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望まぬ故郷の姿
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数日後。
俺達はアナテル国についた。
しかし、その光景は前に見た光景とは全く違っていた。
襲撃を受けてからまだほんの数日だというのに街は破壊され、みる影もなかった。
遠くに見える城もボロボロである。
「レイン。大丈夫か?」
「ええ。」
そうとはいったが、大丈夫ではないだろう。
「……敵は少数だ。民を全員殺すには、時間がいる。民を何ヵ所かに分けて拘束し、本国からの増援を待ってから処刑を始めるんだと予測している。」
だが、勿論ただの予測で、そうではない可能性のほうが高い。
だが、レインの気が少しでも落ち着けばそれで良い。
「ありがとう。でも、本当に大丈夫。私は冷静だから。」
するとレインは振り返り、船員に号令を出す。
「総員上陸用意!本船は着岸するな!小舟で岸へと向かう!」
沿岸を見ると船の残骸が見てとれる。
アナテルは耐火性の優れた船で知られている。
相手にはこの船を燃やす術があるというのなら、本船は遠くにおき、小舟で上陸した方が良い。
俺達は難なく上陸することが出来た。
妨害があるかもと構えてはいたが、まずは大丈夫なようである。
「アルフレッド様!あれを!」
セラが指を指す方向を見ると人が磔にされていた。
それも1人ではなく、何十人もである。
全員が、串刺しにされたり、腹から下がなかったり等とても人がすることとは思えないものである。
「なんてことを……。」
この様子にはゼイルも声を上げる。
民の味方である冒険者としては苦しい状況だろう。
「……これは?」
マインが磔の現場の地面に何かが書かれていることに気づいた。
俺も近くへといき、文字を読む。
地面には見覚えのある文章が書かれていた。
「民の模範たれ、か。」
文字は比較的新しかった。
罠の可能性もある。
が、今は信じるしかないだろう。
「向かう先は決まったな。」
「まぁ、そういうことか。」
ゼイルは腕を組み、納得したようだ。
「ここだ。」
ゼイルに導かれた先は冒険者ギルド、アナテル支部であった。
ゼイルは建物の中へと入っていく。
「っ!誰だ!」
建物へ入るや否や、いきなり武器を突きつけられる。
「S級冒険者のゼイルだ。」
「双蛇の!?……と、いうことは味方か。」
武器を突きつけた者達は見るからに冒険者と言った装いである。
冒険者ギルドは世界各地に支部がある。
こういった緊急時には、避難所にもなるのだ。
「状況を説明してくれ。」
「はい。わかりました。」
現場のリーダーとおぼしき、若い男性が説明を始める。
まず、襲撃を受けてから、付近の人たちの救助に当たったとのことだ。
ここのギルドに所属していた者は一番上でB+級冒険者だった。
その他の者も救助活動をしていたのだが、実力不足と人材不足で限界があり、付近の者しか助けられなかったとのことだ。
確かにギルドの中には数名の一般人がいた。
ギルドの冒険者も数名犠牲者が出たようで、救助が来るのを待っていたとのことだ。
「しかし、よく俺たちが来ることが分かったな、あの暗号は冒険者にしかわからん暗号だ。ということは俺が来ると知っていたんだろ?」
民の模範たれとは冒険者のモットーであると同時に緊急時にはギルドへ集合という意味にもなるらしい。
「ええ。ある人の情報のお陰でね。」
すると、リーダー格の男はレインの方を見た。
「……こちらへどうぞ。レイン様。アルフレッド様。」
レインは案内されるがまま、ついていく。
正直信用しきって良いのかわからないのだが、ついていくしかない。
「お父様!?」
「おお!レイン!会いたかったぞ!」
案内された部屋にはベッドに横たわるレノン王の姿があった。
が、その姿は最後に見た姿ではなく、右手と左目を失った状態だった。
「……一体、どうされたのですか?」
「おお、アルフレッド。いや、実はな少し本気を出して、バイゼルとあのリンとランとか言う双子と戦ったんだがな。」
さらっとすごいことを言った。
1対3しかも相手はセインを苦しめたほどの相手である。
「あの双子には重傷を負わせられたんだが、バイゼルは逃がしてしまってな。」
ハハハと笑うレノン王。
何より辛いのは自分だと言うのに。
「そのお体は?」
「あぁ。腕はランの大剣にやられた、目についてはリンの射撃をかわしたつもりが、丁度目の辺りをかすってな。それで見えなくなってしまったんだ。」
しかし、よく生きていたものだ。
「とにかくご無事で何よりです。」
「ええ、本当に。」
するとレインはレノン王に抱きつく。
「お、おい。」
「生きていてくれてありがとう……。」
後ろ姿からも泣いているのが分かる。
この場は親子二人だけにしておこうと思い、その場を後にした。
俺は先程のギルドの人間のところへ戻った。
話を聞くと、レノン王は一人であの3人相手に善戦し、戦闘の音を聞き、集まってきた敵の雑兵も倒しながら戦っていたとのことだ。
そのお陰で敵は城へ退いたらしい。
捕えていた民とともに。
「つまり、俺達の今後の行動は城へ向かうことだな。」
今生き残った民は城にいると言うことだ。
「……1つ懸念点がある。」
俺は声を上げた。
「話の中でジェラルドの名前が出てこなかった。その動向は掴めていないのか?」
冒険者達は顔を見合わせる。
しかし、首を縦にふる者はいなかった。
「すまんな。」
「いや、いいんだ。それならそれで対策のしようはある。」
出来ればもう二度と戦いたくは無いのだが。
「敵は少ないが、全員が手練だ。ギルドは手を貸してくれるのか?」
ゼイルは貸してくれるのだろうが、出来ればこの人達の力もほしい。
今は一人でも多い方が良い。
「ここの守りもあるし、逃げた囚人の対処もしなくてはならない。すまないが、人手を貸すことは出来ない。」
「いや、いいんだ。」
まぁ、元々俺達だけでやる予定だったんだ。
なんの問題もない。
さぁ、奴らに奴等に死よりも恐ろしい経験を与える作戦を考えなくてはな。
俺達はアナテル国についた。
しかし、その光景は前に見た光景とは全く違っていた。
襲撃を受けてからまだほんの数日だというのに街は破壊され、みる影もなかった。
遠くに見える城もボロボロである。
「レイン。大丈夫か?」
「ええ。」
そうとはいったが、大丈夫ではないだろう。
「……敵は少数だ。民を全員殺すには、時間がいる。民を何ヵ所かに分けて拘束し、本国からの増援を待ってから処刑を始めるんだと予測している。」
だが、勿論ただの予測で、そうではない可能性のほうが高い。
だが、レインの気が少しでも落ち着けばそれで良い。
「ありがとう。でも、本当に大丈夫。私は冷静だから。」
するとレインは振り返り、船員に号令を出す。
「総員上陸用意!本船は着岸するな!小舟で岸へと向かう!」
沿岸を見ると船の残骸が見てとれる。
アナテルは耐火性の優れた船で知られている。
相手にはこの船を燃やす術があるというのなら、本船は遠くにおき、小舟で上陸した方が良い。
俺達は難なく上陸することが出来た。
妨害があるかもと構えてはいたが、まずは大丈夫なようである。
「アルフレッド様!あれを!」
セラが指を指す方向を見ると人が磔にされていた。
それも1人ではなく、何十人もである。
全員が、串刺しにされたり、腹から下がなかったり等とても人がすることとは思えないものである。
「なんてことを……。」
この様子にはゼイルも声を上げる。
民の味方である冒険者としては苦しい状況だろう。
「……これは?」
マインが磔の現場の地面に何かが書かれていることに気づいた。
俺も近くへといき、文字を読む。
地面には見覚えのある文章が書かれていた。
「民の模範たれ、か。」
文字は比較的新しかった。
罠の可能性もある。
が、今は信じるしかないだろう。
「向かう先は決まったな。」
「まぁ、そういうことか。」
ゼイルは腕を組み、納得したようだ。
「ここだ。」
ゼイルに導かれた先は冒険者ギルド、アナテル支部であった。
ゼイルは建物の中へと入っていく。
「っ!誰だ!」
建物へ入るや否や、いきなり武器を突きつけられる。
「S級冒険者のゼイルだ。」
「双蛇の!?……と、いうことは味方か。」
武器を突きつけた者達は見るからに冒険者と言った装いである。
冒険者ギルドは世界各地に支部がある。
こういった緊急時には、避難所にもなるのだ。
「状況を説明してくれ。」
「はい。わかりました。」
現場のリーダーとおぼしき、若い男性が説明を始める。
まず、襲撃を受けてから、付近の人たちの救助に当たったとのことだ。
ここのギルドに所属していた者は一番上でB+級冒険者だった。
その他の者も救助活動をしていたのだが、実力不足と人材不足で限界があり、付近の者しか助けられなかったとのことだ。
確かにギルドの中には数名の一般人がいた。
ギルドの冒険者も数名犠牲者が出たようで、救助が来るのを待っていたとのことだ。
「しかし、よく俺たちが来ることが分かったな、あの暗号は冒険者にしかわからん暗号だ。ということは俺が来ると知っていたんだろ?」
民の模範たれとは冒険者のモットーであると同時に緊急時にはギルドへ集合という意味にもなるらしい。
「ええ。ある人の情報のお陰でね。」
すると、リーダー格の男はレインの方を見た。
「……こちらへどうぞ。レイン様。アルフレッド様。」
レインは案内されるがまま、ついていく。
正直信用しきって良いのかわからないのだが、ついていくしかない。
「お父様!?」
「おお!レイン!会いたかったぞ!」
案内された部屋にはベッドに横たわるレノン王の姿があった。
が、その姿は最後に見た姿ではなく、右手と左目を失った状態だった。
「……一体、どうされたのですか?」
「おお、アルフレッド。いや、実はな少し本気を出して、バイゼルとあのリンとランとか言う双子と戦ったんだがな。」
さらっとすごいことを言った。
1対3しかも相手はセインを苦しめたほどの相手である。
「あの双子には重傷を負わせられたんだが、バイゼルは逃がしてしまってな。」
ハハハと笑うレノン王。
何より辛いのは自分だと言うのに。
「そのお体は?」
「あぁ。腕はランの大剣にやられた、目についてはリンの射撃をかわしたつもりが、丁度目の辺りをかすってな。それで見えなくなってしまったんだ。」
しかし、よく生きていたものだ。
「とにかくご無事で何よりです。」
「ええ、本当に。」
するとレインはレノン王に抱きつく。
「お、おい。」
「生きていてくれてありがとう……。」
後ろ姿からも泣いているのが分かる。
この場は親子二人だけにしておこうと思い、その場を後にした。
俺は先程のギルドの人間のところへ戻った。
話を聞くと、レノン王は一人であの3人相手に善戦し、戦闘の音を聞き、集まってきた敵の雑兵も倒しながら戦っていたとのことだ。
そのお陰で敵は城へ退いたらしい。
捕えていた民とともに。
「つまり、俺達の今後の行動は城へ向かうことだな。」
今生き残った民は城にいると言うことだ。
「……1つ懸念点がある。」
俺は声を上げた。
「話の中でジェラルドの名前が出てこなかった。その動向は掴めていないのか?」
冒険者達は顔を見合わせる。
しかし、首を縦にふる者はいなかった。
「すまんな。」
「いや、いいんだ。それならそれで対策のしようはある。」
出来ればもう二度と戦いたくは無いのだが。
「敵は少ないが、全員が手練だ。ギルドは手を貸してくれるのか?」
ゼイルは貸してくれるのだろうが、出来ればこの人達の力もほしい。
今は一人でも多い方が良い。
「ここの守りもあるし、逃げた囚人の対処もしなくてはならない。すまないが、人手を貸すことは出来ない。」
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