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第十五章:動く世界
15-19連結型魔晶石核作成再開
しおりを挟む「大変だったみたいね~」
私たちは今ソルミナ教授の研究室にいる。
そして奪われた分の新型の連結型魔晶石核を再作成する準備をしていた。
「でもまあサフェリナは解放されたし、被害は最小限にとどまりましたから……」
「まあ、学園長が一緒でも連合の『鋼鉄の鎧騎士』は全部やられちゃったのよね? それでその化け物の正体ってのが太古のヤツメウナギ女で、『女神戦争』の生き残りなんだって? まさかそんなのがまだスィーフの地に眠っていたとはねぇ。うちの長老じゃあるあるまいし」
ソルミナ教授はそう言いながら道具とか何やらとか準備をしてくれている。
アニシス様もヤリスも来ているから条件はそろった。
後は面倒だけど手順どおりに時間と労力をかけて行けば連結型魔晶石核は出来あがるだろう。
「で、アニシスはこれが出来たらティナの国に帰るんだって?」
「ええ、動力源である連結型魔晶石核が二個手に入れば理論上相乗効果で伝説のティアナ姫の赤い『鋼鉄の鎧騎士』のスペックに近いものが作り上げられるはずですわ。そうすれば今度こそジュメルに後れを取る事はありませんわ!」
アニシス様はそう言ってどんどん作業を進める。
確かに人類の現時点での最強の兵器である「鋼鉄の鎧騎士」は必要だろう。
でもヤツメウナギ女さんはその体に女神の血を宿している。
それはものすごい力をヤツメウナギ女さんに与え、更に連結型魔晶石核の魔力供給のおかげでルラに殴られても簡単に回復していた。
だから必ず新しい「鋼鉄の鎧騎士」が必要になる。
「他にもこれの解析しろって言われてもねぇ……」
そう言うソルミナ教授の目の前には透明なクリスタルの箱に入れられた「賢者の石」の指輪があった。
ユカ父さんはこの「賢者の石」の解析をソルミナ教授に任せた。
私たちからの情報でこれは人工の「賢者の石」でその素材に人魂を使っていると話している。
それを聞いたユカ父さんはすぐにソルミナ教授に解析を依頼したけど、ソルミナ教授は眉間にしわを寄せて唸っている。
「正直これには関わり合いたくないわぁ~。はっきり言ってこれって呪いのアイテムに近いわよ? リルたちはこれを同調して見た事ある?」
言われて見ればそんな事はした事が無かった。
私とルラは「同調」をして瞳の色を金色にしてその指輪を見る。
「うわっ!? 何ですかこれ!!」
「ドクロだぁ~お化け?」
何と同調して初めて知ったけど、この指輪の周りにいくつものドクロがふよふよとうごめいていた。
「これって何なんですか?」
「多分、これの素材にされた人の魂ね。はっきり言ってこいつは出来の悪い魔力抽出器よ。ちゃんと人の魂の中から魔力を摘出できていないから犠牲になった人たちの魂自体もこの石に捕らわれてさながら地縛霊のようになっているのよ。で、魔力を使う時だけこの周りにいる魂の中から魔力を引っ張り出すと。確かに全部魔力を使い切れば魂としての器が保持できなくて最後には消えてなくなるでしょうけど、成仏できないこれら魂は転生も何もできないでずっとここに捕らえられているのよ。学園長もそのくらい分かっていると思うけどなぁ…… あ、もしかして私に解除の方法を探らせてこの魂たちを成仏させろって事ぉ?」
ソルミナ教授は最後にそう言って思い切り大きなため息を吐く。
なんで今まで気がつかなかったのだろう。
いや、今までは「同調」出来なかったから魂自体を感じる事も見る事も出来なかった。
だからこの惨事に対しても気がつかなかった。
「あの、ソルミナ教授。何か手伝えることありませんか?」
「あんたたちはアニシスたちの方を手伝いなさいよ。連結型魔晶石核はあなたたちがいないと作れないでしょう?」
ソルミナ教授はそう言って「賢者の石」が入ったクリスタルを準備室の方へ持って行く。
「後でエリリアにも相談してみるわ。多分あの状態だと神聖魔法とかでも解除は出来ないでしょうからね。成仏させるにもあの石と魂との枷を外す方法を見つけなきゃね」
そう言いながら向こうへ行ってしまう。
私とルラは「同調」をやめて顔を見合わせる。
「確かに、先に連結型魔晶石核と作ることに専念しないとね……」
「うん、また精霊さん呼び出そうね、お姉ちゃん!」
私とルラは自分たちに出来る事を始めるのだった。
* * * * *
「な、何とか完成しましたわ!!」
おおぉ~
ぱちぱちぱち~
アニシス様は出来あがった新型連結型魔晶石核を手に取り嬉しそうにしている。
「はぁ~、やっとできたか。三回目だからだいぶ手際は良くなったけどやっぱりこれ量産なんて絶対に出来ないわ~」
「お疲れ様、ヤリス。はいこれ」
喜ぶアニシス様を見ながら思い切り椅子に深く座り込むヤリス。
私はヤリスに飲み物を手渡しながら苦労をねぎらう。
連結型魔晶石核を作るにはやはりかなりの苦労が伴う。
こんなのヤリスの言う通り絶対に量産は無理だろう。
「それで、アニシス様何時ティナの国に戻っちゃうんですか?」
「はい、明日にはここを出発しようと思いますわ。既に素材の確保は始まっていますの。今回は外装までミスリル合金を使うつもりなので予算的にはかなりキツですわ。でも連合議会の決定で各国から資金援助が始まりましたから何とかなりそうですわ」
アニシス様はそう言ってパラパラと資料をめくる。
その資料にはアニシス様が構想をする伝説の「鋼鉄の鎧騎士」を参考にした新たな「鋼鉄の鎧騎士」の設計図が盛り込まれていた。
「アイザックさん、新しい『鋼鉄の鎧騎士』待ってるんだよね? あたしも出来あがったら見てみたい!」
「ええ、その時には是非ルラさんにテストを手伝ってもらいたいですわ。ルラさんと互角に手合わせが出来れば今度こそジュメルのあの魔物にも負けませんわ!」
アニシス様はぐっとこぶしを握ってそう言う。
確かにルラと互角に戦えればヤツメウナギさんとも互角以上に戦えるかもしれない。
「ん? でもちょっと待って。ルラってスキル使う時相手より必ず強いけど、圧倒するほどじゃないよね? 私たちのスキルってその気になればかなりの事が出来るはずなんじゃないの?」
「ん~、秘密の力使う時にいっつも『対象』とか言うのが頭の中に浮かび上がって、それを選ぶとそれよりちょっと強くなれるの~。だからお姉ちゃん相手にあたしは『最強』使うとね~」
ルラはそう言いながら私を見る。
そしてチートスキル「最強」を発動させてからヤリスに向き直る。
「ヤリス、腕相撲しようよ! 覚醒しないで普通に」
「え? いいけど私がルラになんかかないっこないのに?」
そう言いながらルラとヤリスは机の上で手を合わせて腕相撲を始める。
私たちはそれを見ながらルラの圧勝を予見するも、始まったその腕相撲は予想外の結末に終わった。
「あ、あれ?」
「てへへへへ、やっぱりヤリスの方がお姉ちゃんよりずっと強いや~」
目の前で起こった現象は私たちを驚かさせた。
「ちょ、ルラなんでわざと負けたの?」
「うぅ~んん、あたしは全力でやったよ? でもお姉ちゃんはヤリスよりずっと力が無いからあたしもお姉ちゃんよりちょっとだけ強くなっただけだからヤリスには敵わないんだよ~」
??
意味が分からない。
いや、ルラは確か「対象」って言っていた。
もしかしてそれって私のチートスキル「消し去る」と同じく認定をしないとダメなのかな?
「じゃ、じゃあもっと強い相手を『対象』にしたら?」
「多分それよりは強くなると思うよ~」
あっけらかんと言い放つルラ。
いやちょっと待て。
それじゃあ対象を何時も更に強いのを指定していたらヤツメウナギ女さんも簡単に抑えられたんじゃないだろうか?
「ルラ、もしかして毎回『対象』を選ぶときに目の前のしか『対象』にしていないというの?」
「うん、そうだけど?」
じゃ、じゃあもしもっと強い存在を意識してそれを常に「対象」にしたら……
「た、試しにエルハイミさんを対象にしたらどうなっちゃうの?」
「う~ん、試した事無いけど、会った事あるからできると思う~。えーとエルハイミさんを『対象』にあたしは『最強』!」
ルラがそう言いながらチートスキルを使った瞬間だった。
どんっ!!
世界が揺れた。
いや、この世界が更なる強者の存在に動揺をしたのだ。
「な、なにこれっ!?」
「こ、これは、何と言う存在感ですの!?」
「ちょちょちょっ、あんたら何した!? 何このもの凄い存在感!? まさかここに魔王でも現れたか!?」
ヤリスが、アニシス様がルラのその存在に驚く。
それどころかソルミナ教授も慌てて出て来た。
それ程今のルラはその存在感が強く、そして誰もが畏怖を覚えるほどだった。
「ル、ルラよね?」
「ん~そうだよ? あれ、なんかお姉ちゃんがもの凄く小さく感じる? あれ、ヤリスもアニシス様もソルミナ教授も??」
見た目はいつも通りのルラだけど、その存在感が半端ない。
恐る恐るそう聞いてみるも、いつも通りのルラだった。
私は頬に一筋の汗を流しながら言う。
「と、とにかくルラ、スキルの発動を止めて。なんかこのままルラが動き出したら大惨事が起こりそうで怖いわ」
「ん、分かった~」
ルラはそう言いながらチートスキルの発動を止めた。
途端にその存在感は消え、何時ものルラが目の間にいるだけだった。
「リル! 何なのよ今のは!!」
「もの凄い存在感ですわ。女神様にお会いした時よりもさらに強くそれを感じましたわ」
「なに、今のルラなの? あんたら何したのよ!?」
途端にヤリスもアニシス様もソルミナ教授さえも私に詰め寄る。
私は額に汗をびっしりためながら言う。
「も、もしかしてこの世界でルラは完全に最強の力を手に入れたかもしれません。ルラのスキル『最強』はどうやら『対象』より必ず少し強くなるようです。ですのでその『対象』をこの世界で一番強いエルハイミさんに設定するとああなるみたいです」
うーん、この実験とんでもない事になってしまった。
多分、これをちゃんと扱えればルラってもの凄い戦力と言うか、無敵になってしまうだろう。
確かに危ない。
こんなスキル野放しにしちゃ危ない。
「お姉ちゃん、あたしお腹すいた~。購買部でたこ焼き買ってこようよ~」
「それはいいけど、ルラ、お願いがあるの」
「ほえ?」
「絶対にあんたのスキル、よほどの事が無い限り今まで通り目の前の相手を『対象』にして。そうじゃないとエルハイミさんなんてのより強い妹がこの世界の魔王になっちゃうから!!」
真剣にそう言う私にルラはよく理解していない様だった。
仕方ないので私はこう言う。
「言う事聞いたらたこ焼きのトッピングでマヨ玉と明太子つけてあげるから!」
「うん分かった! お姉ちゃん早くたこ焼き買いに行こうよ! あ、チーズトッピングも良い?」
「言う事聞くなら何でもトッピング追加してあげるわよ!」
「わーいぃ、やったあっ!!」
無邪気にそう喜ぶルラに私たちは大きくため息をつくのだった。
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