歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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「皆! この戦、勝てたのはみんなのおかげよ! この勝利は必ずや歴史に刻まれるでしょう! このカレン・ノージリアが保証します!」
「我がドワーフ族も、この戦の勝利によって地位を復活させられた! どれも諸君のおかげである!」
「エルフ族を代表して、この軍団長、騎士スランディアも感謝を申し上げる。諸君らが戦う決意をしなければ今、我々はここに立ってはいないだろう……というか、これは族長の言葉のはずですが……何処に行かれたのですか!?」
 
 群衆から笑い声が起きる。
 すると、軽く咳払いをしてキサラが続けた。
 
「えぇと……魔王様の代理として、魔王軍幹部キサラから感謝の言葉を申し上げます。此度の戦の勝利は皆様方の団結があってこそだと確信しています。この勝利は瞬く間に全国に伝わり、皆がこう思うでしょう。ザルノールの時代は終わった、と。皆が口々に言うこの言葉は、ここにいる我々が作り上げたものです! 大いに誇りましょう! 我々の勝利に、乾杯!」
 
 そのキサラの掛け声で皆が盃の音を鳴らす。
 最低限の戦後処理、捕虜の捕縛や軍の人数分の寝床の確保や準備を済ませ、避難民の誘導も済ませてから宴を開いた。
 軍も民も、捕虜でさえ交えての宴だった。
 
「良かったんですか? 捕虜まで……」
「あぁ。フィアナも見ただろ? 敵総大将のガイアの奮戦ぶりを。それを称えて、最大限の待遇を約束したんだ。勿論武器は持たせないし、常に監視の目も置いているからな。それに……」
 
 俺は横を見る。
 そこには、縄に縛られたドルーガがいた。
 
「最も慕われているこの人がこっちにはいるからな。この人が何もせず捕虜としての役目を全うしてるのに、下手な事をしたらどうなるか、分かるだろ? 俺たちからも罰を受けて、ドルーガさんからも褒められない。何もいいことは無いのさ」
「ふん……儂は敗者に違いは無い。好きに使え」
「……因みにドルーガさん。本当にこちら側につく気は……」
「無い。何があってもな」
 
 すると、ドルーガは宴を見て言う。
 
「お主らも、儂の見張りなんぞせずに宴を楽しんでこい。これだけ縛られていたら、何も出来ぬわ。何もする気も起きんしな」
「えぇ。さすがにあなたに暴れられると抑えるのに苦労しますからね。縛ったままにさせてもらいますよ。でも、何かあれば言ってください。お言葉に甘えて宴を楽しんできますが、人は置いておくのでなにかあればそちらに。じゃあ、頼んだ」
「は! お任せを!」
 
 監視員に声をかけ、フィアナと共に宴へと赴く。
 宴の場に二人で訪れたが、あることを思い出す。
 
「……酒、飲めないや」
「そうなのですか? なら、食べ物を食べるとしましょう。それに確か、お酒を飲めない人用にも何か用意してある筈ですし」
「……フィアナは飲めるのか?」
「はい。強くはありませんが」
 
 カルチャーショックだな。
 フィアナも日本ではまだ未成年だと思うのだが……。
 なんだか負けた気がする。
 
「ま、楽しもうか……っと」
「勘助、フィアナ、二人きり……ずるい」
 
 いきなり抱きつかれ、何事かと思えばレナであった。
 どうやら先に宴を楽しんでいたが、焼き餅を焼いたらしい。
 
「そう言えば、レナもお酒は飲めないよね。じゃあ、私も飲みません」
「良いのか?」
「はい。みんなと一緒が良いですから」
 
 
 
「おう! 佐切殿! 楽しんでるか!? ドワーフの酒に比べれば人間の酒は弱いな!」
「我らが軍師殿! 両手に花とはうらやましいね!」
 
 ドワーフの宴の場へ訪れると、既にすごい盛り上がりになっていた。
 ガルンとサナンは既に打ち解けており、出来上がっている。
 二人揃ってがぶがぶと水を飲むかのようにジョッキを空にする。
 
「お主……中々出来るな……」
「そちらこそ……ドワーフの酒に比べれば……何でしたっけ? 手が止まってますぞ」
 
 二人は飲み比べをしているらしい。
 
「良いか。あれは見習うな」
「はい。分かってます」
「……悪い大人の例」

 フィアナとレナは酒を飲む世界に生きてきただろうが、酒を飲まない俺でもあれは駄目な例だと分かる。

「いや、すまぬな佐切殿」
「まぁ、王の気持ちもわかるがな! 儂も混ざりたいわ!」
 
 すると、ドワーフの軍団長、ゴズンとドルドに話しかけられる。
 ドルドからは申し訳なさは感じないが。
 
「我らが王にとって、久々の休息なのだ。大目に見てやってほしい」
「うむ。儂らが見ておるから、安心してくれ」
「ありがとうございます。お二人になら任せられますよ……サナンは……」
「うむ……サナン殿まで手に負えんかもしれんな」
 
 ガルンは大丈夫だろうが、サナンはどうだろうか。
 何かブレーキをかけられる何かがあれば……。
 
「あ、そうだ。二人とも、行くぞ!」
「え、どちらへ!?」
「サナンを止めるために、最善の一手を打つのさ」
「……どこでも良い。勘助がいる所に、ついてく」
 
 サナンを止めるのなら、やはりあの人しかいないだろうな。
 本人は、嫌がるかもだが。
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