アルム~アラ40女子がいきなり異世界の第三王子に転生して無意識に無双してプチハーレム状態なんだけど、私はBL要素が見たいの!!~

さいとう みさき

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第五章:魔法学園

5-9:エリリア

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「話を総合するとその人物は間違いなくルラだね?」


 声のした方を見ると、十三、四歳くらいの大きな眼鏡をかけた少女がいた。
 彼女はすいっと学園長の所まで来て言う。

「過去の事例を調べたけど、『女神の杖』というアイテムがその昔あって、それが精霊力を押さえた事例が見つかったね。ちょうど千四百年くらい前、ジマの国が復活するころだね」

 彼女はそう言いながら一冊の本を閉じる。
 学園長は錆付いた機械人形のような動作で、ぎぎぎぎぃ~っとその少女を見る。

「エ、エリリア、その、やはり『鋼鉄の鎧騎士』を倒したエルフの少女とは……」

「間違いないだろう、ルラだね。そもそも呪言である『あたしは最強』などというのを使えるのはチートスキルもちのルラくらいだろう?」

 エリリアと呼ばれた彼女はそう言ってメガネのずれを直す。
 するとエルさんも汗をびっちりかきながら彼女に聞く。

「ル、ルラ姉さんが何でガレントの『鋼鉄の鎧騎士』を手にかけるのよ!?」

「さぁ、そこまでは分からないけど、そんなことができる人物は限られるだろう?」

 彼女はそう涼やかに言う。
 対して学園長とエルさんは滝のような汗を流している。


「ど、どうしましょう……」

「い、いや、だってルラ姉さんはそもそもママについて仕事を…… ちょっと待って。ママは今お母さんと一緒に変な宗教に入っているわけよね? リル姉さんやルラ姉さんもママについて仕事しているってことは……」


 学園長とエルさんは顔を見合わせ今度は青くなる。


「まぁ、当然エルハイミたちもかかわっているだろうね。という事は、僕たちは最大の敵を作ったことになるね」


「いやいやいや! なんで? ママもお母さんも安定した世界を望んでいるってのに、なんで悪の組織なんかに手を貸すのよ!?」

「……エルハイミたちがその怪しい宗教に入教したと言うのは、つまりジュメルという事になるのですね」


 エルさんも学園長もがっくりと膝をついて落ち込んでいる。


「エル姉様、いったいどういう事ですか?」

「まぁ、確定ではないがほとんど合っているだろう。僕から言おうか?」

 タフトが話が見えず怪訝そうな顔をする。
 するとエリリアという少女はメガネのずれを直しながらこちらを見てそう言う。


「えっと、お願いします。ぼくはアルムエイド。こちはタフト」

「エリリアだ。君たちがイザンカとガレントの王子様か。ふむ、なかなかの魔力量だね。さて、この二人はしばらくダメだろうから僕から確定でない、しかし限りなく事実に近いだろう想定の話をしよう」

 そう言って勝手に自分でお茶を入れて空いてるソファーに彼女は座るのだった。


 *


 彼女はエリリア。
 私たちを一応信用して正体をばらしてくれた。

 彼女は古い女神様の分身で、「知識の塔」の管理者であり、カギだそうだ。
 知恵の女神様の分身というのがぴんと来ないけど、とにかく今はこの学園に陣取っているそうな。

 さて、確定ではないけど、限りなく事実に近いだろう想定の話はこうだった。


 まず、秘密結社ジュメルは前にも聞いたけど古い戦の女神ジュリ様から派生した、この世界を滅ぼそうとする自滅願望を持つ連中が元となっていたとか。
 いろいろな経緯があってその歴史は有史歴初頭から存在する連中らしく、破滅主義はいつの時代にもはびこって、彼ら自体が消えることはなかったらしい。

 そんな秘密結社ジュメルを倒しても次から次へと生き残りが湧いて出て、再び力をためて使えるようになるたびに現在の女神様に抵抗してきたとか。
 現在の女神様も人知れずジュメルには対抗してきたらしいけど、先ほどの話通りいくら倒してもイタチの追いかけっこらしい。

 そこで方向転換をしたという事だ。
 つまり、自分たちがその宗教に入って中から改革して秘密結社ジュメルの解体、もしくは更生をはかるという事だ。


「いやちょと待ってください。敵対していそうな秘密結社に女神様が自ら入信ってどういう事なんです!?」

 普通に考えれば、絶大な力を持っているはずの女神様が自らそんな訳の分からない宗教に入るなんてありえない。
 しかし、今までの状況を分析するに、エルさんも知っているみたいな学園長の娘さんというエルフの少女が敵対している秘密結社ジュメルにいるのであれば、エルさんの両親が訳の分からない宗教に入信したって言うなら、これらの示す結論は間違いなく女神様一行が秘密結社ジュメルに入っているという事になる。


「ママぁ~、お母さぁ~ん、いったい何やってるのよ~っ!!」

「う、うちの子が不良になってしまった……いったいどこでどう教育を間違えてしまったのでしょう…… はっ!? まさかリルまでも!!!? ど、どうしましょう?? そ、そうだ、マーヤ、マーヤにも相談しなければ!!」


 取り乱すエルさんと学園長。
 なんか見てて面白いんだけど、それらが事実となればどうしても聞かなければならないことがある。


「時にエリリアさん、学園長って女性で見たところかなりお若いですが出産経験があるのですか? それにそのガレントの『鋼鉄の鎧騎士』を一発で殴り飛ばしたのはエルフの少女ですよね? 学園長の娘さんらしいですけど、なぜエルフなのですか? ハーフエルフでなくて??」

「ああ、そこからか。リルとルラは義理の娘だ。生みの親はエルフの里にいる。ただ、あの二人はチートスキルもちの異世界からの転生者だ」


「異世界転生者!?」


 驚いた。
 私以外にも異世界からの転生者がいたのだ。
 いや、うすうすは感じていたが、学園長が異世界からの召喚者って聞いていたから、もしかしてとは思ったけど。
 しかしそうするとあの駄女神、かなりやらかしていることとなるな……


「アルム様、いったん戻られた方が良いのではないでしょうか?」

「え? なんで??」

「学園長とエル殿がこの様子では立ち直るのに時間が必要かと……」


 マリーにそう言われ、もう一度学園長とエルさんを見ると何か真剣な顔で自分の世界に入り込んでぶつぶつと言っている。

 うん、こりゃダメだ。

 私はタフトやみんなに振り返り、エリリアさんを見てから言う。



「お腹すいたからごはんにしてからにしよう」



 みんなは私のその言葉にただ頷くだけだったのだ。   

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