魔王様の小姓

さいとう みさき

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第三章:魔王様の敵

第十四話:魔王様と円卓の会議

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 今、この東の魔王城にグランドクロスと呼ばれる世界の魔王たちが集まっている。


 円卓のそのテーブルには、東の魔王ザルバード=レナ・ド・モンテカルロッシュ・ビザーグ、西の魔王ロベルバード=レナ・ド・ウェスタ―・ロマネテ、南の魔王アファネス=レナ・ド・アシューク・リゼッテリア、そして北の魔王エレグルス=レナ・ド・ザビンチ・シュクリナーゼがいた。


「それで、我々を始祖の魔王レナ・ドの名を使って呼びよせるとは何事だ?」

「カイトの話では、魔族の根幹にかかわる話だって聞いたけどね」

「うーん、なにを企んで知るのかなザルバードは?」

 北の魔王は始祖の魔王の名を使って呼び寄せた意図を問う。
 南の魔王はニヤニヤしながら知っている所まで言う。
 そして軽い口調で西の魔王は北の魔王ザルバードに言うも、その眼だけは笑っておらず、彼の考えを待っている。


「はっ、そう焦るなよ。俺様が魔族全体の未来について考えてやったんだ。いいかお前ら、中央の創世の女神を祭ってある聖地を中心に人族の国が広がっているのは知っているよな? 俺たち魔族はその聖地から弾かれるように東西南北へとその勢力を追いやられた」

 ザルバードはそう言いながら手を振ると円卓の上に世界地図が浮かび上がる。
 中央の創世の女神を祀る聖地を中心に人族や亜人たちの国が広がっていて、その東西南北に魔族の領域である四大魔王の領地がある。


「始祖、レナ・ドが創世の女神に敗れ早一万二千年。我ら魔族はその力を四分割にされ、四方へと追いやられた」

「まぁ、それでも近隣の人族を中心とする国とはずっと小競り合いをしていたけどね」

「そして我らの勢力が強くなると、必ず勇者が現れ私たち魔王の誰かが討たれる」


 北の魔王エレグルスは自分たちの名前の中にある、始祖レナ・ドの敗北を悔やんでいた。
 南の魔王アファネスはその後の自分たちの様態を思い出している。
 そして西の魔王ロベルバードは北の魔王ザルバードを見ながらそう言う。


「そうさな、俺たちの始祖レナ・ドが創世の女神をぶっ飛ばしていれば天下は俺たち魔族が支配する事が出来ただろう。しかし俺たちは人の魂を喰わなければ死んでしまう。だから人族を襲い、蹂躙して来た。だがその歴史を変える必要がある。それが今回お前らを呼んだ理由だ」

 ザルバードはそう言いながら胸を張る。
 そんな様子をアファネスがからかいながら言う。

「なんだよザルバード、僕たちを呼んで一気に戦争を人族に仕掛けるつもりかい?」

「ふむ、いよいよ世界を我ら魔族の物にするつもりか?」

 アファネスのそれにいち早く反応したのは北の魔王エレグレスだった。
 しかし東の魔王であるザルバードは首を振る。


「いやいや、それをしちまったら俺たちの食料である人間がそのうちいなくなっちまう。そうすれば俺たちもいずれは飢えで死んじまう」


 そう言いながらザルバードは指を世界地図にとんと置く。
 すると、創世の女神を中心とした人族の領域にぐるっと円形の輪が描かれる。


「俺様が提唱するのは魔族が支配する緩急地の設置だ。俺たち魔族がその気になれば人族の国の一つや二つは潰せる。だが、それは結局俺たちの食料が枯渇する原因にもなっちまう。そこでだ、俺様の所で試験的にやっている人間を家畜として飼う事により、安定して食事が出来るようにしようってんだ」

 ザルバードはそう言って、もう一度地図をトンと叩く。
 それを見ながら他の魔王たちは暫し黙ってしまう。



「人間を家畜とするか……」

「確かに、全部の魂を吸いきらなければ、しばらくして回復するから長々と食事として使えるけど」

「私たち魔族と人族は相容れない存在。そう上手く行くのかい?」

 北の魔王エレグレスがそう言い出さすと、他の魔王もその疑問を言い出す。


「大丈夫だ、そこは俺様の小姓であるユーリィがいる! あいつの言う事は人間たちが俺たち魔族に従順するには十分だった。だから今この魔王城では飢えを感じることは無くなった。どうだ、すっげーだろ!?」


 ザルバードはまるで悪戯が成功した子供のように嬉々としている。


「あの人間の小姓か」

「ふーん、あいつがねぇ」

「ユーリィって、あの厨房にいた人間の少年か」

 他の魔王たちは既に面識のあるあの少年を思い出す。
 あの少年がそんな事をこの東の魔王であるザルバードに提言しているのか?
 魔族と人とが安定して、魔族の支配下に収まるものなのだろうか?

 疑問は尽きない。
 しかし、ザルバードの顔には確信的なモノがある。


「私は…… その構想をもう少し詳しく聞きたいかな?」

「ロベルバード、相手は人間だぞ?」

 西の魔王、ロベルバードは東の魔王ザルバードのそれに興味を示す。
 しかし、過去に人間との因縁がある北の魔王エレグルスは疑念を示す。


「んで、どうやって人間たちを家畜とするんだよ?」

「それはなぁ」

 南の魔王であるアファネスはニヤニヤ顔のまま、東の魔王ザルバードに聞く。
 ザルバードはドカッと椅子に座り直し、手を円卓の方に向けると水晶の玉が現れる。
 そしてそこに映像が映し出される。


「まずは人間たちを捕らえ、『契約の首輪』をつける。そして俺たちが食事をする以外は飼育場で自由にさせるんだが、自分たちの食料は自分たちで作らせる。まあ、人間たちの村をつくる様なもんだな」

 映し出されたそれはまるで農村のようだった。
 ただし、住民は全て首輪をしている。

 そして驚くことにその村には魔族の衛兵が常駐していた。


「俺の所じゃ、ユーリィの発案で城の外にも飼育場を作った。『契約の首輪』があるから逃げ出す事は出来ねぇ。しかし代償として外部からの魔物や魔獣から身を守ってやる。そして『税』とか言う名前で順番に魂を吸い取る。それを繰り返すと、こいつらは死なずに魂も回復してゆき俺たちの食料として長々と使えるってわけさ」

 自慢げにそう言うザルバード。
 実際にはほとんどユーリィの発案であるが。


「人間が魔族に従うというのか?」

「ああ、『税』と言って魂を吸うが、なぜかメス共は喜んで魂を吸われるってのが分かんねーがな」

 魔族は力ある者になるにつれ、その容姿は整って行く。
 正直、強ければ強いほどイケメンになる。
 そして魔族の唾液には媚薬効果がある。

 発情した人間の魂はその味が格段と良くなる。

 なので、今では村娘の中には魂を吸われることを自ら望む者さえ出始めていた。


「ふぅん、これは興味深いね」

「自分から魂吸ってくれって、人間って本当にバカだよね?」
 
 西の魔王ロベルバードはそれを見ながら興味を示す。
 そしてニヤニヤ顔の南の魔王アファネスは人族を馬鹿にしながらもその眼は興味を示す色をしていた。

「ザルバード、お前はつまりは人間を従えた村を作りあげ、人族との領域を隔てる緩急地を作るというのだな?」

「ああそうだ。魔族として見れば少々退屈になるかもしれねーが、何時も腹を空かせることは無くなる。人族を滅ぼす事も無く、食事にありつければ配下の連中も飢える心配もねぇ。どうだ、すっげーだろ?」

 東の魔王ザルバードは腕を組んで偉そうにそう言う。
 しかし、北の魔王エレグルスはつまらなさそうな顔のまま言う。


「しかし、人族が攻め込んで来たらどうする?」


「結界を張る。人族と俺たち魔族の領域の間に結界を張ってこちらにそうそう来れねぇようにする。それには俺たちグランドクロスが一斉に結界を張る必要がある。それでもしつこく俺たちの家畜に手を出そうとするなら容赦はしねぇがな!」

 東の魔王ザルバードはそう言って、だんっとテーブルに手をつく。
 北の魔王エレグルスはそれを見て、ため息をついて言う。


「分かった、我は同意しよう」


「へっ? なになにエレグルスはこれに同意しちゃうの?」

「悪くはないと思うよねぇ、でも人間をいたぶれなくなっちゃうのは、暇をもてあそびそうだけどね」

 エレグルスの同意に南の魔王アファネスは驚く。
 アファネスにしてみれば人間嫌いのエレグルスが最後までごねると思っていたからだ。

 
「下らん人間といつまでもちまちまと戦争を続けるのに飽きただけだ。我が配下の食糧事情が改善するならば我は同意する」

「私も同意するよ。暇になっちゃうけど、配下の連中をこれで飢えさせないならね」

 アファネスにそう答えるエレグルス。
 そして西の魔王ロベルバードも同意の意向を示す。

 しかし、南の魔王であるアファネスはニヤニヤ顔をやめて、すっと真顔になってから言う。


「僕も同意したいけど、一つ問題がある。勇者が現れた。こいつを何とかしないと安心して同意は出来ないね」


 ガタっ!
 ガタッ!!

 
 しかしアファネスのその一言で北の魔王と西の魔王は思わず腰を浮かす。
 

「アファネス、それは本当か?」

「勇者だと? ほんとうに勇者が現れたのかい??」


「ああ、本当さ。もうザルバードも知っているよね? 勇者が僕の領域に接する人の国、ウルグスアイ王国に現れたんだ」




 南の魔王アファネスの言葉にこの円卓は一気にその空気が変わるのだった。 

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