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第四章:転移先で
4-21:聖地ユーベルト
しおりを挟む馬車に揺られること数日、私たちはガレント王国の衛星都市、聖地ユーベルトに着いていた。
「うわぁ、すごい!」
それもそのはず、街の規模としては相当な大きさだった。
ベイベイの街はミハイン王国の首都と言うことで、湾の小高いところにお城があって、その城下町の繁華街を過ぎたところ、港に近いところにエルさんたちのシーナ商会の館があった。
ベイベイの街自体もかなりきれいで道などはすべて石畳に整備されていたけど、このユーベルトと言う街はさらにすごい。
石畳はもちろん、街の作り自体が整然としていて、馬車の通る道は大きく開かれていた。
そしてあちらこちらに店が立ち並んでいるけど、雑踏した感じは一切せず整然としている。
そしてなんというか、巡礼者っぽい人も多い。
「着いたわね、今日はここで休んでいくわ。とりあえずユーベルトのうちの支店に向かうわね」
エルさんはそう言ってユーベルトのシーナ商会へと向かわせる。
「あ、あれってもしかして神殿ですか?」
途中、街のはずれに大きな建物があった。
造りからして神殿っぽい。
「そうね、あれが女神神殿よ。一応総本山とされているけど、そもそも女神様自体が天界にいるから便宜上の総本山て感じかしら? たま~に女神様が降臨してありがた~ぃいお話をしてくれるらしいけど、今は絶対に女神様の降臨はないでしょうね」
「そうなんですか? でも女神様ってここで生まれたんでしょ?」
「実際にはここの領主であるハミルトン家で生まれたらしいわね。もう千年以上前の話だけど」
「ハミルトン家?」
もともとは人族だったという女神様。
その出生地がここでそしてその領主の家で生まれたってこと?
特に興味もなくそんなことを考えていたら街のあちらこちらに目立つ看板があった。
「マシンドールのパーツ大特価!」
「一家に一台マシンドール!」
「美少女タイプから魅惑の大人タイプまでより取り見取り!」
「マシンドール? 何それ??」
「ああ、マシンドールね? もともとは国境を守る機械人形だったけど、今は『鋼鉄の鎧騎士』があるから家庭用のお手伝いさん替わりで売られているわ。優秀なんだけど会話はできないのでくっついている羽みたいな耳でその感情表現をするから、それを読み取るのが大変なのよね~」
私の疑問にエルさんが応えてくれた。
しかし、マシンドールだなんて、この世界にそんな機械的なものが……
い、イケナイ。
前世でそう言ったエンジニア的な事やってたから気になっちゃう!
動力源は何?
駆動は何を使ってる?
センサーってどんなもの?
制御系は中央コントローラーに対してサブシステムってどうなってるの?
人型だから最低でも三次元センサーは欲しいし、基礎の歩行なんかは脊髄反応みたいに中央演算する前にサブで反応しないと、とっさの時とかころんじゃうし。
メモリーは?
機械だと記憶媒体はメモリー次第で人間のそれより記憶できるし、基本一度覚えたことは機械なら忘れることはないはず。
医療応用からだって脳波と筋肉に伝わる微小電流で義足とか義手なんかもある程度動かせるはずだから、そういったものも反映できるし。
「み、見てみたい……」
「アルム様?」
思わずそう口ずさんでしまったのをマリーに聞かれる。
するとマリーは怪訝そうな顔をして私に言う。
「だめです。アルム様の初めては私がお相手すると決めてますから、マシンドールなどにアルム様の初めてを取られてしまうなんてもってのほかです!」
「は? 初めて??」
「ああ、最近はそっち系のマシンドールも多いわね。あそこに立っている女の子、夜用のマシンドールよ」
エルさんもちょっと顔を赤らませてそう言っている。
私は首をかしげてから外を見ると、フリフリのメイド服を着たかわいらしい女の子が呆然と立っていた。
見た目は人そのものだけど、生気が感じられない。
「って、あれってマシンドールなんですか!?」
「物好きが外観を人そっくりに樹液とかでコーティングしてるのよ。まぁ、流石によく見れば人ではないのは分かるけど、遠目には最近は分からないわね」
エルさんはあきれたようにそう言う。
いや、それはそれでもすごいんですけど。
私が興味津々で見ているとエルさんはため息を吐きながら言う。
「君にはまだ早い。まぁ、お手伝い用のマシンドールならユーベルト支部にも外観は人じゃないのがいるわよ?」
「本当ですか!? それ見たいです!! どうやって動いてるのかとか、どんな制御しているのかとか!!」
「あ、アルム様が初めて女性型にご興味を持たれてしまった…… しかもマシンドールだなんて…… くっ、なぜか女として敗北感を感じてしまいます」
私が目をらんらんと輝かせてエルさんにそう言っていると、向こうでマリーが何かぼそぼそ言っているのだった。
* * * * *
ユーベルトのシーナ商会はまるで前世のデパートの様だった。
大通りに面した一等地にショーウィンドウがあって、豪華な品々が展示されている。
店について、正面から入ると一階は女性の化粧品などが売っていた。
「なんか、あっちの世界のデパートと同じ感じだなぁ……」
ぽつりとそういう私。
あちらの世界でも一階は女性が入りやすく買い物をしやすい化粧品や宝石などの装飾品が多い。
エルさんはそのままずかずかと奥に進み店員たちがお辞儀する中、とある扉の前につく。
すると、一人の秘書のような女性が深々と頭を下げていた。
「エル様、よくお越しになられました。どうぞこちらへ」
そう言って扉を開くと狭い小さな部屋だった。
エルさんは頷いてその中に入る。
私もつられて中に入るけど、マリーやカルミナさん、アビスは怪訝な顔をしている。
「なんニャ、この狭い部屋はニャ?」
「これは……」
「くっくっくっく、魔力を感じますね」
最後に秘書みたいな人が乗り込むと扉が勝手に閉まった。
そしてわずかな揺れを感じるとなんか体に荷重がかかったような感じがする。
これって……
「エレベーター!?」
「ん? 君はこれが何だか知ってるの? これは階上へ人を釣り上げて移動させる装置よ。階段を上り下りしないで済む便利なものよ」
いやいやいや、ここってどうなってるの?
まさしくデパートじゃん!
そう思っていたらこのエレベーターは一番上の階で止まる。
そして扉が開くとそこは屋外だった。
いや、屋上なのだろう。
空が見えるけど、扉の先には中庭みたいになっていて、その先に屋敷がある。
「どうぞこちらへ」
そう言って秘書みたいなその人はその屋敷に案内する。
すると扉が勝手に開き、メイドさんたちがずらりと並んでいた。
「エル様よくおいでくださいました」
一番奥にはドレスをまとった美しい女性がいた。
しかしその顔はどこかで見たような……
「厄介になるわね、イプシル」
「こちらにはいかほど滞在していただけるのですか?」
「明日には出発したいわ。今日はここで休ませてもらうわね」
「承知いたしました。お連れの皆さんもどうぞごゆるりとされてください」
そう言って彼女は深々とお辞儀をする。
その時私は思い出した。
ベイベイの街に集まった支店長たちの中に彼女の顔があったことを。
「あ、ベイベイの支店長会議にいた人……」
「あら、覚えていてくださったのですね? 殿方に覚えていただけるなんて光栄ですわ」
そう言って彼女は貴族がするようにドレスの裾を持って優雅にひざを折り挨拶をする。
「ふーんアルム君って意外と女心をつかむのがうまいわね?」
「ふふふふ、こんなにお小さいのに。もう少し大人になっていればぜひ一緒にお食事をしたいところですね」
エルさんとイプシルさんは笑いながらそう言う。
すすすぅ
あの、マリーさんなんで私と彼女たちの前に割って入るのですか??
「イザンカ王国第三王子アルムエイド様です、この度はエル殿のご厚意に甘えさせていただきます」
マリーはそう言ってイプシルさんを睨む。
「ふふふふ、大丈夫ですよ。私はアルムエイド様に何かすることはありませんよ。むしろ私はエル様の方が♡」
「だー! 私にはそっちの趣味はないの!! まったく、ママやお母さんじゃあるまし!」
あの、そういったプライベートなことはあまり公にしない方が……
ほほを赤らませてエルさんを見るイプシルさんと嫌そうにそれをあしらうエルさん。
うん、王族や貴族、お金持ちは変態が多いって聞くけど本当だわね。
ピコッ?
と、屋敷の奥に気配がしてそちらを見ると、全身鋼の女性型の物体があった。
それは耳の横に羽みたいなものが付いていて、ぴこぴこと動かしている。
「あ、あれは……」
「ああ、あれがアルム君が気になっていたマシンドールよ。えーと確かエルピーだっけ?」
ピコッ!
エルさんがそう言うとそのマシンドールは嬉しそうに耳をぴこぴこさせながら両手を広げて飛行機をマネするみたいにこっちへ来る。
女性型と言っても私と同じくらいの子供の体形。
「す、すごい! こんなに小さなボディーにこれだけの機構! 動きもまるで人間みたいになめらか!! いったいどうなってるんですか!?」
ぺたぺたぺた!
ぴっ、ぴこぴこピコッ!!
近寄ってきたので思わずぺたぺたと触りまくる。
胸部とかお尻とか駆動域が女性型なのは、股関節とかは女性型の方が可動範囲が広いからか?
少し胸が盛り上がっているのは内部機構が収まりきらないからか??
ビコビコビコぉッ/////////!!!!
ぺちーんっ!
「えッ!?」
興味本位で触りまくっていたら、いきなりマシンドールにほほを叩かれた。
「アルム様!」
「あーあ、アルム君て小さい割に容赦ないわね? いくらマシンドールでも女の子のお尻や胸をいきなり触れば怒られるわよ?」
見るとそのマシンドール、エルピーと呼ばれたそれはエルさんに抱き着いて泣いているかのように顔をうずめて耳をぴこぴこさせていた。
「え、ええぇとぉ……」
「アルム様がマシンドールにご興味を持たれた!? 生身の女では満足いかないのですか!?」
だきっ!
呆然としていた私にマリーが抱き着く。
「アルム様、やわらかい方がぜっていにいいですよ、ほら私の胸ならいくらでもお使いいただいて構いませんので!!」
「ぷはっ! マ、マリー!?」
マリーはその大きな胸に私の顔を押し付け抱きしめる。
「ほんとアルム君て女性にもてるわね?」
「い、いや、そんなつもりは。ってマリー苦しい! 放してぇ!!」
「アルム様ぁーっ!!」
ビコビコビコぉ!!
「はいはい、これじゃもうお嫁にイケナイって?」
私を抱きしめて離さないマリー。
エルさんに抱き着いて泣きづづけて何かを訴えているマシンドールのエルピー。
すすすとエルさんに寄り添うイプシルさん。
それを顔に手を当て離すエルさん。
どんどんカオスになってゆく。
「ぼ、僕はそんなつもりじゃないんだぁーッ!」
こうしてここでも私の悲鳴がこだまするのだった。
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