141 / 155
残り二回
しおりを挟む
「落ち着いたか? 別にまた後でもよかったんだぞ」
「あ、あぁ……すまんな。まだドキドキしてるが……これだけは伝えておかなくちゃならん。出来るだけ早く、な」
あの後、サナンの要件は後日とするつもりだったが、サナンたっての希望で、宴がおわった後二人きりで話をすることになった。
「それで? 話ってのは?」
「あぁ……。俺は死んでるって話だな」
いきなり理由のわからない事を言う。
サナンは今俺の目の前に立っている。
死んでなどいないはずだ。
「つっても訳がわからんよな……順を追って説明するわ」
「……なんでそんな大事な事もっと早く言わないんだよ!」
「だから今言っただろ?」
「いやもっと早く……相手のスキル妨害がなくなった時点で言ってくれよ!」
「そんな事言ってもな……って……何だ、泣いてるのか?」
サナンに言われて、うっすらと涙を浮かべていることに気が付く。
サナンがあと二回本気で戦えば死んでしまう。
それどころか、普通に暮らしているだけで少しずつ寿命を削ってしまう。
……よくよく考えてみればそれって普通の事では?
「そんなに俺の死を悲しんでくれるのか……嬉しいな……」
わざとらしく、サナンは涙をぬぐう。
が、涙など出ていない。
冷静になったら冷めてきたな。
「おい、嘘泣きはやめろ」
「ははは! 悪い悪い!」
すると、サナンは真面目な顔に戻った。
「真面目な話、あと二回だ。本気で戦えるのは」
「……」
「使い所はお前が見極めてくれ」
あと二回。
サナンが本気で戦えば、今度は本当に消えてしまう。
何も確かなことは分からないが、何もしなければそれなりに生きれるのではないだろうか。
ならば、あまり矢面に立って……。
「あまり矢面に立たせられないってか?」
「くそ……サナンのくせになんで俺の考えが分かった?」
「一言余計だな……まぁ、お前の考えることなんて手に取るように分かるさ。魔王派のリーダー、サナン様を舐めるなよ!」
少し悔しい気もするが、まぁ良い。
それよりもそのドヤ顔が腹立つ。
……一発殴ろうかな。
「ま、俺の事は気にするな。俺の生死を気にして負けるようなことがあったら許さないからな」
「……分かったよ」
「ま、そういう事だから、お前達には早いとこ幸せになって欲しいんだよ」
「……成る程な。それであんな事を言ったのか。……でも、人の事だけでいいのか?」
「ん?」
そろそろ反撃といこう。
ちょっと一方的にやらせすぎたな。
「カルラさんの事だよ。お前、今振り向いてもらえそうなのに、諦めるのか?」
「う……」
「カルラさんもお前に興味がありそうだし……お前の気持ちはとっくのとうに見透かされてるし……お前が死んだら本当に悲しむかもなぁ……」
「く……でも仕方ないだろ!? 相手はエルフの族長だし……俺なんかが好きって言った所で周りから……」
「別に良いけど?」
すると、サナンの背後から声がする。
その聞き覚えのある声に、サナンは振り返る。
「カ、カルラさん……? 何でここに……」
「今さっき佐切から『念話』で連絡受けてね。詳細は省くけど来てほしいって言われたから来てみれば……なんか面白い事になってるね」
カルラの言葉を聞き、サナンは顔を赤らめ、怒りを俺にぶつける。
「……さ、佐切! お前!」
「ハハハハハ。ちょっとお前に驚かされすぎたからな。仕返しだ。人の恋路ばっかり気にしてたら駄目だぞ」
すると、カルラはサナンに近づく。
「う……」
その美貌に、サナンは硬直する。
すると、カルラはサナンの額にキスをした。
「……え?」
「おお……」
「この先は、戦が終わったら、だ。長い事生きてきたけど、あんた程興味を惹かれた男は居ないよ。もっと自信を持ちな。周りの奴らは私が一言言えば黙るさ」
そう言うと、カルラはその場を離れていく。
「で、あと二回って言ったね? だったら、もう一回たりとも使わせないように、守ってやるよ。それにこの戦でのあんたの活躍、聞いたよ。かっこいいじゃないか。武蔵の奴も喜んでるさ」
カルラは、手を振りながら、闇夜に消えていった。
「……カルラさんにあと二回って話したのか?」
「まさか……何も話してないぞ」
「じゃあ、聞いてたのか? 流石は情報屋だな……油断もならんな……」
「というか武蔵さんの事も知ってたのか……まぁカルラさんなら知っててもおかしくはないか……本当に底が知れないな……」
サナンの秘密を共有し、今後はカルラさんと共にサナンが無茶しないように見張らなくちゃならないな……。
……俺もフィアナとのこともあるし、サナンを応援する為にも頑張るか!
「あ、あぁ……すまんな。まだドキドキしてるが……これだけは伝えておかなくちゃならん。出来るだけ早く、な」
あの後、サナンの要件は後日とするつもりだったが、サナンたっての希望で、宴がおわった後二人きりで話をすることになった。
「それで? 話ってのは?」
「あぁ……。俺は死んでるって話だな」
いきなり理由のわからない事を言う。
サナンは今俺の目の前に立っている。
死んでなどいないはずだ。
「つっても訳がわからんよな……順を追って説明するわ」
「……なんでそんな大事な事もっと早く言わないんだよ!」
「だから今言っただろ?」
「いやもっと早く……相手のスキル妨害がなくなった時点で言ってくれよ!」
「そんな事言ってもな……って……何だ、泣いてるのか?」
サナンに言われて、うっすらと涙を浮かべていることに気が付く。
サナンがあと二回本気で戦えば死んでしまう。
それどころか、普通に暮らしているだけで少しずつ寿命を削ってしまう。
……よくよく考えてみればそれって普通の事では?
「そんなに俺の死を悲しんでくれるのか……嬉しいな……」
わざとらしく、サナンは涙をぬぐう。
が、涙など出ていない。
冷静になったら冷めてきたな。
「おい、嘘泣きはやめろ」
「ははは! 悪い悪い!」
すると、サナンは真面目な顔に戻った。
「真面目な話、あと二回だ。本気で戦えるのは」
「……」
「使い所はお前が見極めてくれ」
あと二回。
サナンが本気で戦えば、今度は本当に消えてしまう。
何も確かなことは分からないが、何もしなければそれなりに生きれるのではないだろうか。
ならば、あまり矢面に立って……。
「あまり矢面に立たせられないってか?」
「くそ……サナンのくせになんで俺の考えが分かった?」
「一言余計だな……まぁ、お前の考えることなんて手に取るように分かるさ。魔王派のリーダー、サナン様を舐めるなよ!」
少し悔しい気もするが、まぁ良い。
それよりもそのドヤ顔が腹立つ。
……一発殴ろうかな。
「ま、俺の事は気にするな。俺の生死を気にして負けるようなことがあったら許さないからな」
「……分かったよ」
「ま、そういう事だから、お前達には早いとこ幸せになって欲しいんだよ」
「……成る程な。それであんな事を言ったのか。……でも、人の事だけでいいのか?」
「ん?」
そろそろ反撃といこう。
ちょっと一方的にやらせすぎたな。
「カルラさんの事だよ。お前、今振り向いてもらえそうなのに、諦めるのか?」
「う……」
「カルラさんもお前に興味がありそうだし……お前の気持ちはとっくのとうに見透かされてるし……お前が死んだら本当に悲しむかもなぁ……」
「く……でも仕方ないだろ!? 相手はエルフの族長だし……俺なんかが好きって言った所で周りから……」
「別に良いけど?」
すると、サナンの背後から声がする。
その聞き覚えのある声に、サナンは振り返る。
「カ、カルラさん……? 何でここに……」
「今さっき佐切から『念話』で連絡受けてね。詳細は省くけど来てほしいって言われたから来てみれば……なんか面白い事になってるね」
カルラの言葉を聞き、サナンは顔を赤らめ、怒りを俺にぶつける。
「……さ、佐切! お前!」
「ハハハハハ。ちょっとお前に驚かされすぎたからな。仕返しだ。人の恋路ばっかり気にしてたら駄目だぞ」
すると、カルラはサナンに近づく。
「う……」
その美貌に、サナンは硬直する。
すると、カルラはサナンの額にキスをした。
「……え?」
「おお……」
「この先は、戦が終わったら、だ。長い事生きてきたけど、あんた程興味を惹かれた男は居ないよ。もっと自信を持ちな。周りの奴らは私が一言言えば黙るさ」
そう言うと、カルラはその場を離れていく。
「で、あと二回って言ったね? だったら、もう一回たりとも使わせないように、守ってやるよ。それにこの戦でのあんたの活躍、聞いたよ。かっこいいじゃないか。武蔵の奴も喜んでるさ」
カルラは、手を振りながら、闇夜に消えていった。
「……カルラさんにあと二回って話したのか?」
「まさか……何も話してないぞ」
「じゃあ、聞いてたのか? 流石は情報屋だな……油断もならんな……」
「というか武蔵さんの事も知ってたのか……まぁカルラさんなら知っててもおかしくはないか……本当に底が知れないな……」
サナンの秘密を共有し、今後はカルラさんと共にサナンが無茶しないように見張らなくちゃならないな……。
……俺もフィアナとのこともあるし、サナンを応援する為にも頑張るか!
0
あなたにおすすめの小説
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる