反逆の銃口と、侵食の茨

遠月 詩葉

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アムの人生

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時は少し遡り。イーヴァと別れた直後。
アムは、楽園の外にいた。

「…どうだった?」
「ダメだね。救いようがないや。みんな自分たちだけが正しいって信じ込んでる。」

黒ローブの男に毒を吐きながら、身を清めるために服を脱ぎ始める。
顕になった身体は、
ーーそう、アムは男である。いわゆる、女装男子というやつだ。

「じゃあ、今回も…。」
「いや。一人だけ。…どうしても助けたい子がいるんだ。」

黒ローブの声を遮って、アムは本題を切り出した。冷たい川の水に浸かりながら、イーヴァの泣き顔を思い浮かべる。

「…それは、本当に助けるだけに値する奴なのか?」

にわかには信じ難い。そう主張するが如く、否定的な疑問を投げかける。

「なに?僕に指図する気?」
「いや…そういう訳では…。」
「お前も含め、僕以外のほとんどは魔力をろくに扱えない。僕がやらなきゃ、計画に支障が出ると思うけど?」

楽園を追放…堕天した人間たちは、天使候補としての力を持っていない奴が大半だ。
何故ならその欠陥こそが、堕天するに値する“罪”として裁かれるからである。

「しかし!最奥層に潜入するには、慎重に事を運ばなければ…!」
「知ってる。とはいえ、僕達には寿命がある。次の層に紛れ込むには、あと数年必要だ。」

アムもまた、イーヴァと同じように“優等生”と持て囃されていた時期がある。
当時の彼は、貴公子のような短パンとシャツを身にまとい、白銀に輝く髪をしていた。
しかし、なんと奇妙な運命か。彼は目覚めてしまったのである。
ーーロリータという女装に。

『お兄ちゃん!服破れちゃった…。』
『はあ?』

アムには妹がいる。見るに堪えないお転婆具合だった。
その日も、そこらを駆けずり回っていた拍子に服がビリビリに破けてしまっていた。
服の支給日は、当分先である。

『…仕方ないな。ちょっと貸して。』

針と糸と布。それらを駆使して出来上がるのが、衣類だ。偶然見た本に、そんな事が書いてあったのを思い出す。さっそく材料を集め、妹の服の補修に努めた。

『あれ…おかしいな…。』

しかし、そんなすぐに出来れば苦労はしない。見たことのないヘンテコな衣装へと変貌してしまった。

『ぷっ!お兄ちゃんなにそれ!あはは!』
『笑うな!』

負けず嫌いだった彼は、何度も何度も練習を重ねるうちに…遂にそれは完成する。フリフリの手作りロリータが。
初めてまともな服が出来た喜びで暴走していたのだろう。興味本位で、試着してしまった。そして鏡の前に立ち、雷が走る。

『…可愛い。』

こうして、ロリータ系女装男子が爆誕した。

ーーそして。同時に彼はこの時、2つの“罪”を犯していたのだ。
ひとつ。何かを創造するのは、神々だけに与えられた特権である。
ひとつ。持って生まれた性別を“冒涜”する行為。

己の力で新たなファッションを生み出し、女装に目覚めたがために、彼は堕天したのだ。
結果、白銀の髪は真っ黒に染まり、楽園を追放されてしまう。
ーー寿命という足枷をはめられて。
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