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第十七章:世界の為に
17-5戦いの終わりに
しおりを挟む上手く行くと思ったナディアさんがティアナ姫としての覚醒と言う事実を「消し去る」ことで、過去から未来を変えようとした。
しかし、それはその時点から先である現在が無かった事となってしまい、その後の世界は消されるところだった。
勿論、覚醒する事が無かった世界は、その後の未来が枝分かれするように並行世界へと分岐して、あちらの世界は何事もなかったようになる。
消されるのは今のこの世界だった。
私のチートスキルはこの世界では絶対的な力を誇る。
それは「あのお方」と呼ばれる駄女神から与えられた絶対的な力。
この世界でこのスキルの力に抗えるのは同じく「あのお方」の端末だった女神エルハイミさんだけだった。
見込みが甘かったのは認める。
でも、もしそれが上手く行けば色々と私たちにとって都合のいい世界になった気がしていた。
「はぁ~、魔人くらいなら何とかなるけど、流石にジェネラル級は歯が立たなかったわね」
ラーシアさんはそう言ってその場で座り込み、槍を放り投げる。
他の村の皆さんも同じようにほっとしてその場に座り込んでいた。
と、「鋼鉄の鎧騎士」に乗っていたアインさんが「鋼鉄の鎧騎士」から降りてこちらにやって来る。
「よくやってくれた、リルにルラ。俺たちだけではジェネラル級を倒す事は出来なかったからな」
「いえ、元はと言えば私の見込みが甘かったせいです…… ごめんなさい」
私はそう言ってアインさんやラーシアさん、近くにいる皆さんに頭を下げる。
しかし、アインさんは笑って言う。
「リルのせいじゃない。これはみんなで話し合って決めた事だ。それに女神様はちゃんとこの世界を維持するためにフォローしてくれている。多分今なお世界の壁の崩壊を一歩先に破壊して再生する事により崩壊自体を止めているのだろう。俺には世界の壁とやらがどれだけ大きいかは分からんが、あの女神様の事だきっと全てを修復して元どうりにしてくれるだろう」
アインさんはそう言ってへこんでいる私の頭に手を置く。
「リルはエルフではまだまだ子供だ。子供の失敗に大人はいちいち怒らんよ。ただ、正しい道を示して導いていくだけだ」
「アインさん……」
アインさんにそう言われても、精神年齢だけは三十路を越えているのでもの凄く恥ずかしい。
頭を撫でられているけど、今はそれが何となく心地いい。
エルフの村以外で子ども扱いされるのも久しいから。
「しっかし、先生、この子たち女神様が連れてきたから普通じゃないと思ってましたがあんなにすごい力を持っているなんて」
「異世界からの転生者だからな。しかも『あのお方』からスキルをいただいている。今回はそのスキルのお陰で助かったがな」
「あの、もし私たちにスキルが無かったら?」
「流石にこのジルの村も全滅していただろうな。魔人クラスなら数人で倒せるが、悪魔将軍ともなれば歯が立たない。俺の知る限りジルの村で最大の危機だったな」
アインさんはそう笑いながら言うけど、それってもの凄く大事なんじゃ……
「とにかく終わった。避難したみんなに伝えて後片付けを始めよう」
アインさんはそう言って破壊された村を見渡すのだった。
* * * * *
「ごめんなさい!」
「ごめんなさい」
私とルラは長老のラディンさんとその奥さんのロマーさんに頭を深々と下げていた。
あの後坑道に逃げ込んでいた人たちも戻って来たけど、帰る家が押しつぶされたりしてその処理でみんな大忙しになってしまった。
その中にラディンさんの家もあって、現在私たちはそれについて謝っていた。
「なに、かまわんよ。あのジェネラル級悪魔を倒したのじゃ、これくらいの被害で済んだのは奇跡的じゃからな」
「そうですねぇ、ここじゃこんなのは日常茶飯事ですし」
そう言いながらロマーさんは杖を持ちだし振ると、瓦礫が音を立ててゴーレムになって行く。
ごごごごごごご……
「はいはい、あなたたちこの辺の瓦礫をまとめてね」
ロマーさんがそう言うとゴーレムは崩れた家のがれき撤去作業を始める。
「二、三日あれば片付くかしら?」
「ふむ、必要な者だけ先に回収して集会場に行くかの?」
「そうですね、とりあえずはそこで寝泊まりですね」
そう言ってラディンさんは崩れた家の中から必要なものを先に引っ張り出す。
私は慌ててそこへ行って「手伝います!」と言ってルラと一緒に瓦礫の中から必要なものを引っ張り出すのだった。
* * * * *
村はロマーさんと同じくロックゴーレムを作り瓦礫撤去が始まっていた。
今回の騒動は流石に被害が大きく、村の修復には一週間くらいかかりそうだと言う事だ。
あれだけの大騒ぎで死人が一人も出てないのは凄い。
ケガ人も魔法ですぐに治って村の復旧作業に従事している。
「リルさんとルラさんには申し訳ないが、数日寝泊まりはここで頼むのじゃ」
集会場は神殿だった。
エルハイミさんがいたあの神殿。
神殿の裏には宿舎があって、空き部屋も結構残っていた。
なので臨時でそこで寝泊まりをするのだが……
「みんな復旧作業で忙しくて炊き出しをする人員が足りないわ、リルちゃんルラちゃん悪いけど炊き出しをするのを手伝ってもらえないかしら?」
ロマーさんがそう言うので、私とルラはすぐに頷いて炊き出しのお手伝いをするのだった。
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