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第十章

10-1ジマの国

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 10-1ジマの国


 あたしたちは亡者の王リッチからこのジマの国を取り戻すためにミグロさんたちに協力する事に成った。



 「それで、主様、お腹がすきました」

 「えーと、コクは何を食べれるのですわ?」

 一斉に蜂起して攻撃を始めるのは六日後だ。
 それまでに各地に分散している仲間たちに伝達して準備を進める。
 なのであたしたちはそれまでに更にいろいろな情報を集めたり準備をしていたりする。


 今は与えられた部屋でコクと二人で休んでいた。

 「この体になりましたから通常の物も食べれます。しかしそうするとかなりの量を食べなければなりません。なので効率を考えると主様のおっぱいが良いです」

 「はい?」

 「主様のおっぱいが良いです」

 重要な事なので二回言われた。

 でも見た目が五、六歳になったわけだしもうおっぱいと言われても‥‥‥

 「コク、もう自力で栄養摂取できるのなら私のおっぱいをせがむのはどうかと思いますわ」

 「いえ、主様の魔力は今のこの体に非常に相性が良く、吸収効率も高いのです。普通の食物ではマナを取り込み魔力還元して吸収するには効率も悪く、大量に食事をしなければなりません。効率を考えるとやはり主様のおっぱいです!」

 コクは瞳を輝かせながらにじり寄る。
 既によだれまで出始めている。

 「コク、理解はできましたからおっぱい以外の部位から魔力摂取出来ませんかですわ?」

 「いえ、おっぱい一択で」


 なんで一択なのよ!?

 
 そう言ってコクはあたしの胸に飛び込んでくる。

 「主様ぁ~、おっぱいが良いですぅ~ だめですか?」

 ウルウルと上目遣いであたしに抱き着いてくる。
 そしてふるふると小動物のようにして尻尾を振っている。


 うわっ、か、可愛いぃっ!
 しかも自分に似ているせいで余計に母性本能がくすぐられる。


 あたしはしばし思案して周りを見る。
 シェルいない、イオマもいない。
 だったら‥‥‥

 「し、仕方ないですわね。コクは甘えん坊さんですわ。でもシェルやイオマたちには内緒ですわよ」

 「はいっ! 主様大好きっ!」


 ううっ、素直なコクは可愛いわねぇ‥‥‥


 あたしはいそいそと胸を出しコクを抱きかかえる。
 こんなに大きくなってもおっぱせがむなんて、ほんと甘えん坊さんだなぁ~

 コクはさっそくあたしの胸に吸い付く。
 胸がこそばゆくなって魔力がそこへ集まっていく。
 コクは魔力を吸い始める。
 
 あたしは一生懸命に魔力を吸うコクを見る。
 真っ黒な髪の毛をなでながら自分に子供が出来たらやっぱりこうなるのかなぁ~なんて思う。

 そんなちょっとやわらかい空気の時間が流れていく。



 「う、うらやましいでいやがりますね、黒龍様に授乳できるなんて。確かに私の胸は主様ほど大きくなく黒龍様に満足してもらえませんが人間如きの主様に黒龍様をお任せしやがるとは‥‥‥」


 って、いつの間に入ってきたのよクロエさん!?


 「お姉さまコクちゃんばっかり可愛がって最近全然相手してくれないんですよねぇ~」

 「エロハイミ、とうとう幼女にまで手を出したか? 全く見境無いわね!」


 イオマやシェルまでいつの間にっ?


 「い、いつの間にあなたたちまで入ってきたのですわ!?」

 「いつの間にも何も何度呼んでも返事ないから普通に入ってきたらコクにおっぱいあげてるんだもん、嬉しそうに」

 「お、お姉さま幼女の方が良いのですか??」

 「主様、いくら主様も黒龍様に手を出しやがったらただではおかないでいやがりますよ?」


 まてまてまて、あたしにそんな趣味は無い!
 コクは純粋にあたしの魔力で育ってあたしに似てそして甘えるからついつい相手してしまうのであってあたしに幼女趣味は無い!


 「私がコクに手を出すとか微塵もあり得ませんわ! ただ可愛いなぁ~って思っているだけですわ!!」

 と、いきなりコクがいきなり魔力を吸うのをやめた。
 そしてコクはあたしを見上げてとんでもない事言い出した。

 「主様、コクは主様が大好きです。どうぞ好きにしてください (ぽっ)」


 「やっぱり手を出す気でいやがりますね!?」

 「お姉さまあたしにも手を出してください!」

 「エ、エロハイミ、本当に見境なくなったか!?」


 無い無い無いっ!!
 なんでそうなる!?


 「私はティアナ一筋ですわぁっ!」

 あたしは叫ばずにはいられなかった。


 * * *


 「それでずっと聞きたかったことですけど、コクとジマの国ってどういう関係ですのですわ?」
   
 「はい、この国の初代国王は私の子供でした。ディメルモ様との間に出来た子でした」


 なにっ!?
 ちょっとマテ、暗黒の女神ディメルモ様って女性だよね?
 コクも当然女性だよね?
 同性どうしで子供産んだって事!?


 「正確に言うとディメルモ様の魔力をいただいた私が自分で子供を産んだのですが、竜族より女神様の属性が強く出たようでドラゴンニュートの姿で生まれました」

 「ちょっと待ってですわ、自分で子供を産んだって言うのはどういう事ですの?」

 「私たち竜族は両性具有です。人間でいう男女と言う概念自体が有りません。ですので必要であれば自分で仲間を産み増やせるのです。ただそれは本能だけで生きている下級竜が主でいろいろな理由で数が減ってしまうからです。古代竜などは再生の秘術で記憶はそのままで新しい肉体を手に入れられるので自分の子供自体を産むと言う事は稀です」

 なんと、竜族って両性具有だったのか!
 もともとその数が少ないのでその生態自体があまり知られていなかったけど言われてみれば竜って雄雌って聞いた事無かった。

 「でもそうするとミグロってコクの血を引いているの?」

 シェルはもらってきた果物を食べながら聞いてきた。

 「そうですね、かなり薄くはなっていますが私の子孫と言う事に成ります。何百世代後かはわかりませんが」

 「そもそもドラゴンニュートって竜人の事ですよねお姉さま? 伝説の」

 「そうですわね、いるのかいないのかその存在自体が謎の種族ですわ」

 ドラゴンニュートと言えば伝説で語られている存在でリザードマンの上位種とも言われている。
 しかしその存在自体確認された事は無く、伝説の中でしか語られていない。

 「それは仕方ありません、ドラゴンニュートは私の子供とクロとクロエの三人ですから」


 え?
 どういう事??


 「生み出された形は違えどこの三人は私を母体としています。私とディメルモ様の子供はその後に多種族と交配を重ねながら数千年を生きましたが、後の人間の血が濃くなった子孫に殺されてしまいました。そんな争いが嫌になって私は迷宮の奥底に帰ってしまいましたが人とはなるべく接したくは無かったのでクロとクロエを生み出しました。そしてディメルモ様の居城の番人の命を与えたのです」

 クロさんは黙っていたがクロエさんは何か驚いているようだ。

 「黒龍様、そうすると黒龍様は私の母親となるのですか?」

 「クロエ、そう思ってもらっても構いません」

 言われたクロエさんはすぐさまコクの小さな胸に飛び込んでいく。
 
 「黒龍様が私の母親だったなんて! ああ、黒龍様ぁ~」

 「クロエ、いつも手伝ってくれてありがとう」

 コクに頭をなでられているクロエさんはだらしない顔になっていた。
 しかし幼女に頭なでられてデレてる黒髪美少女のメイドって誰得なのよ!?

 コクはクロエさんの頭をなでながら話を続ける。

 「その後魔法王ガーベルがイザンカの国を立ち上げ女神の御業の秘密を人間たちに広めていったので私はジマの国の子たちが心配になってたびたび様子を見に出ていたのです。しかしあの日亡者の王リッチがいきなり攻め込んできてジマの国を滅ぼした。私はそれを阻止しようと地上に出た時にリッチの罠にかかり呪いをかけられたのです」

 そう言う事だったのか。
 コクとこのジマの国の関係は根深いものだった。
 黒龍が数十年に一度にこのジマの国だけに現れていた理由も分かった。

 「だからミグロさんに協力する気になったのですわね?」

 「それもありますが一番は主様の為です。主様があのリッチを討伐するというのであればこのコク、必ずやお役に立ちます」

 コクはクロエさんの頭をなでるのをやめその場に膝をつきあたしに頭を下げる。

 「コク、分かりましたから頭をおあげなさいですわ、一緒にあのリッチを倒しこの国を取り戻しましょうですわ」

 「はいっ、主様!」

 そう言ってコクは再びあたしに抱き着いてきた。
   

 あたしたちは黙々とその時まで準備を進めるのだった。

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