246 / 437
第十一章:南の大陸
11-29外の食べ物
しおりを挟むシャルさんとおしゃべりしながら私はポーチから引っ張り出した食材を台所に並べる。
「なにこれ? 凄いたくさんの材料じゃない!」
「ええ、ここに帰ってくるまでにいろいろな所でいろいろな食材が手に入りましたので。この魔法のポーチのお陰でいろいろなものが新鮮なまま持って帰れたのは助かりますよ~」
言いながら私は間違えてコカトリスの尻尾を引っ張ってしまった。
どんっ!
「なっ!? ちょっとリル、これってコカトリスなんじゃないの!?」
「あ、間違えました。これはしまってっと……」
あんな大きな鶏肉が有ったらお台所がいっぱいになっちゃうじゃないの。
私は慌ててそれをしまっていく。
しかしシャルさんは目を丸くして私に肩に手をかけて揺さぶる。
「ちょっと待ちなさいリル! あなたたちここへ帰ってくるまでに何やらかしたのよ!?」
「いや何って言われても……」
そしてここに戻ってくるまでの話が始まるのであった。
* * * * *
「はぁ~、確かにそれはファイナス長老じゃなくても気になるわね。と言うか既に姉さんのレベルよそれ」
「う”っ! わ、私はシェルさんじゃないですよ!」
「あ、でもお姉ちゃんよくシェルさんと間違われてたよねぇ~」
こらルラ!
それはあんたも一緒だ!!
なんで私が「女神の伴侶」と言われるシェルさんと一緒にされるの?
私はノーマルよ、ノーマル!
「とは言え、あのジュメルにまで目を付けられるとか、あんたたちも災難ねぇ~」
「そう言えばシェルさんってどうなったんですか? 途中でもう一人のエルハイミさんにも会いましたけどなんだかんだ言って転移してジルとかの村に行ちゃったままでしたし」
私がそれを聞くとシャルさんは眉間にしわを寄せて嫌そうに話始める。
「姉さんたちのお陰であの人もてんてこ舞いよ。まあお陰で愚痴じゃないけど姉さんの取り扱いについてあの人から私に連絡が良く来るよういなったのは良いのだけどね♪」
それでもアインさんとか言う彼氏さんと話が増えたのがうれしそうなシャルさん。
そんなに好きならコクさんと同じくジルの村とかに行けばいいのに。
「それでどうなったんですか?」
「うん、あなたたちが転生者って言うから言うけど、あのジルの村はエルハイミさんに関わる力の大きな人たちが転生する村なの。何度も転生している人は自然とその力が漏れ出して普通の暮らしでも影響が出てくるほどの人がいるわ。だからあ人がそう言った人たちを教育して温和な生活が出来るように仕向けているんだけどねぇ……」
シャルさんはそんな話を続ける。
私はシャルさんの話を聞きながらジャガイモや人参、玉ねぎなんかの皮をむいて切り刻んで行く。
「それでその転生者の中にエルハイミさんの愛して止まない『ティアナ姫』ってのがいるの。もう何度も転生していてその都度エルハイミさんと最後まで一緒にその人生を過ごしていたんだけどね……」
「ちょと待って下さい、いま『姫』って言いませんでしたか?」
シャルさんのその話の中で引っ掛かる部分が有るので思わず話を止めて聞いてしまった。
「『姫』? ああ、最初はガレント王国の姫様だったらしいわね。私の生まれる前の話だけど」
シャルさんが生まれる前の話って、それって千年以上前の話?
シェルさんを伴侶としているからエルハイミさんはそっちの気があるってのはうすうす気づいていたけど、やっぱりあの人苦手だなぁ……
お、女どうしで子作り出来るらしいし、女神様だし……
「それでその『ティアナ姫』が二年前に覚醒したんだけど、それを聞いてあの時エルハイミさんも姉さんもジルの村に向かったわけよ。で、その後が問題でそのティアナ姫の転生者が既にジルの村の誰かと恋仲に落ちていてエルハイミさんを受け入れられないと言う事でもめているのよ……」
「はぁ? まさかこの二年間ずっとですか!?」
いや、恋愛の問題は時間の問題だけじゃないのは理解できるけど、まさかあの後ずっとごたごたしているっていうの?
あれだけいろんな人巻き込んでまだ決着がついていないと言うの?
「あ、あの、もしかしてまだその問題って決着がついていないんですか?」
「そうなのよ、姉さんもたまに愚痴言ってくるし、最近は別のエルハイミさんも集まって来て、それに輪をかけて黒龍様まで来ちゃったって言ってたから多分今あの村は世界でもトップクラスのやばい場所になっているわね……」
私はそれを聞いて思い出す。
女神であるエルハイミさんは確か三人いて、それが全部村に来ている。
女神の伴侶と呼ばれるトラブルメーカーのシェルさんもいる。
そしてそこへ女神殺しの古の竜、コクさんとそれに従うドラゴンニュートのクロエさんとクロさんも一緒に行っている。
もうそれだけでとんでもない事は言うまでもない。
シャルさんの恋人が頭を抱えているのが目に映るようだ。
「恐ろしいですね、それって……」
「だよね、だからアインにもこっちに逃げてこないかって言ったのだけど、『女神様には世話になったから出来るだけの事は手伝いたい』とか言ってるのよ! もう、人の心配も知らないで!! あ、でもそう言った実直な所が良いのよね~。七百年間他の女の人とは一緒になっていないってのもちゃんと私に操を立てているって証拠だしね♪」
嬉しそうにそう言うシャルさん。
いや、だからそれだけ好きならシャルさんから会いに行けばいいと思うんだけど……
私は大きくため息をついてスパイス各種をルラに言ってすり鉢で細かくしてもらう。
フライパンにオリーブ油を軽く引いてからニンニクと生姜の切ったものを入れて香り付けして、お肉を入れる。
こんがりと表面が焼き上がったら一旦取り出して、切っておいた野菜を入れて軽く炒める。
「あら、何かとてもいい香りね?」
「はい、カレーライスを作ろうと思いまして」
「カレーライス??」
言いながら今度は鍋に炒めた野菜を移し、お肉も入れてお湯を入れてからゆっくりと煮込み始める。
煮え立ったら牛乳を少し入れて、また軽く沸騰するのを待つ。
沸騰して来たらルラに準備しておいてもらったスパイス各種をゆっくりと入れながら掻き回す。
本来は残った油でスパイスを炒めるともっと香りが出るのだけど、ルラが甘口が良いとか言うから優しい味になるように炒めるのはよして煮込み時間を長くする方法に変える。
「でも、二年も説得していて駄目ならやっぱりその気がないんじゃないんですか?」
「うーんでもそこが難しい所なのよね。覚醒したので以前の記憶も戻っているからティアナ姫自体もエルハイミさんが好きと。でも今の伴侶も好きで分かれる気はないと言うらしいの。だから余計にややこしくなっているらしいわ」
お鍋が焦げ付かない様に弱火でくつくつと煮込んでいく。
もう部屋にはカレーのいい香りが充満している。
水上都市スィーフで手に入れた白米もそろそろ炊き上がる頃だろう。
「お姉ちゃん、まだできないの?」
「もうちょっと~。ルラ、サラダ準備して。それと漬物もね!」
ルラにも手伝ってもらってサラダや漬物の準備もしておく。
ちなみに漬物は浅漬け。
大根とかキャベツとかを細かく切っておいて、それに鷹の爪、塩とワインビネガー、お砂糖を少々入れてから柑橘系の皮を少し細切りにして入れたもの。
本当はらっきょとか福神漬けが欲しいけどそこまでこったものは手に入らないし、作るのも大変すぎる。
「ずいぶんとスパイシーないい香りね?」
「もう少しで出来ますよ、シャルさん。あ、ルラ、お母さんとお父さんも呼んで来て!」
私がそう言うとルラはトタトタとお母さんとお父さんを呼びに行った。
ご飯も炊けたし、それをお皿に盛ってカレーをかけて行く。
人数分をテーブルに並べて出来上がり!
「さあ出来ました、ご家庭の定番の味、カレーライスです!!」
ちょうどルラがお母さんとお父さんも呼んで来てみんなで食卓に着くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
シンメトリーの翼 〜天帝異聞奇譚〜
長月京子
恋愛
学院には立ち入りを禁じられた場所があり、鬼が棲んでいるという噂がある。
朱里(あかり)はクラスメートと共に、禁じられた場所へ向かった。
禁じられた場所へ向かう途中、朱里は端正な容姿の男と出会う。
――君が望むのなら、私は全身全霊をかけて護る。
不思議な言葉を残して立ち去った男。
その日を境に、朱里の周りで、説明のつかない不思議な出来事が起こり始める。
※本文中のルビは読み方ではなく、意味合いの場合があります。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる