歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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平野へ向けて

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「流石は佐切殿! 一兵たりとも失わずに、逆に兵を増やしてしまうとは!」
「いやいや、上手く事が進んでくれただけですよ」
 
 戦わずして勝ち、兵も集めることに成功した俺達は一度軍の再編成を行っていた。
 すると、ガルンは褒めながらも、疑問を投げかけてくる。
 
「ふふ、謙遜なさるな。しかし、矢文を射ていつでもお前たちの命を奪えるとアピールするのは素晴らしかったが……恭順の意の示し方、文の内容を勇者に確認されたらどうするつもりだったのだ?」
「あぁ、その心配はありません。放った矢文とオルテガ殿に渡った文は別物。放った矢文の方には恭順の意の示し方は書かれておりません」
「……どういう事だ? まさか、オルテガ殿だけを狙って……いや、さすがのエルフでもそんな事は……」
「うん。出来ないね」
 
 するとわ話を聞いていたカルラが入ってくる。
 
「いくらなんでも、何処にいるかも分からない相手に矢を放つなんて無理な話だ。まぁ、逆に言えば何処にいるかさえ分かっていれば当てられるけどね」
「流石はカルラさん……と言うしかないですね」
「で、結局どうやったんだ? 話を聞いてたら俺も気になっちまった」
「サナン……」
「うむ。サナン殿の言う通りだ。早く教えてくれぬか?」
 
 俺は策を自慢するかのように笑いながら答える。
 
「フフ……簡単なことですよ。内通者を作っておいたんです」
「内通者? いつの間に……」
「……まさか、タインか?」
「おお! ジョバンニさん、御名答!」
 
 すると、話を聞いていたジョバンニさんが話に入ってくる。
 タイン。
 忘れられているかもしれないが、かつてジョバンニさんが率いていた第六騎士団の副長だった男だ。
 俺は負傷兵を引き連れて帰った彼と密かに連絡を取り合い、様々なところに内通者を仕込んでいたのだ。
 
「まさかタインと組んでいたとは……確かに、あいつとは『念話』の契約を結んでいた……考えてみれば、宝の持ち腐れというわけか」
「彼ね……私にジョバンニが捕虜になったって伝えに来た。私、あの時カッとなって斬り殺す所だったわ」
 
 そんなロームの発言に、皆が黙る。
 
「え? そんな変なこと言った? 冗談よ」
「ふむ……私がどれ程愛されているか分かるな……嬉しい限りだ」
 
 ジョバンニはジョバンニで嬉しがっていた。
 まぁ、好きな人が自分を思ってくれていると言うのは、嬉しい事だ。
 
「……」
「佐切様? どうしました?」
 
 俺はふと、フィアナとレナを見る。
 特に意味があった訳ではなかったが、フィアナは何かを察したのか、慌てて口を開いた。
 
「わ、私も! 私も佐切様に何かあったら怒ります!」
「……ん? あぁ、そう言う……じゃあ私も怒る」
「……別に張り合わなくても良いんだぞ?」
「なんだい? 惚気かい? なら私も混ざろうかな」
 
 それらのやりとりを見たカルラは面白がってサナンに近づく。
 サナンはサナンで、カルラさんと距離を取っているようで、話は聞いていたが参加はしていない。
 
「なぁ、サナン。私に何かあったら怒ってくれるね?」
「も、勿論です!」
「じゃあ、私もあんたに何かあったら、怒るからね? たとえ死んでなかったとしても……ね?」
「う……」
 
 カルラは笑顔で、語りかける。
 その笑顔には、圧があった。
 サナンに改めて釘を差したようだ。
 
「も、勿論……はい……善処します……」
「わかればよろしい」
 
 ……とりあえず、各々順調そうだ。
 あと少しで勝てる。
 なにはともあれ、気を抜かないでいこう。
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