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第三章:イザンカ王国
3-20:模擬戦
しおりを挟む「それでは今より適合者エイジとの模擬戦を始める。両者前へ!」
イザーガ兄さんがそう言って、屋敷の裏庭でエイジのオリジナルと旧型の模擬戦が始まる。
既にイザーガ兄さんが手回ししてその噂は広まっており、敷地の外の鉄格子のフェンスにはその様子を見ようと街の人たちが集まっていた。
『では行きますぞエイジ殿!』
『おうさ!』
広い裏庭で対峙していた二体の巨人はそう言って木刀を胸の前に掲げてから構える。
双方とも模擬戦なので木刀と木の盾を持っている。
と、旧型が先に動いた。
その動きは各国の「鋼鉄の鎧騎士」の中でも格段に速い。
踏み込みと同時に木刀を突き出すが、それをエイジのオリジナルは余裕でかわす。
そして隙の出来た所へ木刀を振り下ろす。
『なんの!』
しかし相手も手練れ、そう簡単にはエイジの一撃を入れさせない。
突きを避けられたと知った次の瞬間盾を相手に向けて防御の姿勢に入っていた。
がんっ!
想定していた通りに木の盾でエイジの一撃は躱された。
が、ここからがオリジナルの見せ場だった。
防御されたと分かった瞬間、エイジはその性能にモノを言わせ相手の後ろに回り込む。
そしてすぐに次の一撃を相手の背中に入れる。
がしんっ!
流石にこれには相手も対応できず、エイジの一撃を受けてしまい前のめりにたたらを踏む。
「そこまで! 勝者エイジ!」
その一撃が決まった次の瞬間、イザーガ兄さんが大声で終了を宣言する。
エイジは大喜びする事もなく、元の場所へ戻って木刀を胸の前に掲げて礼をする。
「予定どおりですわね。旧型は確かに速いですわ。しかし新型はそれを上回る反応速度とスピード、そしてあの一撃もエイジはかなり手加減してですわね」
「あれ? さっきの背後からの一撃、エイジって手加減してたの?」
「ええ、力を緩めていなければ旧型は前のめりに倒れていましたわ。そうなるとメンテナンスが大変になりますもの。エイジも少しは分かって来たようですわね」
ミリアリア姉さんはそう言って観測用の水晶を見る。
そこにはオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」の状態が映し出されていた。
「まだまだ駆動用の魔晶石は大丈夫の様ですわ。イザーガ兄様、次行けますわ」
「分かった。それでは次の相手は前へ!」
ミリアリア姉さんにそう言われ、イザーガ兄さんは次の「鋼鉄の鎧騎士」に指示をして模擬戦を続けるのだった。
* * *
「凄いねぇ、流石オリジナルだね!」
「エイジ様が適合者なんだって!」
「いやぁ、伝説のオリジナルの雄姿が見られるとはね!!」
フェンスの外では街の人々がそんな事をささやいている。
予定通りこれならエイジとオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」のうわさは広がるだろう。
「いくら相手がオリジナルとは言え、貴様等ふがいないぞ! それでも栄えあるイザンカの『鋼鉄の鎧騎士』か!? オリジナルが優秀なのは周知。しかしせめて一太刀でも浴びせて見せぬか!! 三機同時にオリジナルの相手をせよ!!」
ここで予定通りイザーガ兄さんは声を張り上げそう「鋼鉄の鎧騎士」たちに命令をする。
それを聞いて三体の「鋼鉄の鎧騎士」が前に出る。
すると途端に見物人たちがざわめく。
「おいおい、いくらオリジナルとは言え、三対一とはな」
「流石に伝説程すごくはないだろう?」
「でもエイジ様が適合者だったんだろ? 『鋼鉄の鎧騎士祭』の時のように移動だけじゃなく、ちゃんとした適合者がいればもしかして!」
見物人たちは口々にそんな事を言っている。
が、これも想定通り。
後はエイジがうまく立ち回ってくれればいいのだが……
『エイジ殿、行きますぞ!!』
『御免!』
『せめて一太刀!!』
三体の「鋼鉄の鎧騎士」は木刀を胸の前に掲げて礼をしてから一斉にエイジのオリジナルに飛び掛かる。
四方から迫るその「鋼鉄の鎧騎士」にエイジは木の盾を構え防御をするが、三体の 攻撃が木の盾に当たった瞬間、その盾が倒れてエイジのオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」の姿が消える。
がががっ!
ガタンっ!
『何!?』
『どこだ!?』
『これは…… 上かっ!?』
エイジは盾に相手の攻撃を集中させ、注意を引いた瞬間上空高くに飛び上がっていた!
そして飛び降りると同時にそのうちの一体を木刀で叩き伏せる。
がんっ!
どばったーンッ!
『マッジュ!』
『オルデガ、次来るぞ!!』
倒された「鋼鉄の鎧騎士」が体制を整える前にエイジは次の相手に斬り込むが、なんと飛び上がってその相手の肩を踏みつけてさらに後ろにいる「鋼鉄の鎧騎士」に木刀を突き付ける。
踏みっ!
『俺を踏み台にしたぁっ!?』
どがっ!
『ぐわぁっ!!』
そして後ろにいた「鋼鉄の鎧騎士」も叩き伏せ、最後の一体に対峙する。
『ここまでとは……しかし、俺も【鋼鉄の鎧騎士】乗りとして意地がある! エイジ殿いざ尋常に勝負!!』
そう言って構えた木刀を横なぎに振るも、エイジのオリジナルはその下をかいくぐり、下から木刀を宙にはね上げる。
ばきんっ!
「そこまで!!」
旧型の手に持つ木刀は宙に舞い、やがて地面へとむなしく落ちて来た。
がた~んッ!
わぁーっ!!
途端に見物人たちから歓声の声が上がる。
それはどれもこれもエイジをたたえ、そしてオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」をたたえるものだった。
「ふう、何とかなりましたわね。しかしエイジのやつ、かなり無理な使い方をしましたわ」
ミリアリア姉さんはそう言って私に水晶を見せる。
そこには各関節の駆動用魔晶石が赤くなってメンテナンスを必要とする状態が映し出されていた。
「あっちゃぁ~。これ総とっかえかな?」
「メンテナンスで大丈夫だと思いますわ。でもやはり新たな駆動系の魔晶石の開発も必要ですわね…… アルム、ブルーゲイルに戻って開発継続ですわ!」
ミリアリア姉さんは勝利を収めたは良いが、ギリギリの状態のオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を見上げるのだった。
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