歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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最後の進軍

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「全軍! 目標はザルノール王都! 進め!」
 
 俺の号令で侵攻軍はザルノールの王都へ向けて進軍を開始する。
 その数、十五万。
 進行準備をしているうちに義勇兵や、更に他の国々からも兵が集まり、参陣していた国も出し渋っていた兵を出してきたお陰でこの数まで膨れ上がった。
 
「もう少し待ってもよかったんじゃない? 逃げ出した私が言うのもなんだけど、近衛騎士団は精強よ? スキルなんか無かったとしても充分強いし……」
「いえ、佐切様はファレス戦での敗走兵が、ザルノールへ帰参することを忌避されたのです。ですよね?」
 
 ここ最近、フィアナは俺の意図を前にもましてくんでくれるようになった。
 非常に助かるが、フィアナの成長著しく、俺の立ち場が無くなりそうで不安だ。
 
「そうだ。先の戦が敵の主力なのは間違いないが、それでもかなりの戦力を温存しているはず。この軍に匹敵するレベルの兵力をな。今度はこちらが攻める番だ。あまり敵に猶予を与えたく無い。それに、ザルノールの首都の手前には首都を守る城塞群がある。敗走兵が集まるならそこだ。そこに集まって難攻不落になられても困るからな……今なら数も少ない。まさに攻め時なんだ」
「成る程ね……近衛騎士団の頃も思ったけど、隙間なく守る為にかなりの数の城塞が建てられてるから、一つ一つの守りが薄いの。その分、一つが攻められている間に他の城塞から援軍が来て殲滅する作戦だけど、兵が集まったら確かに大変かもね。そうじゃなくても大変だけど」

 勿論、策は練ってある。
 すると、ジョバンニさんがこちらを見つめて来る。

「ふふふ……さすがは佐切殿。無論、城塞群を突破する術もあるのだろう? 聞かずとも分かる。初めて出会った頃よりも知略が磨かれて来たのではないか?」
 
 ジョバンニさんは自分の事のように喜ぶ。
 思えば彼がいなかったら俺はここには居なかった。
 本当に、俺一人ではここまでこれなかったな。
 
「いえ。どれもみんなが居てくれたお陰ですよ。この世界に来たばかりの俺で、一人だったら此処までこれなかったでしょう」
「佐切殿!」
 
 すると、後方からガルン自ら馬を飛ばして俺達の元までくる。
 
「ガルン王。いかがなさいましたか?」
「いや、そなたの考えを聞きたくてな。ゴルンのドワーフ軍がファレスに来なかったと言うことは、そのままザルノールに向かったと考えても良いと思うか?」
「そうですね。それはまず間違いないでしょう」
「そうか……」
 
 すると、ガルンは不安そうな顔をする。
 
「どうかしましたか?」
「いや、ドワーフは籠城戦を得意としている。この先には城塞群があるだろう? 城に籠もられたら中々に……」
「いえ、攻城戦にはなりませんよ」
 
 俺の言葉に、皆が耳を傾ける。

「それに、屈強なドワーフ軍を前哨戦で損耗させるとは思えません。決戦に向けて温存させるでしょう」
「成る程な……ならば、戦うことになるのは本城か」
 
 俺は頷く。

「そして、兵の数もまだまだ増える予定です。この後の戦いで策が上手く行けば、ね」
「どのような策か、聞いてみても良いか? 敵将である儂に教えてくれるならな」
 
 すると、縛られ、前方の馬車の荷台にいたドルーガさんが話しかけてくる。
 正直、彼とは軍略について語り合いたい。
 これだけの監視で、今さら逃げることも出来ないだろうし、話してしまっても……。
 いや、やっぱり駄目だな。
 この人全然逃げられるじゃん。
 
「駄目ですね。ドルーガさん、逃げる手段残してるでしょう」
「む……」

 今思えばドルーガはゴルンのドワーフ軍からファレスに瞬間的に移動している。
 それはつまり、転移系スキル持ちの協力があるということだ。
 何かしらの合図でドルーガはすぐさまここを離れる事が出来るだろう。

「可能な限り情報を集めてから逃げる算段でしょうけど、そうは行きませんよ」
 
 俺はドルーガさんの作戦を見抜けたことが嬉しかったのか、つい笑みがこぼれてしまった。
 そんな様子を見て、ドルーガさんも諦めたようだった。
 
「……まぁ良い。単純にお主の策には興味がある。直接見させてもらうとしよう」
「えて。楽しみにしておいてください」
 
 この人が向こうに帰ってしまえば、いよいよ勝つのも難しくなる。
 監視の目を増やすとするか。
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