45 / 150
第二章:ジマの国
2-8:夏の海辺の日常
しおりを挟む「エストラ君っ!! 【絶対防壁】、【転移魔法】、【氷槍】!!」
私は考えるより先にエストラ君に対して手を伸ばし、魔力を込める!!
事は一刻の猶予も無い!
「アルム様!?」
「おいアルムっ!?」
「この魔力量はっ!?」
「ふわっ、なんなんですぅ!? これお婆ちゃんたちよりすごい魔力ですぅっ!」
「アルム!?」
なんか後ろでマリーやエイジ、魔力に反応したタルメシアナさんやイータルモア、アマディアス兄さんが騒いでいる。
でもそんなのにかまっている暇はない!!
私の魔力に反応してエストラ君の周りに分厚い絶対防壁が展開される。
それは通常は攻撃に対して壁になるのだが、魔力を惜しみなく飛ばした結果完全に球体で三百六十度と彼の周りを包み込む。
そしてその場からすぐにこちらに引き寄せようと、【転移魔法】を発動させるのだけど、エストラ君のすぐ後ろに例の異界の門が現れる。
「ちょっ! エストラ君を異界に連れ去っちゃダメっ!!」
私がそう強く念じて叫ぶと、開いた扉から出始めた黒い手や瞳が一斉にびくつく。
それと同時に上空に現れた氷の槍が数百個一斉に海の中にいる人食い魚に向かって降り注ぐ。
どしゃどしゃどしゃっ!
ぼふんっ!
ビキビキビキビキっ!!!!
【氷槍】は一瞬で周辺の海を氷で閉ざし、人食い魚を氷漬けにする。
いや、それどころか温度をどんどん下げて海を完全に氷漬けにしてしまった。
ぶわっ!
本来汗ばむ陽気だったのがまるで真冬のような冷気を伴い、そしてアストラ君を包んだ【絶対防壁】の球体を扉から伸び出た黒い手たちが上空へと持ち上げ、冷気から遠ざけてくれていた。
あ、いくつか黒い手や目玉も凍っちゃっている??
「何という魔力です!?」
「海が凍ったですぅ!」
「アルム様っ!」
「さぶっ! アルムなんなんだよこの氷は!?」
すぐに私のそばにタルメシアナさんやイータルモア、マリーやエイジがやって来る。
私は黒い手に持ちあげられているエストラ君を見上げる。
「ふう、とりあえず無事みたい。良かった」
「いや、アルムこれはどういうことだ?」
安堵の息を吐きながらそう言う私にアマディアス兄さんが上着をかぶりながらやって来た。
それに私はすぐに答える。
「エストラ君のすぐ近くに人食い魚がいたんです。エイジがそれに気付いたけど周りに誰もいなくて、それで慌てて魔法を使ったんです」
「それは、大義なのだが流石にこれはやり過ぎなのではないか?」
アマディアス兄さんはそう言って海を見る。
確かに、慌てていたとはいえ海が完全に凍ってしまい、夏の陽気が一気に真冬のような寒さになってしまった。
カルミナさんやエルリック夫妻が慌ててエストラ君の救出をしているが、異界の門も半分くらい凍ったままでエストラ君を降ろした黒い手や瞳たちも困惑している。
「わ、我が主よ…… 酷いです…… ずっと私をこんな所に閉じ込めておくだなんて……」
あ、半分凍ったアビスが扉から出て来た。
こいつは魔人だから死にはしないと思ってたけど、ずっと扉の中に捕まっていたのか?
「アビスか? お前なら異界の扉から出てくるくらいで来たんじゃないのか?」
「お戯れを……我が主の呼び出しこの扉は七大冤獄の最下層、冷層獄。たとえ魔人でも凍り付いたが最後抜け出る事は出来ませぬ」
なんかものすごいの呼び出しちゃった?
あの時は女湯を覗き見られた腹いせにどこかに飛ばしてやろうと思っただけなんだけどなぁ……
「アマディアス殿、助かりましたぞ。わが息子エストラを救い出していただき感謝の言葉も無い」
「いえ、エストラ殿を助け出したのは我が弟にございます。エストラ殿は大事ありませぬか?」
「ええ、あの寒さの中、防壁のお陰で無傷ですよ。いや、本当にありがとう」
あ、エストラ君を救出し終わったエルリック王子がアマディアス兄さんにお礼を言いに来た。
アマディアス兄さんは私の背を押してエルリック王子にそう答える。
するとエルリック王子は私を見てにこりと笑う。
「アルムエイド殿、感謝したしますぞ。噂にたがわぬその魔法。いやはや、確かに魔王法ガーベルの再来だ」
なんかそう言って絶賛してくれる。
うーん、でもまぁエストラ君が大丈夫だったのでいいか……
でも近くにいたタルメシアナさんがぶつぶつ何か言っている。
「しかし、異界の扉を呼び寄せるとは……しかもこれが噂の最下層、第七氷獄とは…… 魔人ですら氷漬けにすると言われているものですね…… しかしあの魔人、良く生き残ってたものです」
「あ”-っ! あ、あのタルメシアナさん!!」
近くにいたタルメシアナさんがまだ半分凍り付いている異界の扉を見上げながら思わずそんな事を口走る。
アビスが魔人だって事は、みんなにはないしょなので私は慌ててタルメシアナさんの手を引っ張って余計な事を言わせないようにしようとすると……
「まっ///////」
何故か手を引く私をじっと見る。
そしていきなり私もを抱き上げる。
がばっ
だきっ!
「う~ん、女の子も良いですが、男の子も良いですねぇ~♡ 次に旦那が転生して来たら頑張っちゃって次は男の子が欲しいです♡」
「うわっ、ちょっとタルメシアナさん!?」
いきなり抱き上げられ、あのデカい胸に押さえられながら頬ずりされる。
これ、マリーよりデカいし、カルミナさん並!?
それに抑える力が尋常じゃない!
まったく身動きできずに頬ずりされる。
「アルム様っ! タ、タルメシアナ様、アルム様は私の旦那様です! そのような事はぁっ!!」
「お母様、男の子が欲しかったですぅ? じゃあ、私が頑張ってアマディアス様との間にかわいい男の子を生むですぅっ!」
「どうでもいいけど、この凍った海どうするニャ?」
「さぶっ!」
抱きしめられ頬ずりされていると周りがごちゃごちゃと。
しかし、カルミナさんの言葉にタルメシアナさんは思い出したかのように私を降ろして海を見る。
「確かに、このままではまずいですね。こんなのお母様に見つかったら怒られてしまいます。皆さん下がっていてくださいね」
そう言ってタルメシアナさんは大きく息を吸うと、一気に凍った海に向かって炎を吐き出す。
それは正しくドラゴンの炎。
ものすごい熱量が凍った海を焼き尽くす。
その炎は黒龍ゆずりなのだろう。
しかもタルメシアナさんは女神と黒龍の娘。
ただのドラゴンブレスでは無かった。
ずぼぼぼぼぼぼぉっ!!!!
「うわっ、あっつっ! 【絶対防壁】!!」
タルメシアナさんのドラゴンブレスに今度は熱風が襲ってくるので、私は慌ててみんなも含めて【絶対防壁】を展開する。
おかげで真夏の遊園地の殺人的熱風並なそれも遮られ、一安心。
前世で何を血迷ったのか、若い時代に千葉だけど東京の名前を冠した夢の国に皆で夏休みに行って酷い目に遭ったのを思い出す。
「すっげぇ……」
防壁内でエイジたちがみるみる溶けて行く海を見て驚嘆の声を上げる。
が、タルメシアナさんがいきなりドラゴンブレスと止める。
「ふはぁ~! 流石に久しぶりなので息が続きません、酸欠です!」
なんかぜぇぜぇ言ってる?
もしかしてチアノーゼ起こしかけている。
と、そこへイータルモアがタルメシアナさんを支えて気づかう。
「お母様、残りは私がやっておきますですぅ。残りのこのくらいなら私でも出来ますですぅ」
そう言ってイータルモアも大きく息を吸い、ドラゴンブレスを放つ。
いや、お前も出来るんか―ぃっ!
完全に人型で、タルメシアナさんと違い角も尻尾も無かったから忘れてたけど、こいつも竜の血を継いでいたんだ。
普通の人間で水着を着た美少女が口から大量のドラゴンブレスを吐き出している。
その光景に思わず固まるアマディアス兄さん。
あー、これやっぱりどうしても逃げられなくなってるね、アマディアス兄さん。
あっちではエルリック一家がタルメシアナさんとイータルモアが海を元に戻そうとしているのを応援している。
うん、平和的解決だな、多分。
そんな様子を見ながら私はそう思うのだった……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる