149 / 150
第五章:魔法学園
5-10:学園
しおりを挟むエルさんと学園長が復活するのに時間がかかるという事で、私たちは食事に来ていた。
「おや? 話は終わったのかな?」
「あ、ロディマスさん。エルさんと学園長、ちょっと時間が必要みたいなのでおいとまして先に食事をしたくて」
「なるほど。寮の方の食事は食堂でしてもらうが、朝と夕方のみの提供なんでね。昼は学園の共同の食堂を使ってくれたまえ」
そう言って共同食堂の場所を教えてもらう。
私たちはとりあえずそこへ行って食事をすることになった。
*
「しかし、エル姉様の話が本当だとすると、あのお方が悪の組織に入ったことになると言うわけだな」
「あのお方って、女神様の事?」
食堂について、料理はマリーたちに任せて私たちは席に着く。
たまたま空いていたバルコニーが良い場所だったので、みんなで座ることも考えてそこに腰を下ろし、タフトとそんな話をしていたら……
「おいこらそこのガキども、その場所はイラマ様の場所だぞ?」
多分上級生。
年の頃十五、六歳くらいのちょっとやんちゃっぽい学生がそう因縁をつけてくる。
「すまないが、僕たちがこの場所を使うので他をあたってくれ」
「なんだとぉっ!? お前ら、イラマ様に喧嘩売るってのか?」
タフトが冷静にそう答えるとこの上級生はこめかみに血管を浮かべて睨んでくる。
しかしタフトはここでひるむことなく正論を言い放つ。
「先ほど入り口で確認もしたが、この食堂は特に席の使用について制限はないと聞いているが?」
「うるせぇッ! ここはスィーフ王国が第一王女、イラマ=コメラ・スィーフ様がいっつもお使いになる場所だ! 新参者のガキどもはここの決まりってモノをわきまえてもらおうか!!」
そう言ってタフトに手を伸ばそうとすると、その手をがしっとつかむ人がいる。
がしっ!
「魔法学園ボヘーミャは貴族王族も平民も平等で魔道を学べるのじゃなかったのかニャ?」
「なんだてめぇは!? ……獣人!?」
そのやんちゃな上級生は腕をつかんだ主を見て驚く。
カルミナさんはニカリと笑うも、その視線がカルミナさんの広く開いた胸元に行って、少し赤くなっているのを私は見逃さない!
「その辺でやめておきなさい、ロバード。そちらの少年、あなたガレント王国のタフト王子ではないかしら?」
涼やかな声がして、そちらを見ればまさしくお嬢様している金髪の美女がいた。
長い髪がなぜか立てロール。
深い緑の瞳はどことなくエルさんのようにも見える。
と言うか、これで耳が長ければエルフと見間違う美貌だ。
そんな彼女は扇子をぱちんと閉じて、タフトに言う。
「配下の者が失礼をしましたわね。タフト王子、席にはまだ余裕があるようですからご一緒しても構わないかしら?」
「あなたが噂のイラマ姫ですか? 噂にたがわぬお美しさですね、お初にお目にかかります、ガレント王国タフト=ルド・シーナ・ガレントです」
そう言ってタフトは立ち上がり貴族式の礼をする。
「改めて、イラマ=コメラ・スィーフです。同席してもいいかしら?」
「ええ、もちろんですとも」
タフトはそう言ってにっこりと笑う。
その頃にはカルミナさんもやんちゃな上級生の腕から手を放している。
うん、危ない危ない。
これらの一連があった間に私はしっかりマリーとアビスを止めている。
マリーはどこからか槍を引っ張り出そうとするし、アビスは危ない笑いをして頭の周りに黒い雷をバチバチとさえ始めていた。
「ありがとう、タフト王子。時にそちらのかわいらしいお友達は誰かしら?」
イラマさんはそう言ってパッと扇子を口元に広げる。
その瞬間、私の背筋に何故か悪寒が走る。
「彼は…… そうですね、僕の親友ですね。アルムエイド君です」
しかしタフトは朗らかにそう私を紹介する。
「アルム……エイド…… はて、どこかで聞いたような名前かしら? アルムエイド君、初めましてイラマ=コメラ・スィーフです。私、君のようなかわいらしい男の子は好きですわよ」
そうにっこりと笑うも、なぜかその瞳の奥には何となく知っている怪しい輝きがある!
「あ、アルムエイドです……よ、よろしく」
そう言って私も簡素な貴族式のあいさつをする。
それを見てイラマさんはさらに目の奥に怪しい光をともす。
ぞわわわわっ!
な、何だろうこの感じは?
よく知っている感覚。
しかし、うまく表現ができない。
「イラマ様、いいんですかい?」
「ロバード、あなたもバルセロナ伯爵家の嫡男なのですよ? むやみに生徒たちを威嚇するのはやめなさい」
「そうだな、ロバードもイラマ様の護衛として余計な波風は立てるべきではないだろう?」
さらに後ろから低めのイケボが聞こえてみれば筋肉が隆々とした、しかし決して筋肉ダルマでない細マッチョの御仁がいる。
銀髪の短髪で、武闘派のようにも見えるたたずまいだが、かなりのイケメンだ♡
「ちっ、しかしロンメル、イラマ様が軽んじられるのは我慢がならねぇぜ!」
「落ち着け、相手はガレント王国の王子だ。それに……アルムエイドの名はイザンカの失踪した王子と同じだ。あの王子は若干十歳で『魔法王ガーベルの再来』まで言われた天才らしいがな」
そう言ってその銀髪のイケメンは私を見る。
するとイラマさんもぱちんと扇子を閉じて私を見てにやりと笑う。
「なるほど、それは余計に仲良くなりたいですわね。アルムエイド君」
ぞわわわわっ!
私は何故かまた背筋に悪寒が走るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる