歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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見回り エルフの野営地

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「おぉ、佐切殿。エルフの陣に何か用かな?」
「スランディアさん。お疲れ様です。決戦を前に皆の様子を見ておこうかなと思って」
 
 俺達はエルフの野営所を訪れる。
 陣も美しく、豪華でエルフの威厳を示していた。
 スランディアに軽く頭を下げる。
 
「今更ですけど、ファレスで俺に指揮を任せてくれて感謝します」
「何を今更……佐切殿の手腕は皆が十分に認めている。ここにいるエルフは勿論、私も佐切殿の実力を認めているとも。其方が今後、魔族、人間の架け橋となると確信している。この世界の今後のためにも、決して欠かせぬとな」
「そんなに評価してくれているとは……ありがとうございます」
 
 俺は懐から手に収まるほどに畳まれた紙を取り出す。
 
「こちらを」
「……これは?」
「俺やフィアナ、レナが行方知れずとなった場合……いえ、俺達の状況が何かしら変化した場合、これを読んでみて下さい」
「……その時だけか?」
「……まぁ、読んでみても構いませんが、最終決戦前に判断を惑わせてしまう可能性があるので。まぁ、何かあればこちらから知らせます。少数でもいいので武装した者達を連れてきて下さい」
「……うむ。分かった。お主が言うのなら、その必要があるのだろう」
「ありがとうございます。では……」
「佐切殿、待たれよ」

 すると、スランディアは懐から何かを取り出す。
 拳が広げられると、そこには指輪があった。

「……これは?」
「私の母の形見だ。古代のエルフの魔法の力が込められているという。病魔には効かないが、致命傷を一度だけ代わりに受けてくれる、魔法の指輪だ」
「……なぜ俺にこれを?」

 すると、スランディアは俺と肩を組んで、側にいたレナの聞こえない所に誘導する。

「佐切殿は、何やら指輪を探しておいでとか? 想い人に渡す……」
「……否定はしません。というか、広まってるんですか」
「うむ。意外と広まってるぞ。だから、これを渡すといい。あいにく一つしか用意出来なかったが、ドワーフならば似たような物を持っている筈だ。お主の分はこれで、残りはそちらを当たるのが良いだろう」
「……じゃあ、ありがたく頂きます」
 
 俺はもらった指輪をポケットにしまう。
 これはあれだな。
 ポケットには何が入ってる?
 と言いたくなるな。
 ……等とふざけている場合ではないか。
 全てが終わったらと思ってたが……腹を決める時が来た、と言うことか。
 
「エルフのしきたりで、二人の女性と結婚する時は優劣をつけない為に二人同時に渡すんだ。まぁ、どうするかは任せるが、知識として身につけておくと良い」
「そうですね……」
「戦場に身を置くとは、いつ死んでもおかしくないということだ。後回しにしてると後悔するぞ。後悔のないようにせよ」
 
 エルフの、人生の大先輩からのアドバイスは参考になる。
 ……とにかく、次に行くとするか。
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