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第十四章:脈動

14-17知識の塔の番人

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「エリリアじゃないの!? 何年ぶりよ、屋根裏部屋から出て来るだなんて!!」


 ソルミナ教授は彼女を見て大いに驚く。
 一体誰なのだろう?

「あの、ソルミナ教授こちらは?」

 私がおずおずと聞いてみるとバッとこちらを見て言い出す。

「知識の女神オクマスト様の『知識の塔』の番人よ! オクマスト様の分身でもあるのよ!」

 えーと、知識の女神様って確か古い時代の女神様?
 昔、村で聞いた十二人の女神様の一人だっけ?

 私がそんな事を思っていると彼女、エリリアと呼ばれたは言う。


「僕の紹介をしてくれてありがとう、ソルミナ。しかし今の若いのは平気であんな危ない事をするのかい? 君が付いていながら、もう少しでこの辺一帯がクレーターになる所だったじゃないか。そうすると僕のいる屋根裏部屋も影響があって困るんだけど」

 言いながら又、眼鏡をかけ直す。
 彼女のその言葉にソルミナ教授は小さく呻く。

「うっ、そ、それは…… 異空間で隔離すれば精霊どうしの直接の衝突は無いと思って……」

「精霊は精神体でエネルギー体だよ? それが精霊力を発揮すれば本体でなくても同じような力の衝突になるのは明白じゃないのかい?」

「うぅぅ、それは……」

 ソルミナ教授はそう言われ唸って黙ってしまった。
 つまり、彼女エリリアさんとか言う人の事が当たっていると言う事だった。


「でも、伝説のマシンドールアイミは体内に四つも精霊王を保有すると聞きますわ。きっと何らかの形で精霊どうしの干渉を遮る方法があるはずですわ!」

 ここへきてただ涙をぼろぼろ流していたアニシス様がハンカチで目元をぬぐってそのまま鼻をチーンとしてから言う。

 
「精霊を従える方法は知っているかい? 上級精霊も下級精霊も基本は同じだよ?」

 エリリアさんにそう言われアニシス様はしばらくポカーンとする。
 そしておずおずと言い出す。

「講義では精霊を制するにはまず関係を良くする事、そして力の誇示をする事でしたわよね?」

「そうね、精霊は言霊を載せたエルフ語で呼びかける事により反応する。そして魔力を代価に力の行使をしてくれる。これが基本。でも上位の精霊はそれだけでは手を貸してくれない。力の誇示をして契約を結ばなければならない」

 アニシス様が一般的な知識を言うとそれを引き継いでソルミナ教授が上級精霊についても語る。
 それを聞いていたエリリアさんは大きく頷きいう。


「ではもしすべての精霊王を従える者がいたら?」


「なっ! そんな事出来る訳無いじゃない!! うちの長老だって上級精霊と契約するのにどれだけ大変か…… あっ」

 エリリアさんのその言葉にソルミナ教授は反論をしながら何かに気付く。

「エル……ハイミさん……」

「そう言う事だよ。いがみ合う精霊がいたとしてもそれの上位に存在する物がいれば精霊たちはたとえ王でも従う。それが力の誇示。そしてアイミの主人は誰だか覚えているかい?」

 エリリアさんはそう言いながら部屋の中に置いてある精霊が封じ込まれた魔晶石核を手に取る。


「連結型魔晶石核は凄いものだと同じ精霊を百個一つの魔晶石核に封じたと言われているね。もっとも、それを起動させるのは普通の人間委は出来ないけどね。だから現在のような双備型や最大四つまでの連結型魔晶石核が主流になっているよね?」


 そう言いながら部屋の中のみんなを見渡すエリリアさん。
 ここにいるみんなは黙って彼女を見ている。 
 彼女はそれを満足そうに見てから続ける。


「協和と協調、そして信頼。これが複数の精霊を行使する為の鍵となるんだよ」


 そう言って魔晶石核を机に戻す。
 しかしエリリアさんは私を見てニヤリと笑っていう。


「正攻法は困難を極めるだろうね。でもそれを簡単に覆させる人物もここにはいる。女神さえも凌駕する力の持ち主がね」

 そう言って私を正面から見る。
 
 いや、そんな事言われたって思い当たるのはあのチートスキルくらい。
 確かに黒龍のコクさんたちにも言われたけど何でも消せるこの力は凄い。
 ただ、「消し去る」事しか出来ないこの力は精霊を制御できる力ではないはず。

 なのになぜ?


「リルとルラのスキルについては聞いているけど、確かに女神様に匹敵する力らしいわね。女神の分身であるエリリアがそう言うのだもの間違いは無いでしょう。でもどうやって?」

「なに、精霊にだって交渉する術はあるだろう? 精霊たち同士の共鳴が最大限に強くなったあのフルバースト状態なら」

 エリリアさんはそう言って悪戯がバレた子供のように笑う。

「共鳴のフルバーストですの……」

「アニシス様?」

 エリリアさんにそう言われてアニシス様は話始める。

「確かに、以前大魔導士杯でもゴーレムに四大精霊の魔晶石核を仕込んで覚醒したヤリスの魔力を使い共鳴をさせましたわ。あの時はヤリスの女神様の要素、覚醒した力なので扱えましたわ。でもいくら緑の光の中でも精霊たちと意思疎通までは……」

「普通の人間にはね。でも精霊魔法に詳しく、そして女神をも超える力を持った者が語り掛ければ?」

 アニシス様はエリリアさんいそう言われハッと気づいたように私を見る。

「精霊に語りかけられる言霊を使い、そして女神様をも超える力の誇示が出来る人物ですわね……」

 いや、そんな事言われてもどうやって精霊たちを押さえろと?
 私にそんな大層な事出来る訳無いじゃん!!

「ソルミナ教授、私のスキルで精霊たちにどうやっていうこと聞かせるって言うんですか?」

「どうって……」

 思わずソルミナ教授に聞いちゃったけど、ソルミナ教授もどう答えていいのか分からず、エリリアさんを見る。
 するとエリリアさんは口元に笑みを浮かべ言う。


「なに、君の力で脅せばいいんだよ」


 そうあっけらかんと言う彼女に私は思わず絶句するのだった。 
  
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