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第十二章:留学

12-2緑樹の塔

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「来ましたね、まあお座りなさい」


 私たちは緑樹の塔に来てファイナス長老に会っていた。
 通されたファイナス長老の部屋には既に学園長であるユカ・コバヤシさんが来ていた。
 そしてその隣にやたらと胸のでかいエルフの人がいる?


「マーヤ? マーヤじゃない!! 久しぶり、こっちに来てたの!?」

「お久しぶり、レミン。デューラとはうまく行っているみたいね?」

 お母さんは胸の大きなエルフの人のそばに駆け寄って行って手を握って喜んでいる。
 どうやら知り合いのようだ。


「来ましたね? 紹介します、あなたたち二人の身元引受人をするマーヤです」

 学園長は立ち上がって私とルラにそう言う。
 身元引受人って、この胸の大きなエルフの人が?
 するとマーヤと呼ばれたそのエルフの女性はこちらを見る。

「へぇ~、レミンによく似ているわね。しかも双子だなんて。初めまして、私はマーヤ。あなたたちのお母さん、レミンとは古い友人よ」

 そう言ってにっこりと笑ってくれる。
 古い友人と言われても、みんな二十歳ちょっとくらいにしか見えないからどのくらい古い友人か見当もつかない。


「えっと、初めまして、リルと言います」

「ルラだよ~、初めまして!」


 私もルラもマーヤさんと言う方に挨拶する。
 するとマーヤさんはにっこりと笑って頷く。

「流石に転生者ね、若木なのにちゃんが挨拶できるのね。本当に十七歳なの?」

「ええ、そうよマーヤ、私の自慢の娘たちよ?」

 そう言ってお母さんは私とルラの後ろに立って肩に手を載せ押し出すようにマーヤさんの前に出す。
 マーヤさんはにこにこしている。
 そして学園長に振り向いていう。

「やっぱり子供って良いわよねぇ~、ユカ、私たちもエルハイミさんに頼んで子供作りましょうよ、子供作り!」

「なっ/////// ま、マーヤここではあまりそう言う事を大きな声で言うモノではありません。確かに私もあなたの子供なら欲しいですが///////」

 私は思わず学園長を見る。
 そしてマーヤさんも。


「え、ええええええええぇぇぇぇえっっ!?」


 いやちょっと待て、少し整理しよう。
 英雄でもユカ・コバヤシさんは女。
 目の前にいるエルフには珍しい胸の大きな人はどう考えても女。
 
 たしか、子供を作るにはめしべとおしべがで、めしべ同士では子供が作れないはず。
 学校の理科で習ったお花の仕組みはそのはずだった。
 
 ここが異世界だからか?
 確かにシェルさんはエルハイミさんの子供が欲しいとかなんとか言っていた。
 そしてエルハイミさんは転生者であるティアナさんとかってお姫様とその昔、子供作ったとか言っていた。

 でもそれって女神様だからできる事だよね?
 いや、ちょっと待て、マーヤさんはエルハイミさんに頼んでとか言っていたよね?

 えーと、えーと……


「マーヤ、あまり子供たちの前で混乱する事は言わないであげてよ」

「あ、ごめんごめん、子供の面倒が見れると思ったらうれしくてついね。リルにルラ、今後は私があなたたちの保護者よ。お母さんって呼んでもいいわよ?」


 いやあの、まだ混乱しているんですけど私!!


「うーん、お母さんじゃないのにお母さん? じゃあマーヤ母さんで良いの?」

「うん、それでいいわ! ね、ユカいいわよね!!」

「そ、それは自由にしてください」

 学園長はそう言ってちょっと物欲しそうな感じになる。
 まさか学園長もお母さん呼ばわりされたいのか!?


「さてさて、どうやら問題はなさそうですね。ではユカ、この二人を頼みます。それと連中の動きも気になりますからね……」

「分かっています、ファイナス市長。しっかりとこの二人は鍛えておきます。エルハイミがあの様子では仕方ありませんからね」

 そう言って学園長はため息をつく。
 何だろう?
 学園長ってエルハイミさんとも関係があるの?


 まさか、エルハイミさんともそういう関係!?
 マーヤさんって言う人がいながらまさかの三角関係!?


「わ、私の知らない世界っ!!!!」

「お姉ちゃん、どうしたの? なんか変だよ??」

 思わず顔を赤くしてアワアワ言っている私にルラは首をかしげて聞いてくるも、私の頭の中には女どうしなのにあーんな事やこーんな事している三人の姿が!!


「さて、何やら若木が混乱しているようですがちょうど食事時。今日はここでユカたちの世界の食事を楽しみましょうか」

 混乱する私の頭に手を置いてファイナス長老はそう言うのだった。


 * * * * *


「ほう、お嬢ちゃんたちが転生者だってのかい!」


 驚いた。
 食事をしてゆけと言われて他の部屋に行ったらご馳走が並べられていた。
 しかもみんな和食。
 誰がどう見ても見事な和食が並んでいた。

 そしてなんかちょっと気難しそうだけど、頭にねじり鉢巻きをしたどこからどう見ても板前さんが二かッと笑っていた。


「こ、これは日本料理…… しかもこれって懐石料理ですか!?」

「ほう、よくわかるな。ユカさん、やっぱりこの子らは」

「そうですね、どうやら日本人だった子らしいですね? あちらの世界からこちらへ転生した者は久しぶりです。リルとルラ、あなたたちは元日本人ですね?」

 学年長はそう言って椅子に腰かける。
 ファイナス長老もマーヤさんも同じく腰掛ける。
 そしてまたまた胸の大きなエルフのお姉さんが出て来て、促されて私やルラ、お母さんいお父さんも席に座る。


「え、えっと、そうです…… あの、学園長って召喚された人なんですか?」

「そうですね、私は第二次世界大戦前にこちらに呼ばれた者です」

「第二次世界大戦って…… え? えええぇっ!?」

 いや、どう見ても二十歳前じゃない!?
 下手したら私たちと同じく十七、八歳にだって見える。
 驚きお母さんやファイナス長老を見ると苦笑しながらマーヤさんをみんなが見る。

「マーヤが英雄ユカ・コバヤシに『時の指輪』を渡したのよ。だから『命の木』を共有して英雄ユカ・コバヤシもほとんど年を取らないのよ」

 お母さんは苦笑しながらそう言う。
 私は思わず学園長を凝視してしまう。
 そして更に追い打ちがあった。

「そこにいるイチロウ・ホンダも同じく召喚者です。同じくアレッタから『時の指輪』を渡されたので私と同じくこちらの世界でもう千年以上過ごしていますね」

「まあそうだよな。もう千年かぁ、あっちの世界じゃ考えられねぇよな!」

 そう言ってイチロウ・ホンダさんはカラカラ笑う。
 でも、千年前って……


「あ、あれ? でも第二次世界大戦って確か百年くらい前のはず? それなのに学年長は千年もこっちの世界にいる??」

「こちらの世界とあちらの世界は時間にずれがあるようです。私も過去に一度あちらの世界に戻った事がありましたが、その時は同じくらいに時が流れていました。しかし再びこちらの世界に戻って来た時は時間にずれがありました。あなたたちの話からするとあなたたちはこちらの時間軸では千年ほど前から来た事になりますね?」


 学園長がそう言う。
 確かに私のいた世界では前の戦争が百年くらい前に有ったって授業でやったけど、その頃からこの世界は千年も先の時代だって言うの?

 またまた驚く事ばかり。


「ユカ、その辺は追々話してください。せっかくのイチロウのお料理が冷めてしまいますよ?」

「そうですね、久しぶりのイチロウの料理、楽しませていただきましょう」

「おう、ユカさんの好きなもんたくさん作ったからな、エルフの嬢ちゃんたちも楽しんでくれ!」


 驚きの連続だったけど、目の前の懐石料理を進められるので今はそちらが先だった。
 私たちは早速目の前の久しぶりのちゃんとした日本料理に手を伸ばすのだった。  
 
 
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