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第十二章:留学

12-29ミニ祝賀会

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「おめでとう、リル、ルラ!」

「ふふふ、流石は我が家の娘たちです」


 えぇとぉ……

 大魔導士杯の第一戦目を終えて明日に控えて早めに休もうと言う事でヤリスたちと解散して家に戻って来た。
 そして早めの晩御飯だという事で居間に行くと、すでにちゃぶ台の上にはご馳走が並べられていた。


「うわぁ、凄い! マーヤ母さんのお弁当も凄かったけど、晩御飯も凄い!!」

「何故に赤飯が……」


 ちゃぶ台の上は鯛のお頭付きと、赤飯、そのほか豪華な料理が並べられていた。
 もしかしてこれは第一回戦を勝ち抜いたお祝い?

 確かに大魔導士杯の一回戦は勝ち残った。
 私としては釈然といない勝利だったけど、勝ちは勝ち。
 ヤリスたちと流されるように勝った事を一応は喜んだのだが、まさか家に戻ってもこんな祝福を受けるとは。


「ふふふふふ、毎朝の鍛錬の効果があったようですね。良い勝ちっぷりでした」

「いや、『知識』のお題で朝稽古の効果って……」


 あの手足に重りを付けて学園長の攻撃を避ける練習の何処に「知識」に対しての有効的な効果があると言うのだろう?


「まあまあ、とにかく第一回戦突破おめでとう! お母さん嬉しいわよ~」

「えへへへへ、ありがとうマーヤ母さん、ユカ父さん」

 それでも両の手をポンと口元で合わせて喜ぶマーヤさんにルラも感謝の言葉を言う。

「うっ、ル、ルラ、ユカ母さんでも良いのですよ?」

「はいはい、ユカ父さんはいいから食べましょ、せっかくのお祝いのお料理が冷めちゃうわよ」

 そう言ってマーヤさんはご飯を盛り付けてみんなに手渡し始めるのだった。


 * 
 

「そう言えば、明日の第二試合って何だっけ?」

「え~と、確か『体力』勝負だったっけな?」


 お祝いの料理を食べながらふと思い出し聞いてみるとルラはポケットからがさがさと予定表を取り出し見ながら答えてくれる。
 大魔導士杯で体力勝負って……


「ふむ、例年第二回戦は体力勝負でしたね。魔導士は体力が低い者が多いですが、体力と魔力の相互関係も実はあるものです。魔力は魂から出て来る魔素が魔力となり、万物に存在するマナに変換され作用する現象ですが、健全な肉体には健全な魂が宿るものです。リルもルラも朝稽古で十分に鍛えていますから第二回戦も難なく勝てそうですね? ふふふふふ、流石我が家の娘たち!」


 学園長はぐっとお箸を握りしめながら一人悦に入っている?

「ユカったら、あまり子供たちに圧力をかけるものじゃないわよ? リル、ルラ、ユカ父さんはああ言ってるけど安全第一よ。ケガをしないように明日も十分に注意して頑張るのよ」

 マーヤさんはそう言っておかわりいるかどうか聞いてくる。
 流石におかずもたくさんあるので私はご飯のおかわりはひかえるけど、ルラはしっかりと二杯目のご飯をもらう。


「体力勝負かぁ、何するんだろうね?」

「例年だと体力勝負と言ってもちゃんと魔力も使う事になるから、単に体を動かすだけではなのよ?」

 煮物をつつきながら私がそうぼやくとマーヤさんはそう言って佃煮も進めてくれる。
 私はそれを小皿に取り分けながら聞く。


「体力なのに魔力も使うんですか?」

「そうねぇ、以前だと【念動魔法】を使いながら頭上に大きな岩を持ち上げ、そのままゴールまで走るとかもあったわね」

「障害物を魔法だけで破壊しながらゴールする事もありましたね」

 マーヤさんも学園長もそう言いながら以前の事を思い出している様だ。
 肉体的、体力的は勿論のこと魔法に関してもしっかりと活用する所がこの大魔導士杯らしい。
 しかし、よくも毎回そんな色々な事を思いつくものだ。


「大魔導士杯って毎年お題が違うって聞きましたけど、学園も良くもいろいろ思いつくものですね~」

 アサリの佃煮を口に運びながら私はそう言う。
 あ、生姜が効いていて美味しい。


「大魔導士杯は生徒会が主催ですので学園側は企画提案はしていませんよ」

「そうねぇ、毎年生徒会が中心になっていろいろ企画するのよね~」

「はい?」


 私は学園長とマーヤさんのその言葉に驚く。
 そして二人の方を見ると、マーヤさんが話始める。


「『大魔導士杯』って元々はこの『魔術総合実演会』での学生からの研究発表として始まったらしいのよ。ユカが学園長をやる前からの慣わしらしく、毎年その実行については生徒会管轄なのよね。実際にはそれによって収益が発生して生徒会の活動資金の調達の場でもあるのだけどね、いつの間にか各国のチームが参加することが多くなって各国の威厳を示す場や、有能な学生のアピールする場になっちゃったのよ。あまりよくはないけど、裏ではどのチームが勝つかとかの賭けもやっているらしいの」


 そう言ってマーヤさんはお茶を入れ始める。
 
「つまり、学園側も毎年何がお題になるか知らないってことですか?」

「そうですね、一応安全面については学園側にも責任が発生するのであまりにも危険と判断した場合は中止命令を出す事もありますが、概ね生徒会の管理下でうまく運営されているのが実情ですね」

 マーヤさんから渡されたお茶をすすりながら学園長はそう付け加える。

 うーんそうなると本当に明日は何がお題に出るかはその場にならないと分からないんだ。
 私はマーヤさんに渡されたお茶をすすりながらそう思う。


「でも体力勝負ならあたしの出番だね!」

「まあどんなお題かによるけどね。明日は何させられるのだろうかなぁ……」



 その時の私はまだそんなお気楽な事が言える状態だったのだ。 
 
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