1 / 26
プロローグ
第一話:ユーリィの記憶
しおりを挟む痛い……
とても痛い……
彼は薄れゆく意識の中で、そう思う。
しかしその意識はやがて暗闇《くらやみ》に落ちて行く。
そして彼は意識を失うのだった。
◇ ◇ ◇
「もう、ダメかと思ったわ。まさかユーリィが崖から落ちるなんて!」
可愛らしく三つ編みにした女の子が、彼のベッドの横でお見舞いで持って来た花を花瓶にさしている。
目が覚めて二日目、まだ頭がグルグルしている。
いや、正確には混乱をしている。
彼の名はユーリィ。
今年十歳になる普通の男の子だ。
幼馴染のシーラがお見舞いに来てくれていた。
と言うのも、ユーリィは数日前崖から落ちて頭を強く打っていた。
そして昏睡状態でずっと眠っていたのだ。
ユーリィが気が付いた知らせを聞いたシーラは急いで彼のお見舞いに来ていた。
そして一つ年上のお姉ちゃんらしくお小言を言いながら彼を見る。
「だからあんな危ない所へ村の男の子たちに付いて行っちゃだめよ?」
頬を膨らませながらそう言うモノの、幼馴染のユーリィが気が付いた事は嬉しく思っている。
しかし、肝心なユーリィはまだ呆然としている。
それもそのはず、彼の頭の中にある記憶は、先輩に言われて慌てて雨の中なのに買い出しに行って、信号無視の高齢者が運転するハイブリットの車にはね飛ばされていたからだ。
だが、この村で生まれ育ったことも知っている。
そして自分が普通の農家の家に生まれて、ユーリィと言う名である事も。
「大丈夫?」
そう言ってシーラはユーリィの顔を覗き込む。
いつも一緒にいてくれて、村のいじめっ子から助けてくれる幼馴染の女の子。
そんな彼女は心配そうにユーリィの顔を見ている。
「う、うん、ありがとうシーラ。大丈夫。ちょっと記憶が混乱してるみたい……」
そうは言うモノの、内心はかなり焦っている。
なにこれ?
もしかして俺って死んじゃって転生してるの?
それにここって日本じゃない。
どう言う事?
俺は工藤拓馬、十九歳で料理学校卒業して有名なレストランで新人として頑張り始めたばかりなのに?
そんな事が頭の中でぐるぐる回っている。
しかし、ユーリィとしてこの世界で生まれ育ったことも知っている。
そして、ここが異世界である事も。
「もう、まだまだ大人しくしてなきゃだめよ? ほら寝てなさい。 チュッ♡」
いきなりシーラに頬にキスされてそう言われる。
シーラはややはにかんで頬を朱色に染めているが、くるりと踵《きびす》を返して扉の方へ行く。
「とにかく大人しく寝てなさいね! じゃ、また明日来るから」
そう言ってそそくさと行ってしまった。
ユーリィはキスされた頬に手を当てて驚きの表情になる。
今まで頬にキスなんてされた事なんか無いのに!
少年であるユーリィはそう焦るも、中にいる工藤拓馬はこの状況に焦っているのだった。
10
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる