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第十二章:留学

12-45大魔導士杯決勝戦その1

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「流石は我が家の娘たちです」


 アニシス様がゴーレムいじりだして私たちはする事が無いから家に戻った。
 そして家に戻ると居間に祝賀会が準備されていた。

「あ、あの~前にも祝ってもらったような気がするんですけど……」

「何を遠慮しているの、ユカなんかあなたたちが戻って来るのを首を長くして待ってたのよ、おめでとうリル、ルラ」

 マーヤさんもニコニコ顔でそう言っている。
 そして並べられている豪華な食事たち。

 今回伊勢海老があるよ、後鯛のお頭付きの塩焼きも。
 
「初参加で決勝戦にまで残るとは見事です。毎日鍛えた甲斐が有りました」

「いや、鍛えるって手足に重り付けて学園長の攻撃よけるやつなんですけど……」

 第三戦目も正直学園長の鍛錬とは関係ないと思うんだけどなぁ。
 何となく腑に落ちない私だったけど、マーヤさんは手をポンと叩いて言う。

「まぁまぁ、とにかく初めてで決勝戦に行けるのって稀なのよ? ガレントのお姫様とティナの国のお姫様がいたとしてもそうそう簡単にはいかないものなのだから、十分に誇っていいわよ?」

 確かにそうなのかもしれないけど、なんか色々と見えない力が働いていたような気もする。
 特にあそこで盃にお酒を注いでいる人とか。


「とにかくめでたいです。明後日の決勝戦、楽しみにしていますよ」

「もう、ユカったら。あまりこの子たちにプレッシャーかけちゃだめよ」

 なんか私たち以上に浮かれている。
 これが親バカというものなのだろう。

 生前もエルフの両親もここまで親バカでは無いような気がする。

 学園長もマーヤさんも子供を欲しがっていたのだから、保護者になってから私たちの事を娘あつかいしてくれている。
 だからもし自分たちに本当に子供がいたらと重ねているのかな?


「お姉ちゃん、ご馳走だよ、あたしお腹すいた!!」

「はいはい、それじゃぁ始めましょ。ほら、あなたたち用にとっておきの果物ジュース用意しておいたのよ」


 マーヤさんにコップに果物ジュースを注がれ手渡されて私たちはその晩大いに決勝進出を祝うのだった。


 * * * * *


「それで差し入れなの?」

「はい、ウ・コーンさんとサ・コーンさんに聞いたんですけど、結局アニシス様ってあの控室にこもったまま昨日は帰って来てないんですって」

「アニシス様、大丈夫かなぁ~」

 翌日宿舎に行ったらアニシス様がいないとの事。
 ウ・コーンさんとサ・コーンさんが男子寮から出てきたので聞いたら昨日から帰っていないとの事。
 お付きのメイドとかスィーフの新たな奉仕人もいないので多分荷物の運搬とか食事とかを控室に持ち込んでいるだろうとの事。
 
 なので、差し入れを作って持って来たけど食べ物とかはメイドさんたちが持って行ってるから要らなかったかな?

 今はヤリスと合流して控室に向かっている。
 

「アニシス様、いますか~?」

 控室はメンバー以外勝手に入れない様になっているので、事実上男性は出禁。
 なのでサ・コーンさんやウ・コーンさんも心配はしている。

貰ったパスコードで魔法の鍵を解除して中に入ると……


「うわっ、アニシス様、スィーフの皆さん!!」


 死屍累々。
 なんか散らかった部屋でアニシス様やスィーフの人たちが倒れている。

 慌てて駆け寄り、アニシス様たちの様子を見ると、すやすやと寝息を立てている。


「大丈夫みたいね、みんな寝ている様だわ。もうちょっとでお昼になるって言うのに、もしかして徹夜でもしてたのかしら?」

 ヤリスもスィーフの方々の様子を見ていてそう言う。
 私はぐっすり気持ちよさそうに寝ているアニシス様の顔を見る。
 そこにはなんかやり切って満足そうな表情がある。


「お姉ちゃん、あれ」

 ルラがそう言って指さす先を見ればあのゴーレムが組み上がって奇麗に立たされていた。
 という事は、もう改造は終わったってことなのだろうか?

「やっぱ徹夜やってたみたいね。ゴーレムが組み上がっているもんね」

「ねぇねぇ、ヤリスどうなってるのかな、変身するとか、あるてぃめっとふぉーむみたいに形状変化するのかな!?」

 なんかルラがとても興奮している。
 いや、だから規定どうりなら外殻からオーバーしちゃダメなんだってば。


「うぅうぅぅん……」

 そんな事を思っていたらアニシス様の目が覚めた様だ。
 私はほっとしてアニシス様を見る。

「うぅん、あらリルさん? もしかしておはようのキスをしてくれるのですの?」

「いやしませんってば、それより大丈夫なんですかアニシス様? もしかして徹夜したんですか??」

「う~ん、終わったので気が抜けてそのまま眠ってしまったのですわね。スィーフの皆さんにも手伝ってもらったおかげで予定より早く仕上がりましたわ」

 そう言って起き上がるアニシス様。
 そのままあのゴーレムを見る。

「伝説のマシンドール、アイミには遠く及びませんが、私のもてる技術を全て詰め込んだこのゴーレム、かなりのモノに仕上がっていますわよ!」

 そう言って周りを見てヤリスを見つける。

「ヤリス、早速同期してみてくださいですわ」

「え、ああ、やってみる」

 スィーフのお姉さん方に毛布を掛けてやっていたヤリスはアニシス様にそう言われてゴーレムの前まで行く。
 そして一瞬目を閉じて集中してから同期を始める。

 
 ぶんっ!


 あれ?
 なんかゴーレムの目が一瞬光った?

 ゴーレムはガチャガチャした音を全く立てずに動き出す。


「凄い、なにこれ前よりゴーレムとの一体感が強い? それになんか体中に力が湧いている感じは……」


「駆動には『鋼鉄の鎧騎士』の技術を使っていますわ。いえ、むしろ『鋼鉄の鎧騎士』が小さく成って入っているようなものですわね。そして核魔晶石核をふんだんに使い、双備型魔晶石核を連結する方式ですのでパワーはこの大きさでもティナの国の『鋼鉄の鎧騎士』の七割は引き出せますわ!」

 ちょっと待て、確か「鋼鉄の鎧騎士」ってイージム大陸では魔獣退治とか防衛で動いていたあのおっきな奴よね?
 数体であれば地竜とも渡り合える戦闘力を持っているはず。
 それがこんなちっちゃくてあのデカいやつの七割の力が出せるって?


「すごい! ねえヤリスあたしと手合わせしてみない!?」

「なんかこれならルラともいい線行けそうね、良いわよ、やろう!」

「まてまてまて! こんな所でゴーレムとルラが戦ったら周りの被害が尋常じゃなくなっちゃうって!!」


 いきなり手合わせしたとか言い出す二人に慌てて待ったをかける私。
 アニシス様を見るといつの間にかやって来ていたメイドさんに髪の毛を梳かれながらお茶なんか飲んでいる。

「申請して試験場を使わせてもらえば被害は少なくて済むと思いますわよ?」

「被害出るの前提ですか!?」

 何それ危ないじゃん!

「明日の決戦前に慣らし運転は必要ですわ。問題のある所は調整しなければですものね」



 アニシス様はそう言って目を覚ましたスィーフのお姉さん方に言って試験場の使用許可を取りに行かせるのだった。
 
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