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第三章:イザンカ王国
3-23:新たな剣
しおりを挟む「やぁ、アルム状況はどうだい?」
ひょっこり工房へやってきたのはシューバッド兄さんだった。
久々の登場……じゃ、なくて。
なんだかんだ言ってシューバッド兄さんはガレント王国の貴族令嬢と縁談が決まって先日正式に婚約発表があったばかりだった。
アマディアス兄さんがイータルモアと一緒になるってことで、もともと話が来ていたガレント王国の姫君との婚姻が成立できず、お鉢が第二王子であるシューバッド兄さんにまわってきたわけだが。
「シューバッド兄さん! よく来てくれたね、もうじき第二ロールの三体が出来上がるよ!!」
あれから約五か月。
なんだかんだ言って第二ロールの三体がもうじき出来上がる。
今回は初期の三体よりさらにブラッシュアップしてオイリングコーティングが標準装
備、なおかつ駆動系魔晶石の交換がしやすいように改良が重ねられている。
というのも、魔晶石に魔術付加という難しい作業がエシュリナーゼ姉さんの手によって可能となったからだ。
実際には私ほど魔力量がないから一日に一個作るのが精一杯だけどそれでも複雑な術式を構築して付与できるとは、わが姉ながら意外だった。
……大抵いっつもわがまま言ってる姉だったから。
「そうかぁ、とうとうできるんだね…… アマディアス兄さんから話は聞いてる?」
「……ドドスが西の森に砦を作った話ですね? あれだけ魔獣が多い森で秘密裏に砦を作り上げるだなんて」
この半年で情勢はいろいろと変わってきた。
特に冒険者の町であるユエバはドドスへの商業キャラバンがいろいろとと難癖をつけられて往来がほぼできなくなっている。
冒険者も基本的にはドドスの街へ行くことが難しくなってはいるが、まとまりのない共和国なのでほかの町や村にはまだいけているようだ。
ただ、入ってくる情報だと街道の関所は基本的にドドス共和国が管理しているので正規のルートでは入国が難しいらしい。
それらはドドスが掲げるイータルモア奪還の大義名分による戦争が近いという風潮が蔓延する結果となっている。
ユエバの町のエディギルド長もドドスのこの行動に意見をしているらしいけど、一向に聞いてもらえないようだ。
おかげで戦のうわさは益々信ぴょう性を上げている。
「先日ジマの国への往来もドドスは禁止したようだね。イータルモアを奪還するのに一番協力するべき国が応じないからと言って」
「ずいぶんな言い回しですね。これ完全に仕掛けてくる気満々じゃないですか?」
こちらももちろん黙ってこの状況を見ているわけではないけど、レッドゲイルのオリジナルにエイジが適合者として現れたという情報を流してでも開戦をする方向へドドスは持って行っている。
「それと、さっきアマディアス兄さんに聞いたけど、西の森で魔獣たちが飼いならされているらしいね」
「魔獣ですか?」
この話は初めて聞いた。
確かにドドスの方にはジーグの民がいて、竜笛まで使って地竜を操る芸当ができる。
でもほかの魔獣も操れるとは。
「そうか、グリフォンの群れ! そういうことか!!」
ジーグの民は黒龍さえも呪えるという呪術を持っているらしいけど、竜族以外にも使えるなら……
「想定以上に雑兵も面倒になりそうだね。ガレント王国もその噂は知っているも、支援するには遠すぎる。シーナ商会も戦争に関しては一切関与しないという体制は変わらないからね。彼らの支援もまずないだろう」
シューバッド兄さんはそう言って苦笑をする。
「僕が会ったこともないガレントの令嬢と婚約したということを発表してでもドドス
はうちに仕掛けてくるだなんて、相当状況が悪いようだね?」
「ドドスってそんなに状況が悪いんですか?」
「うん、すでに言われているけど、ドドスの魔鉱石産出量はこの十年で激減している。南のドワーフの炭鉱でも魔鉱石が採取できていないらしいね。今はむしろウェージム大陸の北方の方が採石量が多いと言われるくらいだ。そうなるとあとは女神神殿なんだけど……」
そう言ってシューバッド兄さんはさらに顔をしかめる。
「女神様への謁見が中止されたんだよ。数年に一度ドドスから出る『鋼の翼』による天界への謁見がね」
「え? それ本当ですか??」
この世界には女神様が実在する。
しかも、数年に一度天界の女神様に招待された偉人はドドスの女神神殿から飛び立つ空飛ぶ船で女神様に謁見できるという栄誉があった。
その謁見が中止された?
「イータルモアはそんなこと言ってなかったじゃないですか?」
「それがね、黒龍もジマの国に戻ってなくて、えーとタルメシアナさんだっけ? 黒龍の娘がずっと留守を預かっているらしいね」
いったいどういう事だろう?
女神様に何かあったのか??
そうなればドドスの存在意義がどんどん薄れて行く。
魔鉱石の世界的産出国で、女神様に唯一会いに行ける手段も謁見が中止されたのでは使いようがない。
国としての価値が激減するということになる。
「だから無理矢理にもうちに仕掛けてくるってことか……」
「まぁねぇ、それにブルーゲイルは新たな産業、魔晶石の再充填なんてことができるようになったから、使い終わったただの石ころが宝石と同じ価値になる。この技術は喉から手が出るほど欲しいだろうね」
シューバッド兄さんはそう言って両手を挙げて肩をすくませる。
ドドスはこの戦争を何が何でも仕掛けてブルーゲイルを落とすつもりだ。
そして最低でも魔晶石の再充填技術を奪うつもりか……
「アマディアス兄さんの見立てだと、唯一目の上のたん瘤となるオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』だけど、国境の砦の守りがもし突破されれば次はユエバの町。そしてそこを占領されることはジマの国との道が遮断されるということ。となればレッドゲイルから増援が出るのを見込んでそのすきにこのブルーゲイルを物量で落とすつもりだろうね。最低でも『鋼鉄の鎧騎士』どうしの決戦にさせて、ブルーゲイルを降伏させ無傷で手に入れたい。僕たち王族は多分残されるだろうけど、代償として魔晶石の再充填技術やその他使えそうなものを差し出せってことになりそうだね」
ドドスの目論見は多分そうなのだろう。
しかし気になるのは女神様の謁見が中止されたってことだ。
後でイータルモアに聞いてみよう。
「ま、とにかく今はこの新型が早く出来上がることを祈るよ。僕はまたアルムとゆっくりお茶がしたいからね」
シューバッド兄さんはそう言ってにっこりと笑う。
ううぅ~イケメンの兄のその笑顔はご褒美です!
私は思わず大きくうなづいて言う。
「まかせてください! この新たな剣がきっと我がイザンカを守り抜くでしょう!!」
私の言葉にシューバッド兄さんはさらに微笑むのだった。
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