歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
146 / 155

城塞群突破戦

しおりを挟む
「来たか……」
 
 ザルノールの首都を守る、クモの巣のように張り巡らされた城塞群。
 その先端に、ついに魔王軍が迫る。
 
「我等は寡兵! されど敵が来たら仲間がすぐさま援軍に駆けつけてくれる! 敵が取れる最も確実な策はすべての砦を同時に攻略すること! だがこの数ではそれも難しい! 臆することはないぞ!」
 
 一つ一つの城塞には千近くの兵がいる。
 先のファレス攻略戦に多くが連れて行かれ、その戦力は激減している。
 しかし、大量の城塞のおかげで、城塞群に配されている兵を全て合わせると、五万近くの兵がいることになる。
 ザルノールは水源地となっており、つまりは高地にあるので大小様々な山がある。
 それに加え、街道には勿論砦が置かれ、多くの駐屯地もある。
 だが、ここを超えたらザルノールの首都は目と鼻の先。
 ザルノールが都市開発の為に切り開いた平野があるだけである。
 ザルノールからすれば、ここが最後の砦なのだ。
 
「時間を稼げ! ファレス攻めに参加した、敗走した仲間たちが戻ってくる! それらが合流すれば、敵は包囲される! 勝機はそこにあるぞ!」
 


「……どういう事だ?」

 しかし、この将が守る砦に、敵は攻めてこなかった。
 魔王連合軍は、素通りしたのだ。
 
「ほ、報告します! 敵軍、隣の砦も無視しております!」
「何だと……どういうつもりだ!?」
「そ、それと……進軍方向は、ザルノール首都です!」
「な……奴ら、そのまま首都を落とす気か!?」
 
 しかし、目の前の軍は足を止める。
 
「何だ……何故止まった……」
 
 そこで、将は決断を下す。
 
「なにはともあれ今しかない! 奴らの前に陣取るぞ! 他の部隊にも連絡せよ! ザルノールに行かせてはならん! 我々にはこのお方も……」
「ほ、報告します!」
「今度は何だ!?」
「ここの一帯で最も高い丘陵地帯にあるロード砦が、すでに陥落しております!」
「何!?」
「あの軍にエルフとドワーフはおりません! 本隊を囮に、別働隊が夜闇に紛れ、ロード砦を落としたようです!」
 
 エルフという名を聞いた時、将は気付いた。
 すでに負けていることを。
 
「まずい……これはまずい! そんな所にエルフが陣取れば……」
 
 次の瞬間、矢が雨のように降り注ぐ。

「ぐっ……盾を掲げろ! 建物に隠れろ!」

 矢の雨が止む。
 そこは死者の山、ではなかった。
 死傷者は出なかったのだ。
 将は矢を拾い上げる。
 
「矢じりが……無い?」
「た、隊長……これを……」
 
 部下から渡された矢には、文がついていた。
 所謂、矢文である。
 見渡してみると、何本かに手に持っているものと同様に文がつけられていた。
 将は恐る恐る文を読み上げる。
 
「……これで自らの立ち場がおわかりになられた筈。もし討って出てこようというのであれば、野戦にてお相手する。無論、そちらは矢の雨を浴びながらとなるが。降伏するならば、捕虜として拷問を受けることになるかもしれないが命は保証する。我々に恭順の意を示し、軍門に下って共に戦えば、将来の地位も約束する、か……」
「おい。まさか降伏するつもりか?」
 
 すると、将は男に声をかけられる。
 しかし将は、虎の子であるこの男に戦局を覆すだけの力はないことを理解していた。
 
「何か考えがあるのか? 柴田殿。勇者ならば勇者らしく、この戦況をひっくり返して欲しいが」
「あぁ。総大将の眼の前に行ければ、確実に殺してやる。頭さえ打てば、勝ちなんだろ?」
 
 勇者、柴田勝彦は自信満々の笑みを浮かべる。
 
「俺のスキルなら、確実に殺してやるよ」
「……」
 
 将は文を見る。
 そこには、恭順の意を示す方法が書いてあった。
 が、柴田を見てそれを読み上げることは無い。
 
「……なら、お前の言う通りにしよう。総大将を討とうじゃないか」
 
 文をしまい、将は覚悟を決めるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...