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第五章お兄ちゃんは知っちゃいけないよ!?
5-9私泣いても良いよね?
しおりを挟むあれから私はお兄ちゃんを意図的に避けていた。
私のそんな態度にお兄ちゃんは何も言わず私に対して最低限の接触でいてくれた。
「とうとう明日かぁ‥‥‥」
明日の土曜日にとうとう運命の時が来る。
ラブレターをもらって数日。
お兄ちゃんに冷静に判断してもらおうとする為にわざと時間を置いたらしい。
「はぁ、失恋しちゃった‥‥‥」
もう何度目だろう。
私はベッドにあおむけになって目を腕で覆う。
そしてやはり何度目だろう、涙を流す。
お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
お兄ちゃん!!
どんなに泣いてもどんなに思っても私の思いは届かない。
いや、届いてもどうしようもない。
兄妹なんだから‥‥‥
「‥‥‥いっそ吉野君と付き合おうかな?」
ぽつりと言ったその言葉に私の心が悲鳴を上げる。
嘘だっ!
そんな心にも無い事っ!
そうしてまた自己嫌悪に陥る。
ここ数日ずっとそうだった。
「もう何でもいいや‥‥‥」
私はそう言って布団を頭からかぶるのだった。
* * * * *
「あら、出かけるの?」
「うん、ちょっとね‥‥‥」
お兄ちゃんは既に家を出た。
私はそれを遠くに見て目を逸らせた。
あの後お兄ちゃんの表情は何時もあまり良く無かった。
多分悩んでたのだろう。
でも今日のこの時に出かけていると言う事はだれを選ぶか決まったのだろう。
私は部屋で勉強をしていたのだけど全然手につかなかった。
そして何となくカレンダーを見ていつも買っている雑誌の販売日であることに気付く。
それなので気分転換にその雑誌でも買いに行こうと今こうして玄関で靴を履いていた。
「友也も出かけちゃったけど、お昼どうする? お母さんはお父さんと買い物に行っちゃうけど?」
「う~ん、自分で何とかするよ。行ってきます」
私はそう言って家を出る。
そしていつもより時間がかかって本屋さんまで行くのだった。
* * * * *
「はぁ、ここに来るのも久しぶりね‥‥‥」
丘の上の公園になんとなく来ていた。
ここは昔お兄ちゃんたちとよく遊びに来ていた所だ。
既になん十年も前から変わらない遊戯具がある。
私はそんな中見晴らしのいい展望台に行く。
ここから街全体が見渡せるからだ。
「夜には少し怖いけどここってちょっとした穴場なのよね‥‥‥」
私のラブレターに書いていたお兄ちゃんに来てもらいたかった場所。
安全の為に設けられている手すりに寄りかかり街を見る。
今頃選ばれた人は幸せの絶頂にいるのだろうなぁ。
「‥‥‥お兄ちゃん」
「やっと来たか、来ないかと思ったよ」
私はそのあり得ない声に驚いた。
「ほぉぇ!? お、お兄ちゃん!!!?」
見れば死角に入っていたベンチに座ったお兄ちゃんが立ち上がりこちらへ来る。
「な、なんで? 誰かの所に行ったんじゃないの?」
「ん~、まあここ数日中に本気で怒られたけどやっぱり無理して誰かを好きになるべきじゃないと思ってね」
そう言ってお兄ちゃんは持っていたコーヒーの缶を飲み干す。
ベンチを見れば他にもコーヒーの缶が‥‥‥
「そんな、じゃあ誰かの所に行ってないの!?」
「まあな、今は誰とも付き合うつもりは無いってここ数日話してきた。それに由紀恵にしごかれて地元の大学行かなきゃなんだろ? だから大学に行くまで誰とも付き合わないって。そうしたらあの三人にすごく怒られた。泉なんか泣いちゃって大変だったんだぞ?」
え?
じゃ、じゃあぁ‥‥‥
「今はさ、由紀恵たちと楽しくしている方が良いんだよ」
お兄ちゃんはいつもの笑顔でそう言ってくれる。
思わず視界がゆがむ。
「お兄ちゃん!」
思わず私はお兄ちゃんに抱き着いてしまった。
「おいおい、どうしたんだよ由紀恵?」
「ばかばかばかっ! 私は誰かにお兄ちゃん取られちゃうってずっと悩んでいたのに!!」
「ん、ごめんな。でもさ、今は由紀恵と一緒にいる方が楽しいんだ。お前と一緒にいると自然とみんなも集まってわいわい楽しくてさ! だからみんなには大学に行くまで時間をもらった。大学に行ったら、その間に誰かを好きになれたらその娘と付き合うってね」
それを聞いて私は更に大泣きでお兄ちゃんの胸に顔をこすりつける。
「ふぇぇえええぇぇん! やっぱり私お兄ちゃんの事が好きぃっ!」
「はははは、ありがとうな」
どうやらお兄ちゃんは私が「妹」として「好き」と言ったと勘違いしたようだ。
だけど今はそれでも仕方ない。
誰かにお兄ちゃんを取られるよりはずっと良い。
お兄ちゃんのあの笑顔がまた見られる。
今の私にはそれだけで十分だった。
「さてと、いい加減腹減って来た。うどんでも食べに行かないか?」
「ひっく、ひっく。う、うん‥‥‥」
何とか泣き止んで涙を手で拭いているとお兄ちゃんがハンカチを差し出して来てくれる。
「ほら、使えよ。‥‥‥っと、そう言えば由紀恵も俺に手紙くれてたけどもしかして?」
ハンカチを受け取って涙を拭いていた私は思い切りぎょっとしてしまう。
「ななななな、それは女の子の秘密! お兄ちゃんのばかぁっ! えっちぃっ! そ、そんな事、お兄ちゃんは知っちゃいけないよ!?」
真っ赤になっている自分に焦りながら私はそう言う。
「ははっ! さて飯食い行こう!!」
そう言ってお兄ちゃんは手を差し出してくれる。
私はその手を握って一緒にこの公園を後にするのだった。
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