歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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見回り ドワーフの野営地

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「勘助、あれは何だったの?」
「え?」

 まさか指輪の事だろうか。
 ここで欲しいとねだられたら厄介だな……。
 断る自信が無い。

「あの手紙。何が書いてあったの?」
「あぁ……その事か……保険だよ保険」
「成る程……皆の様子を見るって言ってたけど、さっきのやりとりを見るにそっちが目当てか」
「あぁ。サナンの言う通りだ。そして、こっちもな」
 
 俺達が次に訪れたのはドワーフの陣。
 スランディアさんのおかげでもう一つ目的が出来てしまった。
 とにかく、今回用があるのは二人だ。
 早速見つけられたな。
 
「ドルドさん。ゴズンさん」
「おお! 儂に何か用か?」
「いやいや、佐切殿は俺に秘密の策を授けに来てくれたのよ。なぁ?」
 
 老練で立派な白ひげを生やした、小さなサンタクロースのようなドルドと赤っぽいひげを生やした樽のようなゴズン。
 二人はそれぞれ再編成された第一第二軍団を指揮している。
 ドルドが第一、ゴズンが第二軍団である。
 
「まぁ、秘密と言えば秘密ですが……必勝の策と言うわけでは無いですね」
「む? そうなのか? だが、王を通さず、儂らに話すと言うことは、それなりの理由があるのだろう」
「えぇ。念の為の保険です。大々的に部隊を動かすと面倒なことになりそうなので、お二人には少数で動いてもらいたいんです」
 
 懐からスランディアさんに渡したものと同じ文を取り出す。
 その時、ポケットからスランディアさんから貰った指輪が落ちる。
 
「あ」
「む? 何か落としたぞ」
 
 それを、ゴズンが拾い上げる。
 
「これは……魔法の指輪か? それもエルフの……」
「あぁ、実は先程……」
 
 俺は二人に、レナに聞こえないように先程あったことを説明する。
 すると、二人は興味津々の様子であった。
 そして、二人は怪しげな笑みを浮かべながら俺と肩を組んで、レナに聞こえないように二人から離れる。
 
「?」

 幸運にもレナは何が何やら分かっていない。

「ふむふむ……成る程成る程」
「ここには儂とゴズン。ちょうど二人おる。そして、儂らの懐にはちょうど……」
 
 二人は懐から指輪を取り出した。
 
「あぁ。魔法の指輪がある」
「なんで……」
「いや、前々からスランディア殿から相談があっての。我らドワーフとエルフが再度立ち上がるきっかけとなったお主に何か恩返しをしたいと。儂らがドヴェルグを抜け出す時に持ち出した家宝を用意しておいたんじゃ」
「あぁ。まさかこの指輪をお主に渡すことになるとは思わなかったがな」
「ドワーフに伝わる魔法の指輪には、数秒先の未来が見える魔法がついていると言われておる。と言っても条件が不明でな。本当にそんな効果がついているのかよく分からん」
 
 俺は二人から指輪を受け取った。
 
「なにはともあれ、これで三つだな。数は揃った。いつでもあの二人に渡せるな。楽しみにしてるぞ!」
「うむ! 儂も若い頃はモテたのだがな……それでも結局妻は一人。お主が羨ましいわ!」
「ありがとうございます……あ、というか本題はそこじゃなくてですね。これを」
 
 二人に改めて文を渡す。
 
「俺達の状況に何かしら変化があった場合、これを読んでください。念の為の保険です。今読んでも良いですけど、あまり決戦前に惑わせたく無いので。少数の部隊で動いて下さい」
「うむ。分かった」
「何があっても、儂らに任せよ!」
 
 
 
「さて……軍議はどうなったかな」
「俺が居なくても軍議は問題無く進んでたしな。フィアナも居るし、心配は無いさ」
「ん。大丈夫」
 
 本陣に戻ると、案の定軍議は終わっていた。
 本陣に入ってきた俺たちを見て、フィアナが喜びの声を上げる。
 
「あ、佐切様!」
「お疲れ様フィアナ。こっちは問題なかったよ」
「そうですか。それは何よりです。こちらが決戦の作戦になります」
 
 フィアナから纏められた書類を受け取り、軽く目を通す。
 とてもわかり易くまとめられており、見やすい。
 
「……うん問題無いな。流石はフィアナだ」
「ありがとうございます! あ、そうだ。佐切様、川へ偵察に行きませんか? 水深とかの調査で一度見ておきたくて。勿論、レナも一緒にね」
「もち」
「……危険すぎないか?」
「いえ、カレンさんが川に睨みをきかせているおかげで、敵もいません。それに、キサラさんが少数ながら護衛の兵を付近に置いてくれるそうですから、安心して下さい」

 俺はキサラを見る。
 すると、キサラは静かに頷いた。

「もし敵に見つかったとしても民間人として通せるように武器は持っていかないほうが良いんじゃないかってキサラさんと話して、丸腰で行くつもりです」
「……そうだな。敵が川に何かしらの罠を仕掛けている可能性もあるし……念の為言い逃れ出来るように民間人のフリして確認しておくか」
 
 ……少し不気味だ。
 あの不確かな未来視が頭をよぎる。
 
「よっしゃ、俺も……」
「……いやサナン。さっきの三人にこれを渡してきてくれ」

 俺は一枚の紙切れを渡す。

「え? 俺いけないの?」
「すまんな。ちょっと渡し忘れたんだ」
 
 そして、気付かれないように『念話』でサナンに語りかける。
 
『……これはお前が読め』
『……取り敢えず、普通じゃない事は分かったぞ』
『天幕を出たら周りに人が居ないことを確認して、読むんだ』
『……了解』
 
 サナンは紙切れを受け取り、天幕を後にする。
 
「さ、行こうか」
「はい!」
 
 考えすぎならばそれで良い。
 ……何もなければそれでよし、だな。
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