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第五章:魔法学園
5-2:現場検証
しおりを挟む「よくぞ参られました、タフト王子」
そう言って出迎えてくれたのはこの砦を守る警備隊長だった。
「やぁ、スパルトス隊長お久しぶり」
タフトはそう言って馬車の前で出迎えてくれた隊長にあいさつをする。
後ろには警備隊の人たちが直立不動で私たちの来訪を歓迎してくれている。
と、スパルトス隊長と呼ばれた人はタフトの後ろのエルさんを目にしてすぐさま正式な挨拶をする。
「エル様、よくぞおいでくださいました。タフト王子同様歓迎いたしますぞ」
「スパルトス、久しぶりね。で、大変だったって聞いたけど詳しく話を聞かせてくれる?」
エルさんはつまらなさそうにスパルトス隊長のあいさつを受けてから、いきなり本題を言い始めた。
「相変わらずですな、とりあえずここではなんですので応接間にお越しください。それとそちらの方々が……」
「あ、どうも初めまして。アルムエイドと申します」
私はスパルトス隊長に顔を向けられて挨拶をする。
するとスパルトス隊長は貴族式の胸に手を当て腰の後ろに手を回し軽く頭を下げながら挨拶を返してくれる。
「お忍びという事と聞いております。ようこそ我らが砦へ」」
そう挨拶を返してくれてから「こちらへどうぞ」と言って私たちを応接間へと案内してくれるのだった。
* * *
「それで、本当にエルフだったの?」
出されたお茶をすすりながらエルさんはスパルトス隊長にそう切り出す。
するとスパルトス隊長は苦笑を浮かべながら言う。
「間違いありません。私もそれを目撃してます。相手は小柄なエルフの女性でした」
「エルフの女性??」
エルさんは飲むお茶の手を止めて聞き返す。
「はい、見た目は少女も少女、背丈も百五十センチあるかないかという小柄な体格。顔には目元を隠す仮面をしていたので正体は分かりませんが、エルフ特有の長い耳がはっきりと見て取れました」
スパルトス隊長はそう言ってから大きなため息を吐いてイスに深く座りなおす。
「完敗でしたね。たったの一撃で我がガレント王国の『鋼鉄の鎧騎士』が倒されるとは……」
「なんでそんなことになったのよ?」
「はい、ことの始まりは……」
スパルトス隊長はそう言いながら話し始めるのだった。
*
そもそもそのエルフの少女は「鋼鉄の鎧騎士」の訓練中にいきなり現れたと言う。
敷地内の部外者が勝手に入れないところにいつの間にかいたそうだ。
それを見つけた隊員が声をかけ、練習場から追い出そうとした時だった。
その小柄なエルフの少女はその隊員をあっさりと投げ飛ばした。
そして声高々に宣言をする。
「あたしは悪の組織、じゅ…… なんだったけ? まぁいいや。とにかく悪者だよ! ガレント王国はあたしたちの邪魔をしちゃダメなんだよ! いっくぞぉっ! 『あたしは最強』!!」
彼女はそう宣言していきなり訓練中の「鋼鉄の鎧騎士」にとびかかり、けりを入れて一体目を吹き飛ばした。
それに驚いた他の「鋼鉄の鎧騎士」がその少女を取り押さえようとしたら、エルフの少女はとびかかり「必殺ぱーんち!」とか叫びながらこぶし一発で「鋼鉄の鎧騎士」を殴り飛ばし再起不能にしたのだった。
そのあまりの破壊力に周りの「鋼鉄の鎧騎士」たちも警戒して武器を持って取り囲んだ頃に、またまた現れた金髪の目元をマスクで隠した少女が現れてそのエルフの少女ともども消えたそうだ。
「金髪の魔導士ってこと?」
「はい、年のころは成人したくらいに見えましたが、エルフの少女同様マスクをしていたので顔は分からず、最後に『警告しますわ、我らの活動の邪魔をするなら容赦しませんわよ』とだけ言って消えたのです……」
エルさんはそれらを聞いてうなっている。
「うーん、たぶん間違いなく秘密結社ジュメルだと思うんだけど…… なんだろう、このデジャブ―?」
「え? エルさんその人と会ったことがあるんですか?」
うなるエルさんに思わず私はそう聞いてしまった。
するとエルさんは手を目の前でパタパタとふって否定する。
「そんな変な知り合いなんていないって。ただ、どっかで聞いたようなセリフとか雰囲気と言うか…… でもまぁ、自ら悪の組織って断言するならそれは私の敵よ! この正義の味方であるエル様に喧嘩を売るとはいい度胸だわ!」
いや、別にエルさんに喧嘩売ってるわけじゃないと思うけど……
「しかし、我らガレント王国に邪魔をするなとの宣言は、我が国を敵に回わすという事だね? 我が国の戦力を知っての事なのだろうか?」
タフトは顎に指をあてながらそう言うも、スパルトス隊長はぐっとこぶしを握りながら言う。
「確かにあのエルフの少女のような者が何人もいたら脅威です…… 生身の体で『鋼鉄の鎧騎士』を倒すだなど、前代未聞ですぞ」
「やり方次第で『鋼鉄の鎧騎士』を倒す事くらいできるニャ」
「ですね、ガレント王国のとはやったことがありませんが今なら負ける気はしません」
「くーっくっくっくっくっくっ、以前は後れを取りましたが、我が主の魔力さえあれば今度は」
話を聞いていた三人はいきなりとんでもないことを言う。
それを聞いたスパルトス隊長は怪訝な表情をする。
「なんでもないです! みんな、いくら強いからって変なこと言わないでよ!」
私はあわてて三人を黙らせようとするも、三人は平然と言い放つ。
「以前ホリゾンでもイザンカでも『鋼鉄の鎧騎士』を倒したことあるニャ♪」
「まぁ、最初は後れを取りましたが今では負ける気はしませんね」
「くーっくっくっくっくっ、我が主の命があれば何体でも葬って御覧にいれましょう」
ビキッ!
三人の言葉にスパルトス隊長はこめかみに怒マークを浮かべる。
「ほほう、アルムエイド殿は頼もしい従者をお抱えのようだ。しかし我がガレント王国の『鋼鉄の鎧騎士』は他国のそれより強力なのですぞ!」
「ちょーっと待ちなさい。アルム君もこいつらに余計な事させないでね? 一応今は私が保護者なんだから。それよりその再起不能になったと言う『鋼鉄の鎧騎士』を見せてよ。それとも修理終わっちゃった?」
雲行きが怪しくなりそうなのを、エルさんが止めて倒された鋼鉄の鎧騎士を見たいと言い出した。
しかしスパルトス隊長はまだ何か言いたそうだったのをタフトが制して、先にエルさんの要望を聞こうと言い出した。
スパルトス隊長は不満が残ってはいたものの、エルさんとタフトに言われ渋々私たちを倒されたと言う「鋼鉄の鎧騎士」に元へ連れて行くのだった。
*
「これは……」
エルさんは倉庫の中に座り込んでいる「鋼鉄の鎧騎士」を見ながら言葉を漏らす。
それもそのはず、胸の所に小さなこぶしの形の凹みがあり、そこから蜘蛛の巣を張ったように細かいひび割れが伸びていた。
誰が見てもそのダメージでこの「鋼鉄の鎧騎士」はもう動かないのではないかと思われる感じだった。
「ふむ、これはまたやられたもんだね。素体にまでダメージが行っている。これでは修理のしようがないね……連結型魔晶石核の回収は?」
「はい…… 基本となる素体までダメージが行っているので、動力源は切り離してあります。ただいま記憶型魔晶石も回収してその解析をさせております」
スパルトス隊長はタフトの質問に悔しそうに答えながらこぶしを握る。
しかしそんなスパルトス隊長をよそに、エルさんは瞳と体を金色に輝かせながら鋼鉄の鎧騎士を見ていた。
「これって、すさまじい力の痕跡が残ってるわね…… まるでお母さんが手を出したかのような。こぶしの所から体中にその衝撃が伝わっているけど、マナ自体をこの世界からずらしたような衝撃がかかっていたみたい。確かにこれじゃぁ『鋼鉄の鎧騎士』でも耐えられないわ」
「エル姉様、それはいったいどういう事なんですか?」
「本気の私とタメ張れるってことよ」
エルさんがそう言うと、タフトもスパルトス隊長思わずエルさんを見て言う。
「エル姉様と渡り合えるだなんて……」
「エル様が本気を出されると言う程とは……」
それほど驚くようなことなのだろうか?
しかしエルさんは瞳の色や体の輝きを止めて言う。
「まさしく好敵手ね! 見てなさいその悪の組織とやら、この私が成敗して見せるわ!!」
エルさんは腰に手を当て明後日の方向にびしっと指さしてそう言い放つのだった。
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