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第四章:帰還への旅

4-9伝達

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 カリナさんたちとユエバの町まで行く事になったけど、キャラバンの人やネコルさんたちが心配だった。
 しかしグリフォンの群れの強襲でみんな散り散りに逃げ去ったのでその安否も分からない。

 カリナさんたちはユエバの町を拠点に冒険をしている冒険者で「エルフの剣」と呼ばれるパーティーだとか。
 そしてこの町では一番の有名なパーティーだそうだ。

 日も暮れ始め私たちは焚火を囲んでそんな話をしている。 


「『エルフの剣』ですか? まるでカリナさんがリーダーみたいですね?」

「あら、私がリーダーよ。この子たちが小さな頃から鍛えたのは私だしね」

 カリナさんのその言葉に驚きトーイさんやザラスさん、ネッドさんを見る。
 すると皆さんバツの悪そうな顔をして頷く。


「まあ、カリナとは古い付き合いだしな」

「ユエバの町でカリナを知らないやつはいないしな」

「いろいろと町にも貢献してもらってますしね」

 
 改めて私はエルフと人族の違いに気付かされる。

 トーイさんもザラスさんもネッドさんもほとんど同じくらいの歳に見える。 
 多分二十代半ばくらいかな?
 でもカリナさんとは小さな頃からの付き合いだとか、鍛えられたとか。

 もし自分の知り合いがどんどん年を取って大きく成っても私たちエルフは変わらない。
 なんかそれは寂しくも感じる。


「そうかぁ、みんなカリナさんが好きなんだ~」

「「「な”っ!//////」」」


 ルラはにこやかにそう言うと皆さんが顔を赤くしておどおどとし始める。


「ふふぅ~ん、そんな事はバレバレよ。みんな私についてきたくて鍛えてきたのだからね。でもまだまだね」


 カリナさんにそう言われて皆さんはしゅんとする。
 
 うーん、この辺は流石に大人の女性、年下の男性を見事に扱っている。



「さてと、それじゃあ大体の話は理解できた。ファイナス長老にエルフのネットワークでこの事を伝えなきゃね」

 カリナさんはそう言って立ち上がり少し離れた所で風の精霊を呼び出す。
 それはトランさんがしていたのと同じくつむじ風が舞い、カリナさんを包み込む。
 そしてふわっと浮き上がるとカリナさんは手短に、そして事実だけを風の精霊に伝える。

 風の精霊がメッセンジャーとなって空高く飛んでゆくとカリナさんは長い金の髪の毛をふわっと揺らしながら地面に足をつける。


「ふう、これで大丈夫ね。トランの事は残念だけど村のみんなには伝えたわ。そしてあなたたち双子が今私と一緒に居る事もね」

 カリナさんはそう言って私とルラを見る。
 そして言い聞かせるように聞く。


「今回の件でわかったと思うけど、このイージム大陸はあなたたちが考えている以上に過酷な所よ? キャラバンに同行してエルフの村にまで戻ると言っても知っての通り確実では無いわ。それでも旅を続けるつもり?」


 それは真剣な眼差しだった。
 そしてその瞳には大人しく迎えを待つべきと物語っている。


 でも……


「それでも私たちはエルフの村に戻ります」


 私がそをはっきりと言うとカリナさんはため息をついて肩をすくめる。

「流石にレミンさんの娘だ。一度決めたら曲げないってのは親譲りかしら?」

「お母さんが?」

「え~、お母さんあたしたちには優しいよ?」

 驚きカリナさんの話に思わず声を上げるとカリナさんは私たちを見て言う。


「レミンさんは私たちに精霊魔法を教えてくれたけど、そりゃぁ厳しかったのなんの! 出来るまで家に返してもらえなかったんだから! 私なんか出来るまで三日も家に帰してもらえず、ずっと精霊の呼び出しさせられたんだから!!」


 自分の両腕を自分で抱きしめガクガクブルブルと震える。

 お母さん、あなた一体みんなに何したの……

 
 くぅうううぅ~


 そんな様子を見ていたらルラのお腹が鳴った。
 そう言えばそろそろ夕食の準備をしなきゃいけない。

 私は焚火に近くに戻って腰についているポーチから道具と食材を引っ張り出す。


「あら? それってエルフの魔法のポーチ? リルって若木なのによくそんなものっているわね?」

「ああ、これシャルさんのなんです。こっちに飛ばされる前に預かっていたんですが今はお借りして使わせてもらってます。おかげで助かってますけど」

「ふーん、シャルのなんだ。あの子、もう千歳くらいかな? 元気でやってるのかしら?」

 言いながらそのポーチを見て驚く。


「これ、メル様が作ったモノ!?」


「え? ああ、トランさんもそんな事言ってましたっけ…… 長老が作ったのってそんなに珍しいんですか?」

 トランさんのそんな事を思い出して、ちくっと胸の痛みを感じるも私はカリナさんに聞いてみる。
 するとカリナさんはやや興奮気味で話始める。


「メル様の御作りになった魔法の袋やポーチは古代魔法王国にも匹敵するほどのアイテムよ? 噂ではドラゴンを入れても余裕が有るほど凄いらしいわよ? 私の持っているこのポーチじゃせいぜい牛一頭入れるのが精いっぱいよ?」


 いや、カリナさんの腰のポーチだって私が付けているポーチと同じくらいの大きさでリンゴ二個入るかどうかにしか見えない。
 それに牛一頭入ればそれは凄い事なんだけど……


「そう言えばトランさんもそんな事言って地竜をポーチに入れてたなぁ~」


 ルラのその言葉にカリナさん含め皆さんぎょっとしてこちらを見る。
 私は苦笑いをしながら頷きその事を話す。


「こっちに飛ばされた時に近くに地竜がいて、えーと、その、そうだ、シェルさんの影響で地竜が死んだのでトランさんの勧めでレッドゲイルの街まで持ち運んで売り払いました」

 流石に私とルラの秘密の力は話せないのでシェルさんを使ってごまかす。
 するとカリナさんたちはそこへ突っ込みをまったく入れず変に納得してしまった。


「ち、地竜をね…… 流石にメル様の魔法のポーチね……」

「地竜って言えば『鋼鉄の鎧騎士』三体いないと倒せないってアレか? 流石は『女神の伴侶』だな」

「とてもじゃないが、英雄でもない限りそんな化け物となんか対峙できんぞ?」

「しかし地竜ですか、一度は見てみたいですね。それに売り払ったとなるとその素材は魔術の材料として一級品、うらやましいですね」


 うーん、シェルさんごめんなさい。
 でもやっぱりシェルさんを持ち出すと誰も疑問に思わないって……


 くぅうううぅ~


「お姉ちゃん……」

「あ、ごめんごめん! すぐにご飯作るから待っててね、皆さんもご一緒にどうですか?」



 慌てて食事の準備を始める私にカリナさんたちは顔を見合わせるのだった。
 
 
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