死を視る俺と異能力者達

青薔薇

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因縁の紅き焔

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この世界にはゾロアスター教という宗教がある。
ゾロアスター教は世界最古の一神教とも言われ、別名【拝火教】という。
開祖を預言者ザラシュトラとし、拝火という名前の如く火を尊ぶらしい。
そしてその中に絶対悪とされるアンリ・マンユという悪神がいる。拝火の悪神、いったいどのような姿をしているのだろう、そう思うことが多々多々あった。
だがその推測劇は今日晴れた。
何故ならば今目の前にそれ ● ●が立っているからである。
いや、一つ訂正。これは悪魔だ。


汗がツーっと額を伝う。
熱い。下手したら軽い脱水症状を起こすのではないかというくらいに。
メラメラと燃える焔を目の前に少したじろぐ俺。
はっきり言ってこれは想定外だった。知らされていた異能力が誤りだった。
「どうした?来ないのならこちらから行かせてもらうぞ?」
そう言うと東導は走ってきた。
「はぁぁっ!!」
ゴオォッ!!
焔で形成された右腕を振るう。すると轟音が廃ビルに響く。
俺はそれを背中を反らしかわすがなんせ相手は焔だ。熱でダメージがくる。
「くぅっ!」
俺は即座に体勢を立て直しナイフで一閃二閃と切りつけるが手応えはない。やはり焔にダメージは通らないか…。
「これならどうだっ!!」
俺は懐に潜り込み脇腹にナイフを伸ばした。しかし右腕に邪魔され一旦退く。
隙がないな…警察学校首席は伊達じゃないってことか…。
「あんたは何故警官を狙う?」
後から知ったのだが、東導は警官を、特に本部の警官を中心に襲うらしい。
「あいつらは僕をはめた、人の善意に漬け込んで…あれは当然の報いだっ!!」
刹那、東導の右足から繰り出された蹴りが俺の腹にめり込む。
「グアッ!!」
俺は吹き飛び壁に打ち付けられるがよろめきながらも立ち直る。
「だけどあんたは誰も殺さなかった…本当はあんなことやりたくなんかないんじゃないのか!?」
すると東導は怒りに満ちた顔をしながら俺に追い討ちをするべく俺に右腕を伸ばす。
俺にはそれが視えていた。だが熱のせいか感覚が鈍る…。
グシャァッ!
顔面に焔の拳をくらう。
ダメだ、意識が…
「グッ、グアァァッ!!」
俺は舌を千切る勢いで噛んで意識をギリギリ保つ。口から大量の血が出る。
「(このままじゃ確実に殺される。ならば…)」
俺は胸にナイフを突き立て一気に力を込める。
この廃ビルで何回散らしたことだろうか、この俺の血。
「君、何をっ!?」
東導の驚愕した顔が目に焼き付く。
突如俺の周りを光が包む。
すると倒れかけていた俺は即座に体勢を建て直す。
「くっ…はぁ、はぁ」
「それが君の能力かい?」
「あぁ、そうだ」
普通ならここでネタバレをしても良いのだが、少しはったりをかましてみる。
「俺の能力は詠み返り、死んだらすべて回復して蘇る。そんな能力だ」
「くっ、なんてやっかいな…異常だな」
「お互い様な」
さて、どうするか。もちろん家に帰ってからの月子への言い訳もそうだが、今は東導の倒し方だ。
あの焔、危険だな…。からと言って他の部位を攻撃しようとすると避けられる、あるいはあの腕に邪魔される。しかも俺は熱で大分感覚が鈍っている。
はっきり言って今のところ勝算無しだな。
すると、
ゴロゴロ…
雷?こりゃあ一雨降るな。洗濯物は…月子がいるから良いか。
いかん、それより今はこっちに集中だ。
今の雷の音で少し意識が引き締まった。が、状況はないも変わってはいない。
「君は僕について調べたのかい?」
と、いきなり東導が話しかけてきた。
「一応はな」
「何で調べたかは知らないが、全て偽りにすぎない。僕は奴らに貶められたんだ。あいつらさえいなければ…だから今ここで君を倒して奴らに復習を果たす」
再び東導が構えた。
「せいっ!!」
ブォンッ!!
東導の右腕が俺を狙うが虚空を掻くに終わる。
感覚が大分戻ったせいか反応が早い。
「はぁぁぁっ!!」
今度は俺がナイフで切りつける。
よし、うまく懐に入った。
「くっ…」
ブォンッ!!
首元を切りつけ…ん?
間合いは完璧だった。しかし切った手応えがない。
俺は一旦距離を置く。
そして俺は目を疑った。
俺の目の前には全身が焔になった東導がいた。
「そんなのありかよ…!?」
瞬間、東導の熱だろうかただ老朽化が進んでいただけか、何故かはわからないが、屋上の床が抜け落ちた。



ピチョン、ピチョン…
手が冷たい。水滴だろうか?
「ん、んん…?」
俺は何を…。
「!?」
俺は何をしていたのかを思い出して飛び起きる。
すると目の前には全身が焔のままの東導が瓦礫に座っている。
シュールだ…
「わざわざ待ってたのか?」
「?あぁ、寝てるやつを倒しても目覚めが悪いからな」
やっぱり…この人は根はすごく良い人なんだ。
「さぁ、第二ラウンドを始めようか」



「はぁ、はぁ…」
「はぁ、はぁ…」
お互いの疲労がすごい。そろそろ限界か?
「なぁ…もう一度聞かせてくれないか?一体あんたは何をされたんだ?」
「さっき僕について調べたと言っていたな?僕は火災現場に居合わせ子供を救い、大怪我を負った」
「それは知っている。でその後退職をしたんだろ?」
「君は本当にそう思っているのかね?その退職が仕組まれたものだとしたら?僕は当時少しだがそれを疑った」
東導の焔が勢いを増す。
「そして僕は知ってしまった…あの火災さえも僕をはめるために仕組まれた罠だったということをね!」
「火災が仕組まれた?それって…」
「あぁそうだ。火災事故は出火原因不明と報道されたが実は違う、あれは放火だったんだ。しかもあの警官たちのなっ!!」
警官が、放火…?
俺はその冷たい現実にただ立ち尽くすしかなかった…。
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