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第十二章:留学
12-51忘れてた
しおりを挟むはぁ~、楽しかったねお姉ちゃん!」
「うん、アニシス様の知っている店は何処も美味しいし、貸し切りだから落ちついて話も出来るしね」
あの後祝賀会と言う事で街に私たちは繰り出しアニシス様のおごりで大いに優勝を祝った。
ヤリスなんかこれで自分の野望が一つ叶うとか大喜びだし、アニシス様の犬…… もとい使用人の丁稚奉公となったスィーフの皆さんも一緒だったので結構と盛り上がった。
「それじゃぁまた明日ね」
「うん、お休みヤリス。アニシス様もご馳走さまでした」
「ご馳走さまでした~」
「いえいえ、また一緒にお食事しましょうですわ。その時はリルさんもルラさんも私の所へ来てくれる事を承諾してくれる事を願っていますわ~」
そんな事言いながら去ってゆくアニシス様に従うスィーフの皆さんは既にアニシス様に手懐けられたようで見えない尻尾を思い切り振って「ご主人様♡」とか言っている。
あのスィーフの皆さんがだ。
「さてと、帰るわよルラ」
「うん、お姉ちゃん」
私とルラは手をつなぎながら家へと帰るのだった。
* * * * *
「え、ええぇとぉ……」
「あ~」
家に戻ったら玄関に優勝おめでとうと言う出迎え用の垂れ幕が掲げてあった。
まさかと思い、玄関に入ると学園長がいた。
「優勝おめでとう」
「あらあらあら~やっと帰って来てくれたわね~。もしかしてご飯もう食べちゃった?」
マーヤさんもいたよ……
まずい。
アニシス様たちとお祝いで外で食事するって言い忘れてた。
「あの、その、すみません。もうご飯食べて来ちゃいました……」
「ううぅん、良いの良いの。せっかくの優勝だもんね、生徒会に呼び出しされていたみたいだけど大丈夫だった?」
「そ、そっちはアニシス様とヤリスが何とかするってことで話は着きましたけど……」
ちらりちらりと学園長を見る。
その表情は目元のマスクをかぶっている事もあり、口元だけでは判断できない。
「え、ええぇとぉ……」
「ユカ父さん、マーヤ母さん、あたしたち優勝したの見てた?」
私が言い淀んでいたらルラが場の空気を読まない発言をする。
「ちゃんと見てたわよ~」
マーヤさんはそう言ってニコニコとルラを抱きしめる。
「えへへへへへ~」
抱き着かれながらルラは嬉しそうに笑っているけど、こっちは学園長にドキドキだって言うのに!
私が内心動揺していると学園長が私の名前を呼んだ。
「リル」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
絶対怒られる!
学園長たちの事だ、きっとまたお頭付きの鯛とか伊勢海老とか準備してたんだ!!
「ルラのあれはやはり『あのお方』なのですね?」
「へっ?」
学園長に怒られるのを覚悟していた私に学園長は意外な事を言い出す。
そして私が二度驚かされた事は学園長があの駄女神を知っている様だってことだ。
「あ、あの、もしかしてあのルラと私の会話を……」
「盗み聞きするつもりはありませんでしたが聞こえてしまいました。そもそも異界の門を開くあの四大精霊のスパイラル効果は私を元の世界に戻す為の研究でした。まさかそれをアニシス王女が行えるとは思ってもいませんでしたが。禁忌に近いものです」
そう言ってため息をつく。
「もしあの場でアレが暴走したら大問題になっていましたが、あなたのスキルで『消し去る』事により大事にはなりませんでした。しかし『あのお方』の言う通りあなたのスキルはこの世界自体を壊してしまうかもしれない。その事だけはよく覚えておきなさい。この世界は私にとっても第二の故郷であるのですから」
学園長はそう言って踵を返して奥へと行く。
「食事は済ませたようですが、私たちもお祝いはさせてください。ジュースの一杯くらいならまだ飲めるでしょう?」
「え、あ、は、はいっ!」
私は慌てて靴を脱いで家に上がる。
マーヤさんは笑いながらこそっと私に言う。
「ユカったらあなたたちが戻るまでここに居るって聞かないのよ。リル、晩酌くらいしてあげてね」
「は、はいっ!!」
あっちゃー。
やっぱりお祝いで豪華なご飯用意していたか。
私は慌てて学園長の後ろを追うのだった。
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