143 / 155
未来
しおりを挟む
「……ここは……」
暗闇の中をレナとともに進む。
はぐれないように手をつなぎながら進む。
見えるのは僅かに足元のみである。
すると、声が響く。
「なんか一人ついてきてるし……まぁ良いか」
「そろそろ姿を現したらどうだ? 敵じゃあ無いんだろ?」
「……仕方無いわね」
すると、暗闇が晴れる。
そこは、ファレスの宴の場ではなく、森の中であった。
「な……いつの間に……」
「……勘助、気を付けて」
レナが刀を抜く。
相当に警戒している。
俺も刀に手をかける。
「え?」
「残念だけど、武器は没収させてもらったわ。まぁ、そちらのお嬢さんは想定外だったから対象外だったけど……」
気が付けば、目の前には不思議な少女が立っていた。
歳は俺と同じくらいだろうか。
黒髪、黒い目、日本人とよくにているが、顔立ちは違う。
腰ほどまで伸びた長い髪と、黒い服装がよく似合う女性だった。
「……あんたは?」
「自己紹介はまた今度。あいにくと時間が無いからね。私はあんたに助言をあげるために来たの」
「……怪しすぎる。近寄らないで」
レナが刀を構えて俺と少女の間に立つ。
「大丈夫。近寄らなくても出来るから」
少女は手をかざす。
その様子に、レナは警戒心をマックスにする。
「っ!」
「これはこの先のあるかもしれない出来事……あなたの行動次第で、結果は変わるわ」
「……未来視、か」
「そ、話が早いわね。あと一つだけ言っておくと、私はあなたの味方よ。何があってもね。それだけは覚えておいて」
すると目を瞑り、何かを唱え始める。
『覗けば見え、覗かねば見えず、見えし物が未来かどうかも分からない』
少女の足元が光り始める。
そして、その光は見覚えのある文様であった。
「……これは……魔法陣?」
そう言うと、少女は少し笑った。
そして、詠唱を続ける。
『不確かな未来、どう転ぶかは、あなた次第。それでも、覗けば何かは変わる。変えねばならない物がある』
少女は目を開く。
『目を見開き、見定めよ。己の宿命を。ビジョン』
そういい終わると、辺りが眩い光りに包まれる。
「……これは……」
辺りにはモヤがかかっている。
暫くすると、霧が晴れていった。
「あれは……俺か? フィアナとレナも……一体これは……」
そこには、俺がフィアナとレナと共に川辺で涼んでいる様子が見て取れた。
俺は雲の上から覗いているような事になっている。
そこで、あの少女が言っていた言葉を思い出した。
「これが……未来視なのか?」
すると、目の前の俺達が、いきなり襲われる。
矢の雨が降り注ぐ。
俺達は成す術なく矢に当たり、それでも二人を守るために二人を抱きかかえて川に落ちる。
「っ!」
すると、急に場面が流れる。
そこには、見たくない光景が流れていた。
「な……」
俺が動かなくなったフィアナとレナ、二人の手を握り、泣いていた。
その傍らには先程の少女が。
表情は見えないが、決して明るい雰囲気では無い。
「二人が……死ぬ? ……こんな未来視……信じられるか……」
また場面が流れる。
今度は、俺が王冠を被り、魔物達を率いて村々を蹂躙していく光景だ。
街の人々が囚われ、処刑されていく光景を見て、俺は笑っていた。
「一体……何が……」
そんな俺の隣には、先程の少女のみ。
サナンも、ジョバンニさんもキサラさんやサティスもカルラさんも誰もいない。
「勘助?」
「っ……レナ?」
気が付けば俺は元の場所に戻っていた。
元の場所と言っても宴会の場ではなく少女のいた所だ。
「……レナ……」
「ふぇっ!?」
俺はレナを抱き寄せる。
不確かな未来の光景とは言え、俺は二人を守れなかったのだ。
「そう……あなたも同じ未来を見たのね」
「お前……あれは一体何だ!? なぜあんなものを俺に見せたんだ!」
「……言ったでしょ。あれは不確かな未来。変えられる未来なの。そして、あなたの反応をみる限り、私も同じような結末を見たの」
少女は続ける。
「私はこの世の全てを破壊したい。あの未来は私の望む未来。そして、あなたはあの時笑っていた。それは変えられる未来かも知れないけど、変わることを私は望まないわ」
すると、辺りが暗闇に包まれていく。
「ま、待て!」
「あなたが変えようと努力するのは問題ない。けど、この『魔法』は大きく流れは変えられないの。細かな出来事は変えられても、結末は大きくは変わらない。人の生き死にが、その結末に影響を与えないのなら、人の生死の運命を変えられるかもね」
そう言い残して、少女は暗闇に消える。
「待て! せめて名前を……」
すると、暗闇から声だけが聞こえる。
「……名前は言えないわ。でも覚えておいて。私達は必要になった時、貴方の側にいる。これだけは覚えておいて」
すると、今度は光りに包まれる。
「……戻ってきたか」
気が付けば元の宴の場に戻っていた。
「……一体あいつは……」
「……勘助、勘助」
すると、声がする。
「……ちょっと苦しい」
「あ、ごめん! レナ。大丈夫だったか?」
すっかり忘れていたが、レナを抱きしめたままだった。
俺の問いにレナは嬉しそうに頷く。
「ん。悪くはなかった」
「そうか……」
なにはともあれ、彼女は敵では無いのだろう。
……警戒だけはしておくが、他言はしないほうがいいかもしれない。
「……レナ。さっきの事は内緒だ」
「そうなの? フィアナ位には話したほうが……」
「いや、変に心配させたくないしな。内緒にしておこう。二人だけの秘密だ」
そう言うと、レナは少し嬉しそうにする。
「うん! そうする!」
……心配事は絶えないが、今は先に進もう。
足踏みはしていられない。
暗闇の中をレナとともに進む。
はぐれないように手をつなぎながら進む。
見えるのは僅かに足元のみである。
すると、声が響く。
「なんか一人ついてきてるし……まぁ良いか」
「そろそろ姿を現したらどうだ? 敵じゃあ無いんだろ?」
「……仕方無いわね」
すると、暗闇が晴れる。
そこは、ファレスの宴の場ではなく、森の中であった。
「な……いつの間に……」
「……勘助、気を付けて」
レナが刀を抜く。
相当に警戒している。
俺も刀に手をかける。
「え?」
「残念だけど、武器は没収させてもらったわ。まぁ、そちらのお嬢さんは想定外だったから対象外だったけど……」
気が付けば、目の前には不思議な少女が立っていた。
歳は俺と同じくらいだろうか。
黒髪、黒い目、日本人とよくにているが、顔立ちは違う。
腰ほどまで伸びた長い髪と、黒い服装がよく似合う女性だった。
「……あんたは?」
「自己紹介はまた今度。あいにくと時間が無いからね。私はあんたに助言をあげるために来たの」
「……怪しすぎる。近寄らないで」
レナが刀を構えて俺と少女の間に立つ。
「大丈夫。近寄らなくても出来るから」
少女は手をかざす。
その様子に、レナは警戒心をマックスにする。
「っ!」
「これはこの先のあるかもしれない出来事……あなたの行動次第で、結果は変わるわ」
「……未来視、か」
「そ、話が早いわね。あと一つだけ言っておくと、私はあなたの味方よ。何があってもね。それだけは覚えておいて」
すると目を瞑り、何かを唱え始める。
『覗けば見え、覗かねば見えず、見えし物が未来かどうかも分からない』
少女の足元が光り始める。
そして、その光は見覚えのある文様であった。
「……これは……魔法陣?」
そう言うと、少女は少し笑った。
そして、詠唱を続ける。
『不確かな未来、どう転ぶかは、あなた次第。それでも、覗けば何かは変わる。変えねばならない物がある』
少女は目を開く。
『目を見開き、見定めよ。己の宿命を。ビジョン』
そういい終わると、辺りが眩い光りに包まれる。
「……これは……」
辺りにはモヤがかかっている。
暫くすると、霧が晴れていった。
「あれは……俺か? フィアナとレナも……一体これは……」
そこには、俺がフィアナとレナと共に川辺で涼んでいる様子が見て取れた。
俺は雲の上から覗いているような事になっている。
そこで、あの少女が言っていた言葉を思い出した。
「これが……未来視なのか?」
すると、目の前の俺達が、いきなり襲われる。
矢の雨が降り注ぐ。
俺達は成す術なく矢に当たり、それでも二人を守るために二人を抱きかかえて川に落ちる。
「っ!」
すると、急に場面が流れる。
そこには、見たくない光景が流れていた。
「な……」
俺が動かなくなったフィアナとレナ、二人の手を握り、泣いていた。
その傍らには先程の少女が。
表情は見えないが、決して明るい雰囲気では無い。
「二人が……死ぬ? ……こんな未来視……信じられるか……」
また場面が流れる。
今度は、俺が王冠を被り、魔物達を率いて村々を蹂躙していく光景だ。
街の人々が囚われ、処刑されていく光景を見て、俺は笑っていた。
「一体……何が……」
そんな俺の隣には、先程の少女のみ。
サナンも、ジョバンニさんもキサラさんやサティスもカルラさんも誰もいない。
「勘助?」
「っ……レナ?」
気が付けば俺は元の場所に戻っていた。
元の場所と言っても宴会の場ではなく少女のいた所だ。
「……レナ……」
「ふぇっ!?」
俺はレナを抱き寄せる。
不確かな未来の光景とは言え、俺は二人を守れなかったのだ。
「そう……あなたも同じ未来を見たのね」
「お前……あれは一体何だ!? なぜあんなものを俺に見せたんだ!」
「……言ったでしょ。あれは不確かな未来。変えられる未来なの。そして、あなたの反応をみる限り、私も同じような結末を見たの」
少女は続ける。
「私はこの世の全てを破壊したい。あの未来は私の望む未来。そして、あなたはあの時笑っていた。それは変えられる未来かも知れないけど、変わることを私は望まないわ」
すると、辺りが暗闇に包まれていく。
「ま、待て!」
「あなたが変えようと努力するのは問題ない。けど、この『魔法』は大きく流れは変えられないの。細かな出来事は変えられても、結末は大きくは変わらない。人の生き死にが、その結末に影響を与えないのなら、人の生死の運命を変えられるかもね」
そう言い残して、少女は暗闇に消える。
「待て! せめて名前を……」
すると、暗闇から声だけが聞こえる。
「……名前は言えないわ。でも覚えておいて。私達は必要になった時、貴方の側にいる。これだけは覚えておいて」
すると、今度は光りに包まれる。
「……戻ってきたか」
気が付けば元の宴の場に戻っていた。
「……一体あいつは……」
「……勘助、勘助」
すると、声がする。
「……ちょっと苦しい」
「あ、ごめん! レナ。大丈夫だったか?」
すっかり忘れていたが、レナを抱きしめたままだった。
俺の問いにレナは嬉しそうに頷く。
「ん。悪くはなかった」
「そうか……」
なにはともあれ、彼女は敵では無いのだろう。
……警戒だけはしておくが、他言はしないほうがいいかもしれない。
「……レナ。さっきの事は内緒だ」
「そうなの? フィアナ位には話したほうが……」
「いや、変に心配させたくないしな。内緒にしておこう。二人だけの秘密だ」
そう言うと、レナは少し嬉しそうにする。
「うん! そうする!」
……心配事は絶えないが、今は先に進もう。
足踏みはしていられない。
0
あなたにおすすめの小説
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる