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撤退戦
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「陛下!お逃げ下さい!ここは危険です!」
フローゼルの側近がフローゼルを安全な場所へと逃す。
セラの引き連れてきた竜騎兵隊が火を吐く。
敵兵は火から逃れるように散り散りに逃げ出す。
「よし!作戦通り行くぞ!」
自ら先頭に立ち、味方を引き連れ現場を離脱する。
目的地は近くに控えてある小舟で、小舟は味方が全員乗れる数だけ密かに用意していた。
「良いか!このシャムール川を真っ直ぐ下ればアナテル国へ行ける!それと敵の追手はセラ達が引き受けてくれるが油断はするな!」
船を出す。
サイズ的にはヴァイキングが乗るような船くらいで10数隻用意してある。
「よし!今だ!」
橋をくぐると同時に合図を出す。
石造りの橋の上にはこちらを追撃しようと弓を構えている敵兵がいた。
しかし、あらかじめ潜伏させていた盗賊ギルドのメンバーが合図を確認し橋を支えていた橋脚の一部の石を落とすと、橋が一気に崩れ落ちた。
盗賊ギルドには様々な職業の人間が集まっており、基本的に何でも出来るので、とても優秀である。
「よし!これで敵の船は出ることはできない!」
これで敵の洋上の追手は防げるだろう。
空を見るとセラ達が少数でありながらもよく川岸の敵を足止めしてくれており、敵の追撃の手は少し緩んでいる。
よく見るとイリスさんも弓で戦っている。
恐らく弓の方が得意なのだろう。
「後はセインか……。」
「陛下。ご無事ですか?」
「あぁなんともない。」
皇帝が椅子に座る。
「……フレンについて調べろ。」
「は?」
唐突に語り出す皇帝。
「お前の報告では生きていると聞いていたが、あの者が本当にアルフレッドならばフレンが我らの手によって殺されたということになる。皇族殺しは大罪である。真偽を明らかにせよ。」
「かしこまりました。」
皇帝は立ち上がり、席を後にした。
「……この老いぼれが。」
舌打ちをするフルート。
するとそこに別の人物が駆け寄ってきた。
「兄上!ご無事ですか!?」
「フレクか!遅いぞ!今まで何をしていた!」
このフレクと呼ばれた人物はフレンの実の弟であり、フレンと母親も同じである。
が故にフレンと同じく一族からは蔑まれている。
因みにだがフルートとは母親が違う。
「帝国各地で火の手が上がったことについて対処しておりました。」
「時間をかけすぎだ!そのせいで奴等を逃がしたではないか!」
苛立ちを隠すつもりもないようである。
「奴等?」
「もういい。それで?一体どういうことだったのだ。火の手が上がったことについては。」
するとフレクは懐からメモを取り出した。
「報告によりますと、火の手が上がった全ての地区は鎮圧されたとのことです。主犯を捕らえる事が出来た地区もあり、いずれも盗賊ギルドの者達でした。恐らく帝都での作戦の陽動だったと思われます。」
フレクの報告を聞き、睨むフルート。
「報告は事実のみを伝えろ!恐らくだとか、貴様の憶測を交えて報告をするな!貴様が兄弟でなければその首は転がっていたぞ!」
「も、申し訳ありません。」
ため息をつくフルート。
「ちっ!もうよい。お前は竜騎兵隊を率いて敵を追撃しろ。恐らくアルフレッドと名乗る者達は川を下り、アナテル国へと向かう算段だろう。」
そう言い残し、皇帝の後を追うようにその場を後にした。
フレクはその名を聞き一人驚きを隠せずにいた。
「……アルフレッド?本当にお前なのか……?」
「どうした?そんなものか?」
「くっ!卑怯な!」
セインはセイルズと戦っていたが、押され続けていた。
理由は明白である。
「なんだ?剣術はお前のほうが上なんだからこれくらいはいいだろう?」
セイルズは魔道具を使用している。
普段は掛けていない片眼鏡をかけているからだ。
記憶が正しければあの片眼鏡は先読みのレンズと言ってほんの少し先の動きがわかるものだったはずである。
そして恐らく最初の爆発も魔道具によるものだろう。
「おい!セイルズ殿!こっちもそろそろやばいぞ!」
ローゼンは数少ない手勢でスロールの手勢相手によく戦ってくれてはいたが流石に数で劣っていることもあり、劣勢である。
「ちっ!しぶといな!」
「くそっ!この賊め!」
スロールの剣を受け止めるローゼン。
単純な武力で言えばローゼンのほうが若干上のようである。
「もう少しだけ耐えてください!」
「ほう、もう少しで決着をつけるつもりか?」
セインの予想では純粋に体力的な問題もありセイルズがそろそろ音を上げるだろうと予想している。
しかし、そこでヤケに外が騒がしいことに気づく。
「おい!全兵力でもって今逃亡している賊を追え!」
外から指示が聞こえる。
アルフレッド達の事だろうか、外はものすごく騒がしい。
「皇帝陛下のご命令である!全ての出来事よりも優先して行動せよ!」
どうやらアルフレッド達が上手く行ったようである。
「ここまでだな……。スロール!退くぞ!」
「え、ですが……。」
剣をしまうセイルズ。
それを見たスロールは渋々承知し、剣をしまう。
「畏まりました。おい!行くぞ!」
「じゃあなセイン。決着はまた今度つけよう。」
そのまま手勢とともに走り去っていった。
「おい!待て!」
「あ、そうだ。」
セイルズは足を止め振り返ると小瓶を投げてきた。
「これが欲しかったんだろう?」
セインはそれを受け取る。
「これはまさか……。」
「神樹の雫だよ。」
ローゼンは喜びをあらわにする。
「やったじゃねぇか!とっとと逃げようぜ!」
セインは小瓶から目線をセイルズの方へ向けたがもうそこにセイルズの姿は無かった。
(一体どういうつもりだ……。)
フローゼルの側近がフローゼルを安全な場所へと逃す。
セラの引き連れてきた竜騎兵隊が火を吐く。
敵兵は火から逃れるように散り散りに逃げ出す。
「よし!作戦通り行くぞ!」
自ら先頭に立ち、味方を引き連れ現場を離脱する。
目的地は近くに控えてある小舟で、小舟は味方が全員乗れる数だけ密かに用意していた。
「良いか!このシャムール川を真っ直ぐ下ればアナテル国へ行ける!それと敵の追手はセラ達が引き受けてくれるが油断はするな!」
船を出す。
サイズ的にはヴァイキングが乗るような船くらいで10数隻用意してある。
「よし!今だ!」
橋をくぐると同時に合図を出す。
石造りの橋の上にはこちらを追撃しようと弓を構えている敵兵がいた。
しかし、あらかじめ潜伏させていた盗賊ギルドのメンバーが合図を確認し橋を支えていた橋脚の一部の石を落とすと、橋が一気に崩れ落ちた。
盗賊ギルドには様々な職業の人間が集まっており、基本的に何でも出来るので、とても優秀である。
「よし!これで敵の船は出ることはできない!」
これで敵の洋上の追手は防げるだろう。
空を見るとセラ達が少数でありながらもよく川岸の敵を足止めしてくれており、敵の追撃の手は少し緩んでいる。
よく見るとイリスさんも弓で戦っている。
恐らく弓の方が得意なのだろう。
「後はセインか……。」
「陛下。ご無事ですか?」
「あぁなんともない。」
皇帝が椅子に座る。
「……フレンについて調べろ。」
「は?」
唐突に語り出す皇帝。
「お前の報告では生きていると聞いていたが、あの者が本当にアルフレッドならばフレンが我らの手によって殺されたということになる。皇族殺しは大罪である。真偽を明らかにせよ。」
「かしこまりました。」
皇帝は立ち上がり、席を後にした。
「……この老いぼれが。」
舌打ちをするフルート。
するとそこに別の人物が駆け寄ってきた。
「兄上!ご無事ですか!?」
「フレクか!遅いぞ!今まで何をしていた!」
このフレクと呼ばれた人物はフレンの実の弟であり、フレンと母親も同じである。
が故にフレンと同じく一族からは蔑まれている。
因みにだがフルートとは母親が違う。
「帝国各地で火の手が上がったことについて対処しておりました。」
「時間をかけすぎだ!そのせいで奴等を逃がしたではないか!」
苛立ちを隠すつもりもないようである。
「奴等?」
「もういい。それで?一体どういうことだったのだ。火の手が上がったことについては。」
するとフレクは懐からメモを取り出した。
「報告によりますと、火の手が上がった全ての地区は鎮圧されたとのことです。主犯を捕らえる事が出来た地区もあり、いずれも盗賊ギルドの者達でした。恐らく帝都での作戦の陽動だったと思われます。」
フレクの報告を聞き、睨むフルート。
「報告は事実のみを伝えろ!恐らくだとか、貴様の憶測を交えて報告をするな!貴様が兄弟でなければその首は転がっていたぞ!」
「も、申し訳ありません。」
ため息をつくフルート。
「ちっ!もうよい。お前は竜騎兵隊を率いて敵を追撃しろ。恐らくアルフレッドと名乗る者達は川を下り、アナテル国へと向かう算段だろう。」
そう言い残し、皇帝の後を追うようにその場を後にした。
フレクはその名を聞き一人驚きを隠せずにいた。
「……アルフレッド?本当にお前なのか……?」
「どうした?そんなものか?」
「くっ!卑怯な!」
セインはセイルズと戦っていたが、押され続けていた。
理由は明白である。
「なんだ?剣術はお前のほうが上なんだからこれくらいはいいだろう?」
セイルズは魔道具を使用している。
普段は掛けていない片眼鏡をかけているからだ。
記憶が正しければあの片眼鏡は先読みのレンズと言ってほんの少し先の動きがわかるものだったはずである。
そして恐らく最初の爆発も魔道具によるものだろう。
「おい!セイルズ殿!こっちもそろそろやばいぞ!」
ローゼンは数少ない手勢でスロールの手勢相手によく戦ってくれてはいたが流石に数で劣っていることもあり、劣勢である。
「ちっ!しぶといな!」
「くそっ!この賊め!」
スロールの剣を受け止めるローゼン。
単純な武力で言えばローゼンのほうが若干上のようである。
「もう少しだけ耐えてください!」
「ほう、もう少しで決着をつけるつもりか?」
セインの予想では純粋に体力的な問題もありセイルズがそろそろ音を上げるだろうと予想している。
しかし、そこでヤケに外が騒がしいことに気づく。
「おい!全兵力でもって今逃亡している賊を追え!」
外から指示が聞こえる。
アルフレッド達の事だろうか、外はものすごく騒がしい。
「皇帝陛下のご命令である!全ての出来事よりも優先して行動せよ!」
どうやらアルフレッド達が上手く行ったようである。
「ここまでだな……。スロール!退くぞ!」
「え、ですが……。」
剣をしまうセイルズ。
それを見たスロールは渋々承知し、剣をしまう。
「畏まりました。おい!行くぞ!」
「じゃあなセイン。決着はまた今度つけよう。」
そのまま手勢とともに走り去っていった。
「おい!待て!」
「あ、そうだ。」
セイルズは足を止め振り返ると小瓶を投げてきた。
「これが欲しかったんだろう?」
セインはそれを受け取る。
「これはまさか……。」
「神樹の雫だよ。」
ローゼンは喜びをあらわにする。
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(一体どういうつもりだ……。)
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