歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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決戦に向けて

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「皆様方! 私は、魔王軍の軍事を担当しております、佐切勘助と申します!」
 
 後日、宴が終わり、皆が英気を養った数日後。
 俺は全軍の意思統一を目的とした演説を計画した。
 各軍首脳陣と連携し、十万規模の大軍に一気に声を届ける為にスキル『拡声』を持った者達を集めて演説を行った。
 
「我々の最終目標は、今この世界を支配していると行っても過言ではないザルノール国を打倒すること! そして、スキル至上主義社会を打ち滅ぼす事だ!」
 
 ここらで敬語はやめておく。
 士気を高め、指揮する者は誰かを知らしめるのに、敬語は不要だ。
 
「今この世界は優秀なスキル持ちがどれほどいるかでその国の軍事力が変わってしまう! どれほどの国力を有していても、スキル持ちが生まれなければその国は弱小国となる! 経済面に置いてもそうだ! ここに集った諸国の方々も、同じ経験があるだろう!」
 
 そして、確証は無いザルノールの悪評も振りまく。
 
「しかしなぜザルノールは優秀なスキル持ちを多数有しているか! その理由は二つある! まず一つ目は私のような勇者を召喚するからだ! 勇者には優秀なスキルが与えられる事が多い! それだけで、軍事力は賄える! しかし考えたことはないか? 何故、この世界とは何の関係もない我々異世界人が、スキルを有することが出来るのかを!」
 
 そう言うと、少しざわめき始める。
 
「確かに……考えたこともなかったな……」
「何でだ?」
「理由は判明している! 古代からのエルフの資料を多く有するノージリア、そしてエルフの方々の直接の知恵のお陰で判明した!」
 
 ここが一番の肝だ。
 
「スキルとは、魔法である! 太古の昔に存在したとされる魔法が、形を変えて今も存在している! それがスキルなのだ! ザルノールはその魔法をスキルにし、人に付与する術を持っているのだ!」
「な……」
「そんなの卑怯じゃないか! 俺達はスキルを手に入れられるかどうかも怪しいんだぞ!」
「……じゃあ勇者召喚もスキルだって言われてるけど……魔法なのか?」
 
 中々盛り上がってきた。
 想定通りのシナリオだ。
 
「そんな不平等が許されていいはずが無い! 我々はザルノール王家を打倒し、スキルによる不平等な社会を根絶する! そのためには、諸君の協力が必要不可欠なのだ! その為にも! スキルによる差別をしない社会を築いて来た魔族が先導し、皆の意見を取り入れて新しい社会を築いて行かなければならないのだ!」
 
 俺は拳を上げる。
 
「さぁ、戦え! 平等な社会の為! さぁ、戦え! ザルノールの横暴を打ち倒す為に! 諸君らの名は、歴史に刻まれることになるだろう! ついに明日、我々はザルノールを征服するために進軍するのだ!」
 
 そういい終わると、歓声が上がる。
 
「やってやるぞ! ザルノールがなんだ! 奴らなんて屁でもないぜ!」
「そうだ! ファレスも圧倒的不利で勝てたんだ! 何も怖くねぇぜ!」
 
 これで、演説は終わった。
 しかし、先日の少女の件もある。
 不安要素は絶えないが、今はやれることをやろう。
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