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第十二章:留学
12-46大魔導士杯決勝戦その2
しおりを挟む私たちは明日の決勝戦の為に組み上がったゴーレムの試運転を兼ねて試験場に来ていた。
「ホントこれすごい。もの凄くスムーズに動くし、簡単な命令は常に同期しなくてもやってくれるだなんて!」
「基本的にはゴーレムですから簡単な命令なら出来ますわよ。ただ同期すると『鋼鉄の鎧騎士』と同じくその感覚がダイレクトに伝わってくるので要注意ですわ」
そう言ってアニシス様はヤリスの身体に魔晶石を取り付ける。
「アニシス様、これは?」
「これはゴーレムとの同期を更に強くするものですわ。いろいろ考えたのですが、『鋼鉄の鎧騎士』は中に入って操縦する時に自身が『鋼鉄の鎧騎士』と同化した感覚になりますわ。ですからそれと同じ方式をとれば通常の同期以上に感覚が強くなり、操作が更に容易になりますわ。こうする事によりヤリスは完全にゴーレムの操作に集中でき、私たちはそのサポートに徹する事が出来ますわ」
ヤリスに魔晶石を取り付け終わってアニシス様はルラを見る。
「壊されると修理が間に合いませんから、手加減の程よろしくお願いしますわ」
「うん、分かってるよ。それじゃぁ、あたしは『最強』!!」
そう言ってルラはチートスキル最強を使い始める。
ヤリスはもう一度同期をし始めるけど、なんか驚いている。
「うわっ、凄い! なんか本当に私がゴーレムになったみたい!!」
ヤリスはそう言いながらゴーレムを動かしている。
「さて、それでは準備も良いみたいですわね、取り合えず軽く組み手をして見てくださいですわ」
アニシス様にそう言われルラとヤリスのゴーレムは向かい合って構える。
そしてどちらともなく踏み込み拳をかわす。
びしゅっ!
ひゅっ!
「へぇ、なんか動きが凄く良いね!」
「ルラとは初めてやるけど、本当に私が相手してるみたい。体が大きくなった分こっちの方がリーチに余裕があるわね!」
言いながら二度、三度と拳をかわす。
ヤリスのゴーレムが繰り出す鉄拳をルラは簡単にいなし、リーチが短い分蹴り技を繰り出す。
それをヤリスのゴーレムは防御しながら数歩下がりまた飛び込んで拳を入れる。
「ふむ、動きは申し分ありませんわね。ルラさんの攻撃も外装強化の魔法が効いているので問題無いようだし、フレームが『鋼鉄の鎧騎士』と同じクロスバンド方式のエルリウムΓですので強度も十分ですわ」
「なんですかそれ?」
「エルリウムΓとは魔鉱石をクロスバンドしながら編みあげて作ったフレームですわ。中が空洞にはなっていますが強度は十分。更に空洞内に魔力伝達の素材を仕込めますからその反応速度はかなり早くなっていますわ」
うーん技術的な事は良く分からないけど、とにかくすごいらしい。
と、ルラとヤリスの組手速度がどんどんと上がって行く。
「えへへへへっ! 凄いねこのゴーレム!!」
「覚醒しないでルラと此処まで出来るだなんて! 凄い凄い!!」
だんだんとその組手スピードが上がっていき、時折突風に近い風が吹いてくる。
「うわっッぷ! な、なに?」
「どうやら拳を繰り出した時の風圧のようですわね」
拳の風圧って……
今の突風だよ?
そんな生易しい風じゃなかったよ??
「これならどう?」
「何の、はっ!!」
どごーん!
バゴーン!!
「【絶対防壁】!」
ガンっ!
組手はどんどんエスカレートして床が割れ、強化魔法で保護されている試験場の壁をへこませ、時たま細かい瓦礫の破片が飛んでい来る。
それをアニシス様はすました顔で高速詠唱で防御魔法を張って押さえる。
「ちょ、ちょっとアニシス様! これもう組手じゃないですよ! あぶなっ!!」
「うーんそうですわね。そろそろやめないと試験場が壊れてしまいますわね。ルラさん、ヤリスそろそろ終わりにしてくださいですわ~」
アニシス様がそう言うとやっとルラとヤリスのゴーレムは動きを止める。
「あ~、楽しかった~」
「いいわね、コレ。覚醒しないでもここまで出来るなんて! まるで自分がゴーレムになった気分よ!」
戻ってきた二人はにこにこ顔だけど、試験場が……
「流石にこれは学園に怒られてしまいますわね。ヤリス手伝ってくださいですわ。あなたの魔力を私にくださいですわ。試験場を魔法で直しますわ」
どうやら何とか直せるみたいだけど、だったらそこまでになる前に止めればいいのに……
「分かりました、アニシス様。んっ」
ヤリスはそう言って瞳を金色に、体を薄っすらと光らせこめかみの上に三つずつトゲのような癖っ毛をぴょこんと生やす。
そしてアニシス様の背に手を着けて魔力を注ぎ込む。
「んはぁっ! いいですわぁ私の中にヤリスが入ってきますわぁ~、熱くてねっとりと濃いヤリスの魔力が無理矢理私の中にぃ~。久しぶりにされるのとてもいいですわぁ~♡」
いやいやいや、ちょっとマテぇ!
なに勘違いしそうなこと言ってるの!?
「んんんっ、アニシス様の中きついぃ、これじゃぁ奥まで入れられないわ。アニシス様、もっと力を抜いてください。奥までしっかりと入れて私の濃くてねっとりとした魔力注ぎ込みますから……」
「はぁはぁ、凄いですわ、中にたっぷりと熱いのが入ってきますわぁ~♡」
「だから言い方ぁっ///////!!」
思わず叫んでしまう私だったのだ。
* * *
「問題はありませんでしたわね」
控室に戻りゴーレムの様子を見たアニシス様はそう言ってバコンとゴーレムのお腹の外装を閉める。
ちらっと見たけど中にはまるで機械みたいにいろいろなものが詰まっていた。
「これならいけますよ、アニシス様!」
「ヤリス、また後で手合わせしようね~」
ヤリスもルラも機嫌が好い。
ゴーレムの仕上がりは上々のようだ。
いよいよ明日は決勝戦。
正直ここまで来れるとは思ってもみなかった。
私は奇麗に磨き上げられたゴーレムを見ながら明日の決勝戦に思いをはせるのだった。
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