歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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未来

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「……ここは……」
 
 暗闇の中をレナとともに進む。
 はぐれないように手をつなぎながら進む。
 見えるのは僅かに足元のみである。
 すると、声が響く。
 
「なんか一人ついてきてるし……まぁ良いか」
「そろそろ姿を現したらどうだ? 敵じゃあ無いんだろ?」
「……仕方無いわね」
 
 すると、暗闇が晴れる。
 そこは、ファレスの宴の場ではなく、森の中であった。
 
「な……いつの間に……」
「……勘助、気を付けて」
 
 レナが刀を抜く。
 相当に警戒している。
 俺も刀に手をかける。
 
「え?」
「残念だけど、武器は没収させてもらったわ。まぁ、そちらのお嬢さんは想定外だったから対象外だったけど……」
 
 気が付けば、目の前には不思議な少女が立っていた。
 歳は俺と同じくらいだろうか。
 黒髪、黒い目、日本人とよくにているが、顔立ちは違う。
 腰ほどまで伸びた長い髪と、黒い服装がよく似合う女性だった。
 
「……あんたは?」
「自己紹介はまた今度。あいにくと時間が無いからね。私はあんたに助言をあげるために来たの」
「……怪しすぎる。近寄らないで」
 
 レナが刀を構えて俺と少女の間に立つ。
 
「大丈夫。近寄らなくても出来るから」
 
 少女は手をかざす。
 その様子に、レナは警戒心をマックスにする。
 
「っ!」
「これはこの先のあるかもしれない出来事……あなたの行動次第で、結果は変わるわ」
「……未来視、か」
「そ、話が早いわね。あと一つだけ言っておくと、私はあなたの味方よ。何があってもね。それだけは覚えておいて」
 
 すると目を瞑り、何かを唱え始める。
 
『覗けば見え、覗かねば見えず、見えし物が未来かどうかも分からない』
 
 少女の足元が光り始める。
 そして、その光は見覚えのある文様であった。
 
「……これは……魔法陣?」
 
 そう言うと、少女は少し笑った。
 そして、詠唱を続ける。
 
『不確かな未来、どう転ぶかは、あなた次第。それでも、覗けば何かは変わる。変えねばならない物がある』
 
 少女は目を開く。
 
『目を見開き、見定めよ。己の宿命定めを。ビジョン』

 そういい終わると、辺りが眩い光りに包まれる。
 
 
 
「……これは……」
 
 辺りにはモヤがかかっている。
 暫くすると、霧が晴れていった。
 
「あれは……俺か? フィアナとレナも……一体これは……」
 
 そこには、俺がフィアナとレナと共に川辺で涼んでいる様子が見て取れた。
 俺は雲の上から覗いているような事になっている。
 そこで、あの少女が言っていた言葉を思い出した。
 
「これが……未来視なのか?」
 
 すると、目の前の俺達が、いきなり襲われる。
 矢の雨が降り注ぐ。
 俺達は成す術なく矢に当たり、それでも二人を守るために二人を抱きかかえて川に落ちる。
 
「っ!」
 
 すると、急に場面が流れる。
 そこには、見たくない光景が流れていた。
 
「な……」
 
 俺が動かなくなったフィアナとレナ、二人の手を握り、泣いていた。
 その傍らには先程の少女が。
 表情は見えないが、決して明るい雰囲気では無い。
 
「二人が……死ぬ? ……こんな未来視……信じられるか……」
 
 また場面が流れる。
 今度は、俺が王冠を被り、魔物達を率いて村々を蹂躙していく光景だ。
 街の人々が囚われ、処刑されていく光景を見て、俺は笑っていた。
 
「一体……何が……」
 
 そんな俺の隣には、先程の少女のみ。
 サナンも、ジョバンニさんもキサラさんやサティスもカルラさんも誰もいない。
 
「勘助?」
「っ……レナ?」
 
 気が付けば俺は元の場所に戻っていた。
 元の場所と言っても宴会の場ではなく少女のいた所だ。
 
「……レナ……」
「ふぇっ!?」
 
 俺はレナを抱き寄せる。
 不確かな未来の光景とは言え、俺は二人を守れなかったのだ。
 
「そう……あなたも同じ未来を見たのね」
「お前……あれは一体何だ!? なぜあんなものを俺に見せたんだ!」
「……言ったでしょ。あれは不確かな未来。変えられる未来なの。そして、あなたの反応をみる限り、私も同じような結末を見たの」
 
 少女は続ける。
 
「私はこの世の全てを破壊したい。あの未来は私の望む未来。そして、あなたはあの時笑っていた。それは変えられる未来かも知れないけど、変わることを私は望まないわ」
 
 すると、辺りが暗闇に包まれていく。
 
「ま、待て!」
「あなたが変えようと努力するのは問題ない。けど、この『魔法』は大きく流れは変えられないの。細かな出来事は変えられても、結末は大きくは変わらない。人の生き死にが、その結末に影響を与えないのなら、人の生死の運命を変えられるかもね」
 
 そう言い残して、少女は暗闇に消える。
 
「待て! せめて名前を……」

 すると、暗闇から声だけが聞こえる。

「……名前は言えないわ。でも覚えておいて。私達は必要になった時、貴方の側にいる。これだけは覚えておいて」

 すると、今度は光りに包まれる。
 
 
 
「……戻ってきたか」
 
 気が付けば元の宴の場に戻っていた。
 
「……一体あいつは……」
「……勘助、勘助」
 
 すると、声がする。
 
「……ちょっと苦しい」
「あ、ごめん! レナ。大丈夫だったか?」
 
 すっかり忘れていたが、レナを抱きしめたままだった。
 俺の問いにレナは嬉しそうに頷く。
 
「ん。悪くはなかった」
「そうか……」
 
 なにはともあれ、彼女は敵では無いのだろう。
 ……警戒だけはしておくが、他言はしないほうがいいかもしれない。
 
「……レナ。さっきの事は内緒だ」
「そうなの? フィアナ位には話したほうが……」
「いや、変に心配させたくないしな。内緒にしておこう。二人だけの秘密だ」
 
 そう言うと、レナは少し嬉しそうにする。
 
「うん! そうする!」
 
 ……心配事は絶えないが、今は先に進もう。
 足踏みはしていられない。
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