歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
10 / 155

動き出す状況

しおりを挟む
 ジョバンニの詰所に寝泊まりして数日。
 その後も佐切は詰所に入り浸り続けた。
 その間もこの国の歴史や文化について調べ上げ、充分な情報を得ることが出来ていた。
 第六騎士団の団員の数名とも仲良くなり、このままここで暮らしていくこととなるのであろうと、佐切自身もそう考え始めていた。
 しかし。
 
「つまり、ここを出ていけと?」
「あぁ。そうだ」
 
 目の前には豪華な甲冑を身にまとった赤くて長い髪を後ろで一つにまとめた女性が立っていた。
 ジョバンニは所用で出かけており、他の騎士団員もまだ居なかった。
 
「いきなり来て失礼だとも思うのですが……まずは名乗っては?」
「無能な貴様に名乗る名前など無い。早々に立ち去らぬのならば、ここで斬る」
 
 女騎士は剣を抜く。
 その目は、本気であった。
 
「はいはい。わかったよ」
 
 佐切は両手を挙げ、女騎士の言う通りに詰所を出て行く。
 しかし、途中で足を止めた。
 
「なぁ、近衛騎士団の団長がこんな所に一人で出てきても良いのか?」
「な!? 何故私が近衛騎士団の団長だと……貴様は先日の仲間を与えられる儀式の時には居なかった筈……」
 
 その女騎士の反応に佐切は笑いを抑えきれなかった。
 
「ふ……ははは! おいおい、馬鹿正直過ぎるって」
「な、何だと!?」
「ジョバンニさんならもっと上手くやるよ? もっと精進しな」
 
 佐切は挑発しつつ、警戒を強めた女騎士を無視して歩き出す。
 
「そうそう。一つだけ助言。情報は出来る限り隠すこと。そんな豪華な甲冑で出歩いて、初対面なのに人の事を無能と言ったり、推測が非常に容易だったからさ。気を付けなよ」
「く……」
 
 佐切が挑発するも女性は動かなかった。
 そのまま、佐切は詰所を後にする。
 彼女が着ていた甲冑は、この異世界に来た時に周囲に居た兵が着けていた甲冑と非常に似ていた。
 そして、一般兵とは思えない豪華な意匠。
 団長とカマをかけると、見事に的中したのである。
 
(さて……一体どこの思惑か……まぁ良い。どうせこの国には居られないからな)
 
 佐切の調べた情報によれば、この国の基本的な考え方として、戦闘スキル持ちが優遇される風習があった。
 つまり、『念話』では生きていくのすら困難であるのだ。
 無論、ジョバンニに掛け合えば軍属として活躍も可能だろうが、あの女性がいるのならば、それも難しいのではと予測がついた。
 
「さて……これからどうした物か……ん?」
 
 暫く歩いていると広場にたどり着き、何やら騒がしい事に気が付く。
 
(喧嘩か……)
 
 巻き込まれないよう、物陰から様子を見る。
 その喧嘩の中心にいたのは、クラスメイトの真田護であった。
 
「あいつ……何をしてるんだ?」
 
 あまりクラスメイトと関わり合いになって来なかった佐切だったが、護は隣の席であったので知っていた。
 そして、護のスキルもしっかりと記憶していた。
 
(確かあいつのスキルは……なのに何で?)
 
 傍から見ると、一方的に殴られているように見える。
 しばらく様子を見ていると、護が顔面を殴られそうになる。
 しかし、護は軽く手をかざすのみであった。
 
「『シールド』!」
 
 護がそう言うと、敵対していた男との間に光の壁が現れる。
 拳は遮られ、護に届くことはなかった。
 しかし。
 
「がっ……」
 
 護は後頭部を思い切り殴られる。
 そして、今度は振り向きそちらに手をかざしてシールドを展開する。
 しかし、今度はまた別方向から殴られ、護は一方的に殴られていた。
 
「……成る程」
 
 すると、そこに別の男が現れ、護を襲っていた連中をなぎ倒していく。
 明らかに不利だと悟った連中は急いでその場を後にしていた。
 
「大丈夫か!? 護!?」
「あぁ。問題無いよ。ありがとうゴルドー。……彼等はスキルを持っていない人達さ。憂さ晴らしに付き合ってあげてたんだ」
「成る程……奴ら、魔王派の生き残りか……流石は勇者様。だが自分の身は大事にしてくれよ? 今度は大事な戦があるんだからな」
 
 その会話を聞き、佐切は歓喜する。
 
(……戦! 一体何処で……規模は? 魔王派とも言ってたな……気になる要素が多すぎるな……調べるとするか)
 
 少しずつ、だが確かに事は動き出そうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...