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第八章:ドドスでのエルフ料理?

8-2クレープ作りましょ

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 女子の好む食べ物。
 それは間違いなく甘いモノ。
 となればここはスイーツでしょ!

 ここ「鉄板亭」は今、女の子たちによるスイーツの開発でやる気に満ちていた!


「お姉ちゃん、あたしクレープが食べたい!」

「クレープ!? なんだか知らないけどそそる響きがあるわね!?」

 ルラの提案で「フルーツヨーグルト」の後はクレープを作る事となった。
 勿論私だってクレープは好きよ。

 あのもちもちしっとりとした生地。
 生クリープたっぷりに果実のソース。
 勿論生の果物を加えても良いし、そこへアイスクリームを入れるのもありね。
 更に個人的にはそこへあんこと白玉も……


 じゅるり。


 なんかよだれが垂れて来そう。
 
 
「で、そのクレープって何?」

 一人その存在を知らないメリーサさんはクレープを妄想している私とルラに手をかけ揺さぶる。
 まあ気になるのは分かる。
 もし食べたらもう後戻りできなくなるだろうけど。


「えっと、薄皮のパンケーキに生クリームや果物やジャム、後はお好みで色々入れて包んで食べるものです」

「パンケーキ? あのフライパンで焼くやつ??」

 どうやらパンケーキはここドドスにもあるようだ。
 私は首を縦に振り頷く。

「実際にはもっと薄いですし色が変わる前に焼き上げるんですけどね。そうですね、パイ生地位薄いかな?」

「そんなに薄いの? でもどうやって作るの??」

 パイとかの生地は練ったものを麺棒で引き延ばせるけどクレープはそうはいかない。
 しかも焼き過ぎるとあの独特なもちもちしっとり感が無くなってしまう。

 生前例のイタリアンレストランで食べさせてもらった蕎麦粉のガレットもクレープみたいなものと聞いたけど全くと言って良いほど違うモノだった。
 あれはあれで美味しいのだけど、スイーツからは程遠い。


 なので目指すは日本の原宿当たりでも売っていそうなあのクレープ!
 そう、女子高生御用達のあのクレープよ!!


「確かに道具とかも準備しなきゃだし、食材もまだまだ不足ですね。しかーし、クレープの為ならその労力もいといません!!」

 ぐっとこぶしを握ってそう言う私にルラはパチパチと拍手をする。
 
「リルちゃんがもの凄いやる気に!? これは期待できそうね!!」

 その場の雰囲気にメリーサさんも飲まれまずは私の言う食材集めから始めるのだった。


 * * * * *


「小麦にお砂糖、溶き卵と牛乳に油少々、後は香り付けのバニラエッセンスっと……」

「お姉ちゃん、もしかしてそれ生地?」


 早速ボールに生地を作る為に材料を入れて掻き回し始める私。
 生地自体はそれほど難しくはない。
 問題は焼き方だ。  

 強火過ぎてもだめ、弱火過ぎてもだめ。
 程よい温度を保てて焦げ目がつく前に裏面も焼けるようにしなければならない。

 しかし今ある道具はフライパン。


「それでもやってみないと分からないもんね」


 私はそう言いながらフライパンを火にかけ、布に染み込ませた油でフライパンにうっすらと油を塗る。
 そして出来上がっている生地をお玉ですくい流し込む。


 じゅうぅぅ~ぅぅ


 途端にふわっとあのクレープ生地を焼く匂いが立ち込める。
 しかしここでその香りを楽しむ余裕はない。
 私はすぐにお玉の背でフライパンの中の生地を円を書くように広げていく。


「うわっ! なにこれ良い匂い!?」

 横でその様子を見ていたメリーサさんが香りに驚く。

「クレープの香りだ~」

 それを知っているルラはその香りをかいで喜んでいる。
 私だってこの香りは大好きだ。

 ますますテンションが上がって来て私はすぐに準備しておいた串で端っこを突き生地を裏返す。
 そしてまたすぐにそれを引っ張り上げお皿に載せる。


「も、もしかしてこれで出来あがりなの?」

「いえいえ、本来はここへクリームやらジャムやら果物を乗せてこの皮で包んで食べるんですよ。でも今はまずこの生地の味見からですね」

 言いながら私はそれを三等分に切って二人に分け与え自分も食べてみる。


 はむっ!

 もにゅもにゅ
 ごくん!


「ん~、味は良いけどやっぱりまだまだ生地が厚すぎるわね?」

「ん~、あたしはこれでもいいけどなぁ」

「これってどう言う事? これパンケーキみたいなのにそれよりずっと美味しい!?」


 味はこれで良いだろうけどやはり薄くは焼けていない。
 場所によっては厚みがあって焼き加減にどうしてもムラが出てしまう。

 後どうしてもフライパンだと熱の強い場所と弱い場所で差が出てしまい場所によっては少し焦げ始めている。


「やはり理想のクレープにはあれらの道具は必要ね!?」

「お姉ちゃん、あれらの道具って竹とんぼ!?」

「え? え?? これってまだまだなの? 私これでも十分美味しいと思うのに??」


 一枚だけ口に入れるならこれでも良いかもしれない。
 しかし私の追い求めるクレープはたっぷりのクリームなどを包み込んだあのクレープだ。
 もちもちしっとりの食感を何枚か一度に包み口に入れるのだ。
 食感にムラがあってもだめ、焦げすぎてもだめ、勿論焼けていないのはもっとダメ!


「うーんそうするとやはり専用のクレープ焼きの機材が必要かぁ。それとルラの言う通り竹とんぼも」


 安定した熱で生地を焼き上げられる焼き台。
 そして素早く生地を広げられるあの竹とんぼ。

 それをどうやって手に入れるか……


「なんか難しいの? その専用の焼く機材とか竹トンボとか言うのが必要なの?」

 悩んでいる私にメリーサさんがそう言いながら覗き込んでくる。

「とは言え、そんな都合のいい道具って売ってないですよね~」

 ちょっとあきらめ気味な私にメリーサさんは首を横に振って言う。


「大丈夫だよ、なければ作れば良いんだから! だってここはドドスの街なんだからね!!」



 メリーサさんはそう言ってにっこりと笑うのだった。
 
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