152 / 155
見回り ドワーフの野営地
しおりを挟む
「勘助、あれは何だったの?」
「え?」
まさか指輪の事だろうか。
ここで欲しいとねだられたら厄介だな……。
断る自信が無い。
「あの手紙。何が書いてあったの?」
「あぁ……その事か……保険だよ保険」
「成る程……皆の様子を見るって言ってたけど、さっきのやりとりを見るにそっちが目当てか」
「あぁ。サナンの言う通りだ。そして、こっちもな」
俺達が次に訪れたのはドワーフの陣。
スランディアさんのおかげでもう一つ目的が出来てしまった。
とにかく、今回用があるのは二人だ。
早速見つけられたな。
「ドルドさん。ゴズンさん」
「おお! 儂に何か用か?」
「いやいや、佐切殿は俺に秘密の策を授けに来てくれたのよ。なぁ?」
老練で立派な白ひげを生やした、小さなサンタクロースのようなドルドと赤っぽいひげを生やした樽のようなゴズン。
二人はそれぞれ再編成された第一第二軍団を指揮している。
ドルドが第一、ゴズンが第二軍団である。
「まぁ、秘密と言えば秘密ですが……必勝の策と言うわけでは無いですね」
「む? そうなのか? だが、王を通さず、儂らに話すと言うことは、それなりの理由があるのだろう」
「えぇ。念の為の保険です。大々的に部隊を動かすと面倒なことになりそうなので、お二人には少数で動いてもらいたいんです」
懐からスランディアさんに渡したものと同じ文を取り出す。
その時、ポケットからスランディアさんから貰った指輪が落ちる。
「あ」
「む? 何か落としたぞ」
それを、ゴズンが拾い上げる。
「これは……魔法の指輪か? それもエルフの……」
「あぁ、実は先程……」
俺は二人に、レナに聞こえないように先程あったことを説明する。
すると、二人は興味津々の様子であった。
そして、二人は怪しげな笑みを浮かべながら俺と肩を組んで、レナに聞こえないように二人から離れる。
「?」
幸運にもレナは何が何やら分かっていない。
「ふむふむ……成る程成る程」
「ここには儂とゴズン。ちょうど二人おる。そして、儂らの懐にはちょうど……」
二人は懐から指輪を取り出した。
「あぁ。魔法の指輪がある」
「なんで……」
「いや、前々からスランディア殿から相談があっての。我らドワーフとエルフが再度立ち上がるきっかけとなったお主に何か恩返しをしたいと。儂らがドヴェルグを抜け出す時に持ち出した家宝を用意しておいたんじゃ」
「あぁ。まさかこの指輪をお主に渡すことになるとは思わなかったがな」
「ドワーフに伝わる魔法の指輪には、数秒先の未来が見える魔法がついていると言われておる。と言っても条件が不明でな。本当にそんな効果がついているのかよく分からん」
俺は二人から指輪を受け取った。
「なにはともあれ、これで三つだな。数は揃った。いつでもあの二人に渡せるな。楽しみにしてるぞ!」
「うむ! 儂も若い頃はモテたのだがな……それでも結局妻は一人。お主が羨ましいわ!」
「ありがとうございます……あ、というか本題はそこじゃなくてですね。これを」
二人に改めて文を渡す。
「俺達の状況に何かしら変化があった場合、これを読んでください。念の為の保険です。今読んでも良いですけど、あまり決戦前に惑わせたく無いので。少数の部隊で動いて下さい」
「うむ。分かった」
「何があっても、儂らに任せよ!」
「さて……軍議はどうなったかな」
「俺が居なくても軍議は問題無く進んでたしな。フィアナも居るし、心配は無いさ」
「ん。大丈夫」
本陣に戻ると、案の定軍議は終わっていた。
本陣に入ってきた俺たちを見て、フィアナが喜びの声を上げる。
「あ、佐切様!」
「お疲れ様フィアナ。こっちは問題なかったよ」
「そうですか。それは何よりです。こちらが決戦の作戦になります」
フィアナから纏められた書類を受け取り、軽く目を通す。
とてもわかり易くまとめられており、見やすい。
「……うん問題無いな。流石はフィアナだ」
「ありがとうございます! あ、そうだ。佐切様、川へ偵察に行きませんか? 水深とかの調査で一度見ておきたくて。勿論、レナも一緒にね」
「もち」
「……危険すぎないか?」
「いえ、カレンさんが川に睨みをきかせているおかげで、敵もいません。それに、キサラさんが少数ながら護衛の兵を付近に置いてくれるそうですから、安心して下さい」
俺はキサラを見る。
すると、キサラは静かに頷いた。
「もし敵に見つかったとしても民間人として通せるように武器は持っていかないほうが良いんじゃないかってキサラさんと話して、丸腰で行くつもりです」
「……そうだな。敵が川に何かしらの罠を仕掛けている可能性もあるし……念の為言い逃れ出来るように民間人のフリして確認しておくか」
……少し不気味だ。
あの不確かな未来視が頭をよぎる。
「よっしゃ、俺も……」
「……いやサナン。さっきの三人にこれを渡してきてくれ」
俺は一枚の紙切れを渡す。
「え? 俺いけないの?」
「すまんな。ちょっと渡し忘れたんだ」
そして、気付かれないように『念話』でサナンに語りかける。
『……これはお前が読め』
『……取り敢えず、普通じゃない事は分かったぞ』
『天幕を出たら周りに人が居ないことを確認して、読むんだ』
『……了解』
サナンは紙切れを受け取り、天幕を後にする。
「さ、行こうか」
「はい!」
考えすぎならばそれで良い。
……何もなければそれでよし、だな。
「え?」
まさか指輪の事だろうか。
ここで欲しいとねだられたら厄介だな……。
断る自信が無い。
「あの手紙。何が書いてあったの?」
「あぁ……その事か……保険だよ保険」
「成る程……皆の様子を見るって言ってたけど、さっきのやりとりを見るにそっちが目当てか」
「あぁ。サナンの言う通りだ。そして、こっちもな」
俺達が次に訪れたのはドワーフの陣。
スランディアさんのおかげでもう一つ目的が出来てしまった。
とにかく、今回用があるのは二人だ。
早速見つけられたな。
「ドルドさん。ゴズンさん」
「おお! 儂に何か用か?」
「いやいや、佐切殿は俺に秘密の策を授けに来てくれたのよ。なぁ?」
老練で立派な白ひげを生やした、小さなサンタクロースのようなドルドと赤っぽいひげを生やした樽のようなゴズン。
二人はそれぞれ再編成された第一第二軍団を指揮している。
ドルドが第一、ゴズンが第二軍団である。
「まぁ、秘密と言えば秘密ですが……必勝の策と言うわけでは無いですね」
「む? そうなのか? だが、王を通さず、儂らに話すと言うことは、それなりの理由があるのだろう」
「えぇ。念の為の保険です。大々的に部隊を動かすと面倒なことになりそうなので、お二人には少数で動いてもらいたいんです」
懐からスランディアさんに渡したものと同じ文を取り出す。
その時、ポケットからスランディアさんから貰った指輪が落ちる。
「あ」
「む? 何か落としたぞ」
それを、ゴズンが拾い上げる。
「これは……魔法の指輪か? それもエルフの……」
「あぁ、実は先程……」
俺は二人に、レナに聞こえないように先程あったことを説明する。
すると、二人は興味津々の様子であった。
そして、二人は怪しげな笑みを浮かべながら俺と肩を組んで、レナに聞こえないように二人から離れる。
「?」
幸運にもレナは何が何やら分かっていない。
「ふむふむ……成る程成る程」
「ここには儂とゴズン。ちょうど二人おる。そして、儂らの懐にはちょうど……」
二人は懐から指輪を取り出した。
「あぁ。魔法の指輪がある」
「なんで……」
「いや、前々からスランディア殿から相談があっての。我らドワーフとエルフが再度立ち上がるきっかけとなったお主に何か恩返しをしたいと。儂らがドヴェルグを抜け出す時に持ち出した家宝を用意しておいたんじゃ」
「あぁ。まさかこの指輪をお主に渡すことになるとは思わなかったがな」
「ドワーフに伝わる魔法の指輪には、数秒先の未来が見える魔法がついていると言われておる。と言っても条件が不明でな。本当にそんな効果がついているのかよく分からん」
俺は二人から指輪を受け取った。
「なにはともあれ、これで三つだな。数は揃った。いつでもあの二人に渡せるな。楽しみにしてるぞ!」
「うむ! 儂も若い頃はモテたのだがな……それでも結局妻は一人。お主が羨ましいわ!」
「ありがとうございます……あ、というか本題はそこじゃなくてですね。これを」
二人に改めて文を渡す。
「俺達の状況に何かしら変化があった場合、これを読んでください。念の為の保険です。今読んでも良いですけど、あまり決戦前に惑わせたく無いので。少数の部隊で動いて下さい」
「うむ。分かった」
「何があっても、儂らに任せよ!」
「さて……軍議はどうなったかな」
「俺が居なくても軍議は問題無く進んでたしな。フィアナも居るし、心配は無いさ」
「ん。大丈夫」
本陣に戻ると、案の定軍議は終わっていた。
本陣に入ってきた俺たちを見て、フィアナが喜びの声を上げる。
「あ、佐切様!」
「お疲れ様フィアナ。こっちは問題なかったよ」
「そうですか。それは何よりです。こちらが決戦の作戦になります」
フィアナから纏められた書類を受け取り、軽く目を通す。
とてもわかり易くまとめられており、見やすい。
「……うん問題無いな。流石はフィアナだ」
「ありがとうございます! あ、そうだ。佐切様、川へ偵察に行きませんか? 水深とかの調査で一度見ておきたくて。勿論、レナも一緒にね」
「もち」
「……危険すぎないか?」
「いえ、カレンさんが川に睨みをきかせているおかげで、敵もいません。それに、キサラさんが少数ながら護衛の兵を付近に置いてくれるそうですから、安心して下さい」
俺はキサラを見る。
すると、キサラは静かに頷いた。
「もし敵に見つかったとしても民間人として通せるように武器は持っていかないほうが良いんじゃないかってキサラさんと話して、丸腰で行くつもりです」
「……そうだな。敵が川に何かしらの罠を仕掛けている可能性もあるし……念の為言い逃れ出来るように民間人のフリして確認しておくか」
……少し不気味だ。
あの不確かな未来視が頭をよぎる。
「よっしゃ、俺も……」
「……いやサナン。さっきの三人にこれを渡してきてくれ」
俺は一枚の紙切れを渡す。
「え? 俺いけないの?」
「すまんな。ちょっと渡し忘れたんだ」
そして、気付かれないように『念話』でサナンに語りかける。
『……これはお前が読め』
『……取り敢えず、普通じゃない事は分かったぞ』
『天幕を出たら周りに人が居ないことを確認して、読むんだ』
『……了解』
サナンは紙切れを受け取り、天幕を後にする。
「さ、行こうか」
「はい!」
考えすぎならばそれで良い。
……何もなければそれでよし、だな。
0
あなたにおすすめの小説
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる