腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

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第十一章:南の大陸

11-25:ファイナス長老

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 昨日はトランさんやジッタさんのご家族に遺髪を届けに行った。
 自分たちが村に帰れたことがうれしかったけど、トランさんやジッタさんの遺髪をご家族に届けるのは私たちの役目だと思っている。

 だから八つ当たりされたり酷い事を言われる覚悟はしていた。
 しかしご家族からはそんな事は無く、私たちが無事エルフの村に帰って来た事を喜ばれた。


「お姉ちゃん、あたしたちってやっぱりみんなに迷惑かけちゃったよね?」

「うん、そうだね。不可抗力とは言えこの二年近くみんなに心配させて、トランさんたちも死んじゃって、いろんな人に出会って分かれて……」


 久しぶりに自分たちの部屋で寝た。
 私たちがイージム大陸に飛ばされる前と寸分違わないこの部屋。
 今朝目が覚めた時、今までの事は夢であったのではないかと疑ってしまう程変わりがないここ。
 
 でも大切にハンカチの上に置いておいたあの髪飾りを目にした時にそれが夢ではない事を実感した。

 私はのそのそと起き上がり着替えを始める。
 ルラはもう着替え終わっていて靴を履いていた。
 
 と、リビングの方が騒がしくなってる。

 どうしたのかと思い、髪留めをしてからそちらに行ってみると……


「リル、ルラっ! ああ、よかったっ!! 本当に無事に帰って来られたのね!!」


「うわっぷっ!」

「わふっ!」


 ルラと一緒にリビングに顔を出したらシャルさんが来ていて私たち二人に抱きついて来た。
 ぎゅっと抱きしめられるのはもう何度目だろう?
 エルフの村に戻ってから親しい人たちには何度も抱きしめられていた。

「リル、ルラ、顔をよく見せて。ああぁ本当に良かった。姉さんのせいで二人には苦労させちゃったね? 話は聞いていたけど、昨日帰って来ていたのは今朝知ったの。ごめんね、会いに来るのが遅れて」

「シャルさん、そんな事は無いですよ」

「えへへへ、シャルさん久しぶり~」

 隣の家のお姉さん的な存在のシャルさん。
 私たちがイージム大陸に飛ばされる元凶となったシェルさんの妹さん。
  
 シャルさんはひとしきり私とルラを抱きしめてから離れて頭のてっぺんからつま先までじっくりと見る。

「ふう、でも本当に良かった。二人が無事に村に戻って来てくれて」

「ははははは、まあ何とか……」

「でもね、ここまであたしたちいろいろな事があったんだよ~」

 本当に久しぶりにシャルさんと話をする。
 以前は蜂蜜を取りに行くのによく一緒に付いて行っていた。
 いろんなお話をしたり、内緒で蜂蜜を食べさせてもらったりと。

 と、私は思い出す。
 シャルさんに借りていたあの魔法のポーチを。

「あの、シャルさんごめんなさい。イージム大陸に飛ばされて緊急事態だったのでシャルさんから預かっていた魔法のポーチを使っちゃいました。ドライフルーツとか全部食べちゃったし、今もポーチの中にはここに戻ってくるまでにいろいろ買いこんだものとかも入っていて……」

「ポーチ? ああ、あれか、良いの良いの。何ならリルにあげるわよ。思い出の品物も入っているけどそれだけ出してもらえれば私はまだ予備のポーチがあるからね。それに罪滅ぼしって訳じゃないけど、そのポーチのお陰であなたたちが生き延びられたならもうそれはあなたたちのモノよ」

 シャルさんはそう言ってにっこりと笑ってくれる。
 あんな良いモノ貰っちゃっていいのだろうか?

 と、私の頭にあの赤い下着とネグリジェが思い浮かぶ。

「あ、あの、シャルさんあの赤いやつってやっぱり……」

「えっ? あぁ…… あ”っ!! み、見たのリルっ!?」

「はい、その、何が入っているか確認する中で…… あ、でもすぐしまいましたよ!! よ、汚しても無いし///////」

「うっ、そ、そうなの…… あ、ありがとう///////」

 私とシャルさんは何に使うつもりか分かっているあの赤い下着の事で二人して顔を赤くしている。

「赤いのって、ああ、あのスケスケのパンツの事だね! でもシャルさんあんなスケスケの服とパンツ何に使うの?」

「ル、ルラぁっ!! それ以上言うなぁっ///////」

 私は耳まで真っ赤にしてルラの口を両手で塞ぐのだった。


 * * * * *


「ファイナス長老があなたたちを呼んでいる?」

「はい、そうなんですよ。実は私とルラはスキル持ちでその事についてだと思うんですけど……」


 朝ご飯を一緒に食べながらシャルさんとそんな話をしている。
 ちなみに今朝は新鮮な果物。
 これならおいしくいただける。

「スキル持ち? それって本当!? 凄いじゃないの、あなたたち!!」

 あ~、やっぱりスキル持ちって凄んだ。
 外の世界に行った事のあるシャルさんはスキルについて詳しいのだろうか?

「でもそうすると早い所フィナス長老の所に行った方がいいわね。この話をメル長老が聞きつけたら面白がってあなたたち大変よ?」

「それ、渡りのカリナさんにも言われました……」

 うちの長老、私たちに何するつもりなんだろう? 
 メル様ってあの世界樹の下に何時も他の長老たちと座っていて、うたた寝みたいにしているし、お話聞いてもなんか私たちより年下に見えるから言葉と外観が合ってないし……

「とにかくファイナス長老がそう言うなら早い所行った方がいいわね。それとスキル持ちって事は他の人には言わない方がいいわ。メル様の耳に入ったら真っ先に呼ばれるわよ」

「分かりました、多分もうすぐソルガさんが来てくれるので行ってきますね」

 私がそう言うとシャルさんは急いで一旦家に戻り、別の魔法のポーチを持って来て私が持っていたポーチからいそいそとあの下着含む私物を移動するのだった。


 * * * * *


「それでは行くか」


 シャルさんが私物の移動が終わってしばらくするとソルガさんが来た。
 昨日のうちに打ち合わせが終わっていて今日はお母さんとお父さんも一緒に精霊都市ユグリアに行く事になっている。

 ファイナス長老は精霊都市ユグリアの市長も兼任している。
 そして外界とエルフの村の間でつながりを管理する役目も担っている。

 エルフの村の人々はどちらかと言うと閉鎖的である。
 何百年も何千年も変わらない生活を好む。
 それが嫌で外の世界に行く者もいるけど、根っこは繋がる為にエルフには昔から独自のネットワークが存在している。
 それが風の精霊を使ったエルフのネットワーク。
 外の世界に行くエルフは皆このネットワークが使えるようにファイナス長老から指導を受ける。
 逆にそれが出来ないと外の世界に行く事を許されない。

 そんな説明を聞きながら私たちは村の門を通り抜ける。
 初めてちゃんとした正門を通ったけど裏門の時と同じ注意をされた。

 通る間は振り向いたり声をあげたりしてはいけない。
 はぐれると何百年も金色の森をさ迷う事にもなるとか言われている。

 なので言いつけ通りルラの手を握りながら門を通り抜ける。

 すると大木の立ち並ぶ森に出た。


「ここって、迷いの森なんですか?」

「ああ、だがここには結界が無い。もう少し行くと転移のゲートもある。精霊都市ユグリアはここを抜けた所にある」

 ソルガさんはそう言って先頭になって歩き出す。
 それに私たちも付いて行くとまるで壁のように立ち並ぶ大木を抜けて目の前に街が見え始めた。
 中央に緑に包まれた大きな塔がある。


「奇麗……」

「凄いね、大きな塔がある!」


 私は白を基調とした壁が多い街並みが緑にうまく包まれて調和した街並みを見てそう言ってしまう」

「奇麗か…… そう言えば昔エルハイミさんもそんな事を言っていたな。エルフからしてみれば人工物が多い街と感じるのだがな」

 ソルガさんはそう言って歩き出す。

「さあ行きましょう、リル、ルラ」


 お母さんにもそう言われ私たちはファイナス長老がいると言われている中央の緑に包まれた塔に向かうのだった。
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