」


 ん?
 お兄ちゃんも何か買った?
 俺のも見せるからお兄ちゃんのも??


 私はお兄ちゃんを見るとお兄ちゃんはさっと目を逸らす。

 「お兄ちゃん、何買ったの?」

 「い、いや、ほらそのなんだ‥‥‥」

 脂汗をにじませてお兄ちゃんは数歩下がる。 
 そこへ私たちが詰め寄る。


 「お兄ちゃん!」

 「長澤君?」

 「先輩?」

 「‥‥‥私のならいつでもいいよ?」

 「友ちゃんおっぱい好きだからねぇ~」

 「OH-! そうでした友也おっぱい星人でしたデース!」


 そしてトドメに下僕その一が余計な事を言う。

 「なんだよ、さっき一緒に薄い本買ったじゃん、友也!」


 なっ!?
 う、薄い本て事は‥‥‥


 思わず下僕その一の紙袋を奪いそれを開けると中から胸の大きなメイドさんの絵が描かれた薄い本がたくさん!?
 私は思わずお兄ちゃんを見る。


 「もう、お兄ちゃんのえっちぃっ!! 私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!?」



 今日も私の叫びが響くのだった。 
       

 
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