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第二章:ジマの国
2-26:エイジの手紙
しおりを挟むエイジたちがレッドゲイルに戻り、アマディアス兄さんの婚約発表があって数ヶ月、夏の暑さもすっかりと無くなって狭い畑の小麦の色が黄金色になる頃だった。
我がイザンカ王国は今とんでもない事態になっていた。
「アルムエイド様! 次の充填をお願いします!!」
「いや、もう無理ですってばエマニエルさん、少し休ませてください!!」
やっちまった。
エマニエルさんが研究をしていた魔晶石に魔力を充填するやつ、イザンカ王国の新たな産業の希望として大騒ぎになってしまった。
だって、使い終わって価値のなくなった古代魔法王国時代の黒くなった魔晶石が、何度でも魔力充填をした再生品として使用できるようになってしまったからだ。
ただ、魔力に余裕のある人しか魔力充填に貢献できないので、充填された魔晶石はやはり高価なものとなり、ちょっとした宝石と同じくらいの価値になってしまった。
エマニエルさんがいない間に術式を直し、魔法陣の効率化を計っちゃったらもの凄い高スペックのモノになってしまった。
あの魔法のつえで魔力充填するには一定の魔力量と一度に大量の魔力流入が必要だったので、事実上扱えるのは私だけだった。
しかし、この改良した魔法陣は魔力量もその流入量も関係なく蓄積できるようになって、その気になればある程度魔力に余力のある人なら誰でも無理なく充填できるようになっていた。
うーん前世の携帯電話の充電器みたいのものかしら?
アダプターが優秀ならば効率よく充電出来る的な?
低電圧低低電流でも高周波かけてやれば効率よく充電できるように、魔力もちょびちょびでもその瞬間瞬間に魔晶石の中に転移させればちょびちょびと効率よく魔力充填が出来ちゃった。
おかげでそれを開発したとされるエマニエルさんは私の教育係をする傍ら、副業で魔晶石の作成をする仕事を与えられていた。
と言うか、アマディアス兄さんがすぐにこれに目をつけ、イザンカ王国の新たな産業の目玉として魔晶石の販売を試みているのだ。
正直、現在の世界で魔晶石を生産できるのはイザンカ王国だけとなった。
当然この件は秘匿とされ、イザンカ王国の門外不出の技術として大きな期待が寄せられている。
「これ、一緒に術式封印して『力ある言葉』で発動させる魔術封印の事は黙っておいた方が良いかな……」
実は初級魔法くらいだと魔晶石に魔力と呪文が同時に封じ込められることが分かってしまった。
当然これに関してはエマニエルさんにもまだ教えてあげてない。
多分、今魔力充填しているのは指でつまめるくらいの魔晶石なので、本当に宝石と同じように扱える。
それに入れられる魔力もせいぜい頑張っても中級魔法くらいまでの魔力量で、それ以上詰め込むと魔晶石自体が持たなくなって割れてしまう現象も確認した。
なので、大魔法とかだったらもっと大きな加工された魔晶石が無いとダメだろう。
【帰還魔法】が封じ込められていると言う魔晶石だって手のひらサイズあるわけだし。
「それで、アルムこれ何時までやるニャ?」
「初期配布の分だから後百個……」
「我が主よ、私の分もありますかな?」
アマディアス兄さんをイータルモアにとられたと言いながらも、それでも果敢にアマディアス兄さんに夜這いをかけているカルミナさんだったが、イータルモア含めアマディアス兄さんの防壁は厚く、今のところ二人とも成功はしていないらしい。
なので暇なカルミナさんは私の周りをうろちょろしている。
そして魔力欲しさにアビスも私の周りをうろちょろしている。
二人とも犬じゃないんだから……
「エマニエル様、そろそろお時間です。アルム様のお食事の時間になります」
「あと少し、あとちょっとで今日のノルマが終わるから、これだけでも手伝って、お願い!!」
マリーが時計を見ながらそろそろ私の昼食の時間になるのでエマニエルさんに申告すると、エマニエルさんは涙目で私にすがり寄って来る。
これ開発してた時のエマニエルさんを知っているし、多分アマディアス兄さんにきつく納期を守るよう言われてるんだろうなぁ~。
エマニエルさんも魔力保有量は多い方だけど、流石にこれだけの魔晶石の魔力補充は出来ない。
私みたいのがいないとすぐに魔力切れを起こして気を失うだろう。
そして気が付いて魔力が少しでも回復したらまた補充の仕事をこなさなければならない。
私はため息をついてから仕方なしにマリーに言って、残りが終わるまでエマニエルさんに付き合う事にしたのだった。
* * *
「アルム、そう言えばエイジから手紙が来ているよ?」
「え? 本当ですかシューバッド兄さん?」
昼食をたまたま一緒にいたシューバッド兄さんと取っていると、思い出したかのようにそう言ってくる。
エイジとはたまに手紙のやり取りをしていた。
流石にマジックアイテムであるテレビ電話のような「風のメッセンジャー」と言うアイテムは勝手に使えない。
このアイテムは決まった場所どうしで、メールのように姿の映像と音声が送れるシステムだ。
なにやらその昔、魔法学園でこれを開発した人がいて今では国家間や重要な場所どうしでの連絡手段として重宝されている。
ただ、何年かに一度更新しないと基部となっている魔晶石が使えなくなるので、その都度魔法学園に送り込んで修理してもらっているらしい。
正直どう言う構造になっているのか興味がある。
噂では風の精霊に伝言を運ばせていると言う事らしいので、精霊魔法でも封じ込めてあるのだろうか?
「はいこれ。多分、収穫祭のお誘いじゃないかな? レッドゲイルの方がブルーゲイルより作物の出来がいいからね、毎年収穫祭は行われているものね」
シューバッド兄さんから手紙を受け取り、すぐに開けてみる。
するとあまりきれいではないエイジの文字が目に飛び込んでくる。
『アルム、今年もそろそろ収穫祭になる。前の約束通り今度はお前がレッドゲイルに遊びに来いよ。歓迎するぜ。親父殿に話してオリジナルの【鋼鉄の鎧騎士】も見せてもらえる事になっているからな。楽しみにしてくれ!』
文面は貴族王族らしからぬものだったけど、私はそれを見てウキウキし始めていた。
「シューバッド兄さん!」
「ああ、分かっているよ。アマディアス兄さんや父上には僕から話しておくよ。今回はアマディアス兄さんは忙しくてアルムに同行できないだろうし、僕が一緒に行ってあげるよ」
シューバッド兄さんはそう言って優しく微笑む。
あの父王とエリーナお母様から生まれたとは思えない程穏やかな性格の兄。
何時も優しい笑顔でいる。
美少年だし、優しいゆるふわ系は私色に染めたくなっちゃう。
お姉さん、君くらいからはオールオッケー、ストライクゾーンよ!!
中の私はシューバッド兄さんを見てムラムラとしてしまう。
なにせ、アマディアス兄さんはイータルモアに取られてしまったから。
「アルム! それじゃぁ私も一緒に行くわ!!」
「ア、アルム君今度は私も一緒に行くからね!!」
「お兄ちゃん、あたしも、あたしも~!」
いや、あなたたち何処からわいて出た!?
ほっこりとシューバッド兄さんの笑顔を見て邪な妄想に浸ってた私の前に姉妹が現れた。
「アルムの引率者が未成年では心もとないわ、ここは大人な私が同行するわ!」
「わ、私だってアルム君よりはお姉さんですから大丈夫です!!」
「わたしは~? エシュリナーゼお姉ちゃん、私もイクぅ~!!」
「やれやれ、大所帯になっちゃうけどいいか。それじゃぁみんなで行こうか? エシュリナーゼ姉さんもお父様たちに話をするの手伝ってよね?」
「ええ,勿論よ! お父様がダメだって言っても今回だけは譲れないわ!! なにせあっちにはミリアリアがいるのだから! アルムの操が危険で危ないわ!!」
いや、なんでミリアリア姉さんをそこまで警戒する?
あの人、そんな変な人に居は見えなかったけど……
こうして私のレッドゲイルへの訪問はいろんな人がおまけで付いてくる事となるのだった。
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