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佐切達の動き
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「ふむ……一瞬だが、『俯瞰』で様子が見えたな」
数日前。
第一壁がスキルによる総攻撃によって破られた位のとき、戦場を『俯瞰』で見ていた。
しかし気付くのが遅く、状況を把握するのに手間取り、策を練っている間にまたスキルが使えなくなり、フィアナ達に状況を伝えることも出来なくなってしまった。
「どうだった?」
「うん……フィアナは無事みたいだ。レナ、良かったな」
「うん」
「というか、みんな無事だな。兵の損害も殆ど無い」
「じゃあ……ジョバンニも無事ね!」
ロームは喜びを隠さない。
すると、ガルンが話しかけてくる。
「それで? このままいけば明日には着くが、どうする?」
「……今すぐにでも向かいたいですが、気になることがあります」
俺はカルラへ向き直る。
「もう一つ、北東の方から軍が近づいていました。ですがそれは指揮下にある軍を示す青ではなく、別の勢力の友軍を意味する緑でした。カルラさん。何か知りませんか?」
「ふむ……私もドヴェルグにこもっていたからね……新しい情報はなにも……」
「じゃあ……ファレスを旅立つ前に持っていた、誰にも話していない情報があるのでは?」
「……やっぱり鋭いね。そうだよ。話していないことがある」
カルラは懐から文を取り出す。
「エルフの国からの知らせだ。軍の準備が整い、同盟国とともに魔王軍へ合流するため、ファレスへ向かうとさ。ま、もうそろそろ着く頃合いだろうね」
「やはりですか……つまり……」
「え? ドワーフとエルフの軍が合流できるの!?」
ロームが少し驚いていた。
「……そんなに喜ぶんですか?」
「そりゃそうよ! 昔から言われていたの。ドワーフの力強い軍靴の音を聞けば武器を捨てよ。エルフの恐ろしいまでに統率の取れた軍靴の音を聞けばすぐさま逃げよ。その両方を聞いたのならば、もはや生き残ることはかなわない。降伏せよ、それが叶わぬなら天国に行ける事を祈れ、てね」
「ドワーフは武器を捨てよ……エルフは逃げろ……かそれほどまでに強力なんですね……」
「うむ。その人間の言葉は聞いた事がある」
するとガルンが解説を始めた。
「ドワーフの軍は頑丈、士気も高く、武器防具の質も人間が劣っている。人間の軍では相手にならない。だが、質の低い武具であろうとも、ドワーフは鍛冶を生業としている。それが策と分かっていても武具に目が奪われる。ドワーフが武具に気を取られている間にひたすらに逃げよ、ということだな」
「エルフも似たようなものだね」
カルラもガルンに便乗する。
「エルフの弓の腕前は超一流だ。軍靴の音が聞こえた時点で射程圏内だ。だから、一目散に逃げろ、とね。そしてその両方が聞こえたら勝つ術は無い。生き残る術もない。降伏するか、天国に行けることを祈れってね」
「へぇ……」
そこまで恐れられていたとは……。
魔国軍からドワーフとエルフが抜けてから久しい。
その事を知る人間も数を減らしたのだろう。
……戦力差や状況にもよるが……俺だったら……。
「あんた……今その両軍相手に人間の軍で指揮して勝ちたい、なんて思っただろ?」
「う……わかりますか?」
「結構長い付き合いになってきたからね……それくらいわかるよ」
するとカルラはロームの肩をつかむ。
「え?」
「さ、佐切こっちにおいで」
「……はい?」
「エルフ軍に案内してやるよ。エルフ族の首長様直々にね」
「エルフの首長……ん? カルラさんが?」
驚愕の事実を聞いた気がする……。
「はぁ!? 首長!?」
「そうだよ。言ってなかったっけ? エルフの国、エルンリード国国王、兼首長、カルラ・エルンリードだよ」
数日前。
第一壁がスキルによる総攻撃によって破られた位のとき、戦場を『俯瞰』で見ていた。
しかし気付くのが遅く、状況を把握するのに手間取り、策を練っている間にまたスキルが使えなくなり、フィアナ達に状況を伝えることも出来なくなってしまった。
「どうだった?」
「うん……フィアナは無事みたいだ。レナ、良かったな」
「うん」
「というか、みんな無事だな。兵の損害も殆ど無い」
「じゃあ……ジョバンニも無事ね!」
ロームは喜びを隠さない。
すると、ガルンが話しかけてくる。
「それで? このままいけば明日には着くが、どうする?」
「……今すぐにでも向かいたいですが、気になることがあります」
俺はカルラへ向き直る。
「もう一つ、北東の方から軍が近づいていました。ですがそれは指揮下にある軍を示す青ではなく、別の勢力の友軍を意味する緑でした。カルラさん。何か知りませんか?」
「ふむ……私もドヴェルグにこもっていたからね……新しい情報はなにも……」
「じゃあ……ファレスを旅立つ前に持っていた、誰にも話していない情報があるのでは?」
「……やっぱり鋭いね。そうだよ。話していないことがある」
カルラは懐から文を取り出す。
「エルフの国からの知らせだ。軍の準備が整い、同盟国とともに魔王軍へ合流するため、ファレスへ向かうとさ。ま、もうそろそろ着く頃合いだろうね」
「やはりですか……つまり……」
「え? ドワーフとエルフの軍が合流できるの!?」
ロームが少し驚いていた。
「……そんなに喜ぶんですか?」
「そりゃそうよ! 昔から言われていたの。ドワーフの力強い軍靴の音を聞けば武器を捨てよ。エルフの恐ろしいまでに統率の取れた軍靴の音を聞けばすぐさま逃げよ。その両方を聞いたのならば、もはや生き残ることはかなわない。降伏せよ、それが叶わぬなら天国に行ける事を祈れ、てね」
「ドワーフは武器を捨てよ……エルフは逃げろ……かそれほどまでに強力なんですね……」
「うむ。その人間の言葉は聞いた事がある」
するとガルンが解説を始めた。
「ドワーフの軍は頑丈、士気も高く、武器防具の質も人間が劣っている。人間の軍では相手にならない。だが、質の低い武具であろうとも、ドワーフは鍛冶を生業としている。それが策と分かっていても武具に目が奪われる。ドワーフが武具に気を取られている間にひたすらに逃げよ、ということだな」
「エルフも似たようなものだね」
カルラもガルンに便乗する。
「エルフの弓の腕前は超一流だ。軍靴の音が聞こえた時点で射程圏内だ。だから、一目散に逃げろ、とね。そしてその両方が聞こえたら勝つ術は無い。生き残る術もない。降伏するか、天国に行けることを祈れってね」
「へぇ……」
そこまで恐れられていたとは……。
魔国軍からドワーフとエルフが抜けてから久しい。
その事を知る人間も数を減らしたのだろう。
……戦力差や状況にもよるが……俺だったら……。
「あんた……今その両軍相手に人間の軍で指揮して勝ちたい、なんて思っただろ?」
「う……わかりますか?」
「結構長い付き合いになってきたからね……それくらいわかるよ」
するとカルラはロームの肩をつかむ。
「え?」
「さ、佐切こっちにおいで」
「……はい?」
「エルフ軍に案内してやるよ。エルフ族の首長様直々にね」
「エルフの首長……ん? カルラさんが?」
驚愕の事実を聞いた気がする……。
「はぁ!? 首長!?」
「そうだよ。言ってなかったっけ? エルフの国、エルンリード国国王、兼首長、カルラ・エルンリードだよ」
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