死を視る俺と異能力者達

青薔薇

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珍しく可愛い先輩と焔の悪魔

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突然だが便利な時代になったものだ、と俺は思う。
というのも、調べものをするとき昔は図書館などを利用していたと聞く。
だが今はインターネットでいつでもどこでも調べることができる。
何故今このような話をしたのかというと、ただ単純に調べものをしているからだ。
そして何故調べものをしているのかというと…。



これは数日前、夏ゆえに蒸し暑い部屋の中で一人カップアイスを頬張っていると、
テロリン♪
「ん?《特務》か…容疑者は東導 銀路とうどう  ぎんじ三十一歳。能力は発火能力。元…警視庁本部の刑事っ!?」
この歳で退職ということは何かあったのだろうか?
何かがあるような…極東政府が一枚噛んでいるとか?
「とりあえず調べるに尽くすか…」
俺はそう呟くとアイスにスプーンを伸ばす。
「あっ!溶けてるっ!」
また冷凍庫行きだなこれは…。



カタカタカタ…
「火災事件現場に居合わせ子どもを救出した際に左半身を大火傷、右腕を切断…そのわずか半年後やむを得ず退職…」
すると、
ピー
アクセス権限不足
「チッ…まさか本当に何かあるとはな…」
パタン
とりあえず権限不足ならば動くことができない。
あくまでも一般回線では、だ。

俺は足早に近くのカフェに立ち寄った。
「ふぅ、涼しい」
これこそ科学の進歩の結晶とも言えるだろう。
このカフェはパフェが美味しいので、甘い物好きな俺にとっては天国みたいなところだ。
何故ここに来たのかというと、一種のハッキングをするためだ。
というのもフリーの回線を使うことで自分が特定されにくい。
と、まぁそんな理由もあるがただ単純に家にずっとこもっていたら冷房に使われる光熱費がばかにならない、それが一番の理由だ。
早速パソコンを立ち上げる。
カタカタカタ…よし、侵入成功。
あとは東導のデータがどこにあるかだが…
「おや?紗那君ではないですか」
ビビクンッ!
「も、萌木先輩っ!?」
「あの…私に話しかけられる度にその反応やめてくれませんか?私が本当にお化けみたいじゃないですか」
「あ、はい…すいません」
今回は先輩が思っているようなことではなく、ダメとわかっていることをやろうとしているときにいきなり話しかけられたからビックリしたのだ。本当だよ?
「萌木先輩は何をしにここに?」
すると萌木先輩は少しモジモジしながら言う。
「その…ぱ、パフェというものが食べてみたくてですね…ここのパフェが美味しいと聞きましたので…」
パフェ?もしかして昼間のパフェ特集でも見たのかな?
「あのーもしかして食べたことがない、とか?」
すると萌木先輩が頬を朱色に染めた。
「は、はい…」
何だこの人、普段は毒舌で人の弱みを常に握り、人の不幸が私にとって一番の幸せ、とか言ってそうな人なのに、何か今日はすごく可愛い。
「あの、もし良かったら俺のやつあげましょうか?」
「いいえ、他人の施しは受けたくはないので」
こういうところとか見てると、やっぱりお嬢様なんだなと思う。真白ちゃんもたまには見習った方がいいんじゃないか?
「うーん、じゃあこいうのはどうですか?ここはカップル割引というものがあるんですよ。俺今月のお小遣いがちょっと厳しいので…人助けだと思って、ね?」
そう言うと萌木先輩の顔が心なしか明るくなった。
「そ、そういうことなら仕方がないですね」
まったく…素直じゃないなこの人は。

「そういえば紗那君こそ何をしに?」
美味しそうにパフェを頬張りながら萌木先輩が俺に問いかける。
「あ、えと…俺もパフェを食べに」
「へー、あっそ」
どうでも良さそうに言いおって…聞いといてそれはないだろう。
「あ、それと…萌木先輩口元にクリームがついて可愛い感じになってますよ?」
「なっ!?い、いつも可愛いんです」
頬を赤く染め、口元を拭いながら言う。いや自分で言うかよ普通…。
俺はその後比較的幸せな時間を過ごした。



「えぇと、こうでこうで…」
あの変装にまだいまいち慣れない俺は準備に一苦労していた。そう、《特務》が始まるのだ。
「よし」
さぁ、今日もお仕事だ。

結局東導 銀路についての情報はいまいち掴めなかった。
それにしてもやはり気になる今回の件。
とりあえず今は《特務》に集中しなければな…。
東導は異能力は発火能力だと記してあった。
発火能力はそれほどレアな異能力ではないので何回か戦ったことがある。
発火能力は空中に炎を発生させる能力。一見恐ろしい力に聞こえるが、見極めてかわせばたいして脅威ではない。
例の如く廃ビルの屋上。
「あんたが東導 銀路か?」
「ああそうだ。君は?例の能力者狩りかい?」
東導は世界の全てが憎悪の対象かのような目で俺を睨み付ける。
「あぁそうだ。てことはもうわかるな?」
すると東導はニヤリと口の端を吊り上げる。
「いつでも来い。だが僕は負けるつもりはないよ」
「あんたの能力を消去する」
いつもの俺の決め台詞(仮)、決まった…。
俺は太ももに巻き付けた川の鞘からナイフを抜く。
すると東導は先がない右肩に左手を置く。
「燃えろ燃えろ燃えろ。地を焦がせ我が焔。天を焼き尽くせ我が焔。世を灰塵に還せ我が焔」
詠唱えいしょうをするとは珍しい。
だが俺はその瞬間異様な光景を目の当たりにする。
東導は右肩から左手をゆっくり離す。するとそこから焔が現れる、そこまでは良かったのだ。
しかしその焔があろことか腕の形を形成したのだ。
そして顔半分の火傷の跡を焔が覆い尽くした。
これは発火能力なんかではない…。
「お前、何だその能力は…?」
「フハハハ…さぁ始めようか、」
東導は先程よりも一層深く、悪魔のように嗤いながら続ける。
「能力者狩りの獣君?」
俺はこの瞬間から、今日はいつもより一層長い夜になると覚悟するのだった。
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