381 / 437
第十五章:動く世界
15-17お墓
しおりを挟む「これで良しっと」
私やルラだけでは埋葬できないので、アイザックさんはコルネル長老を弔うのを手伝ってくれた。
貿易都市サフェリナ。
その郊外にある東の丘の近くにコルネル長老のお墓を作った。
「オーガに知り合いがいたとはね…… オーガって意思が通じるものなんだ……」
「コルネル長老はずっと人として村にいたんです。ドドスの街からアスラックの港町に向かう山間の森に囲まれた静かな村で。自分たちがまさかオーガで、人の姿に封印されていただなんて知らなかったのでしょうけどオーガの姿になってからも変わらず私たちには親切にしてくれていたんです……」
ヤリスはアイザックさんがお墓を作り終わると、どこかで手に入れて来たお花を私に渡してくれた。
私とルラはそれを受け取りコルネル長老のお墓にお花を添える。
「ごめんなさい、コルネル長老…… デルバの村に連れていけなくて……」
「コルネル長老、絶対に悪の組織はあたしが倒すよ」
二人してお墓にお花を供えてそう祈りを捧げる。
この世界には女神様が実在する。
そして魂の輪廻も実在する。
願わくばコルネル長老も平和な所へ生まれ変わってもらいたい。
そんな私たちを見てヤリスやアイザックさん、アニシス様やサ・コーンさん、ウ・コーンさんも手を合わせお祈りしてくれる。
「皆さん、ありがとうございました。私たちの我が儘を聞いてくれて」
「まあ、リルの知り合いなら弔ってあげない訳にも行かないじゃない、たとえ魔物でもね」
ヤリスはそう言いながら立ち上がり私を見る。
なんだかんだ言ってヤリスは優しい。
「お姉ちゃん、これ」
そんな私にルラはドーナッツを引っ張り出してきた。
そう言えばコルネル長老はドーナッツが好きだったな。
いや、オーガの皆さん全員がそうだった。
私はルラから受け取ったドーナッツをコルネル長老のお墓にお供えする。
「さて、それでは行きましょうですわ。まさか改修型があんなに簡単にやられるとはですわ……」
アニシス様はそう言ってアイザックさんを見る。
アイザックさんは悔しそうにしているけど、アニシス様はアイザックさんの手を取って言う。
「今度は負けない機体を作りますわ。アイザック様にはまた私の作った『鋼鉄の鎧騎士』に乗って欲しいのですわ」
「アニシス様…… すみません。しかし次こそは必ず!!」
落ちこむアイザックさんにアニシス様はにこりと微笑むのだった。
* * *
「あ~、戻って来た。おーい、みんなぁ~」
メリヤさんが私たちが戻って来たのに気がついて手を振っている。
丘の上の別荘ではサフェリナの解放に手を貸してくれた人たちが集まって傷の手当てや食事をしていた。
そんな中、ぼろぼろの「鋼鉄の鎧騎士」が何体も置かれていた。
「戻りましたか。ちゃんと弔ってあげたのですね?」
「はい、ユカ父さん。それで、ユカ父さんは大丈夫なんですか?」
あの時、ユカ父さんがギフト持ちでどれほどよかったか感謝したものだ。
目の前で大切な人が剣で串刺しにされる光景なんて二度と見たくはない。
「知っての通り、片方の私が生きていればもう片方が死んでも大丈夫です。あの時は注意を反らす必要がありましたからね」
そう言ってユカ父さんは「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。
「太古のヤツメウナギ女ですか…… しかも『女神戦争』の生き残りで女神の血を吸った事がある魔物、更に強奪した連結型魔晶石核まで体内に持つ事からルラのスキル攻撃にも耐えた。そしてこの『賢者の石』により自在に操られていたとは……」
ユカ父さんはそう言って手のひらにあの「賢者の石」がついた指輪を見つめる。
「イリカの『賢者の石』ですよね、それ」
「ええ、何とか右腕を切り落とせましたがもう一人のアリーリヤに邪魔をされ打ち漏らしてしまった」
とは言え、イリカには大ダメージを与えたし「賢者の石」も奪えた。
いくらジュメルとは言え「賢者の石」をそうそう大量には生産できないだろう。
だとすると残りはアリーリヤの持つ「賢者の石」のみ。
「何とかアリーリヤたちを捕まえないとまた被害が出ちゃいます。この後どうしたらいいんですかユカ父さん?」
「……アリーリヤは確実にリルとルラを狙ってきます。今回の件でルラの強さは女神の血を吸って連結型魔晶石核をも持つあのヤツメウナギ女の魔物を凌駕していました。必ずあなたたちをまた襲いに来るでしょう」
ユカ父さんのその言葉に私は黙り込んでしまった。
確かにそうだ。
アリーリヤは最後まで私たちを自分たちに引き込もうとしていた。
いや、私たちのチートスキルをだ。
イリカあたりは私たちを魔物同様に操って世界を破壊させようとか言っていた。
しかしアリーリヤは私たちを執拗に呼び込もうとしている。
―― 世界は矛盾している ――
何故か彼女のその声が頭から離れない。
確かにこの世界は女神であるエルハイミさんが仕切っている。
力ある者、英雄と言われる者でエルハイミさんに関係する人は全てジルの村に転生をするようになっている。
でもそれが悪い事とは私は思わない。
まだこの世界に来て十七年くらいの私には計り知れない長い時を安定させているエルハイミさん。
もともとあちらの世界の住人で、この世界に来てティアナ姫の為に千年もの間安定させていた。
確かに元居た世界なんか私の知る限り二百年ちょっとの間を江戸時代から一気に近代化してそして戦争した後の復興から信じられない程発展をしたと習った。
その恩恵は当時女子高生の私だって理解は出来た。
でも代償として自分の知らない国では争い事が絶えず、あの世界だってしょっちゅう戦争をしていたってはテレビなどで見ていた。
大なり小なりの争い事はあってもこの世界は安定している。
それは良い事ではないのだろうか?
なまじ文明が発展してその結果争い事で戦争ばかりしているよりはよほど好いと私は思うのだけど……
「そんな世界をジュメルは、アリーリヤは壊そうとしている……」
私はそうぽつりとつぶやいていた。
「お姉ちゃん?」
ルラが心配そうに私を覗き込む。
それに気付き、にこりと笑って言う。
「何でもないわよ。それよりユカ父さん、アリーリヤたちがまた私たちを襲いに来るなら私たちはボヘーミャに戻ってはまずいんじゃないですか?」
「それを言い始めたらあの封印のひょうたんとやらのマジックアイテムがある限り何処へ行っても彼女らはリルとルラを襲いに来れるでしょう。問題は今回あれほどの騒ぎを起こし、あのヤツメウナギ女を使ってでもあなたたちを取り押さえるのが困難だと理解した事でしょうね。次は別の手段で襲ってくるかもしれません。であればボヘーミャに戻る方が対処の仕方があり得策でしょう」
ユカ父さんはそう言いながらもう一度壊れた「鋼鉄の鎧騎士」たちを見上げる。
「今のジュメルはそれだけの力を持っていながらあなたたち二人には敵わないと理解しているでしょう。次はもっと巧妙な、そして力任せな事ではない方法で来るかもしれませんね……」
ユカ父さんはそう言いながらぐっとこぶしを握るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】
しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。
【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】
※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。
※重複投稿しています。
カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。
そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
愛鶴ソウ
ファンタジー
十二の公爵によって統制された大陸の内、どの公爵にも統治されていない『東の地』
そこにある小さな村『リブ村』
そしてそこで暮らす少年剣士『クロト』。
ある日リブ村が一級魔物『ミノタウロス』によって壊滅させられる。
なんとか助かったクロトは力を付け、仲間と出会い世界の闇に立ち向かっていく。
ミノタウロス襲撃の裏に潜む影
最弱属性魔剣士の雷鳴が今、轟く
※この作品は小説サイト『ノベルバ』、及び『小説家になろう』にも投稿しており、既に完結しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる