歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
18 / 155

王都脱出

しおりを挟む
「……ふぁ」
「おい! ちゃんと警備しろよ! 王都とはいえ、ここは弱点なんだからな。……ま、眠いもんは眠いけどな」
 
 下水道の出口。
 それは多数あり、そのうちの一つ、北川の出口の監視要員の二人はのんびりと警備していた。
 というのも、確かにここ下水道は王都の地下に出るので、弱点ではあったが、既に魔王軍にここまで到達する力はなく、警備も主な目的は魔獣が入りこまないかどうかであった。
 その魔獣も強いものは王都周辺には存在していなかった。
 
「あ~あ、とっとと帰りたい。そして寝たい!」
「まぁそう言うな。もう夜だし、そろそろ交代の時間だろ」
 
 王都はこのこの世界でもかなり標高の高い位置に属しており、多くの国々はこの王都の王城が築かれている山から流れる川によって水資源を得ている。
 無論、この大陸に流れている川全てがこの王都から流れている訳では無いが、この川は多くの国々に跨っており、様々な恩恵をもたらしているのは事実であった。
 そのため、下水も最低限の処理が施され、川にそのまま流しているのである。
 
「……なぁ、下水って言っても処理されてるんだから飲めるんだよな?」
「やめとけやめとけ。いくら処理されてるって言っても下水だぞ?」
「でも、途中で本当の川の水と合流して、下水は薄くしてるって話だし……魚も泳いでるんだぞ? 行けるって」
「……腹壊しても知らんぞ」
 
 衛兵の一人が武器を置き、水を飲もうと川に顔を近づける。
 
「ん?」
「どうした? ゴミでも浮いてたか?」
 
 水を飲もうとしていた衛兵は不思議そうな顔をしながら少しずつ川から顔を遠ざけていた。
 
「いや……なんか……」
 
 しかし、川と顔との距離は縮まらない。
 
「み……水が増えている……ような……」
 
 すると、川の水がどんどんと増えてくる。
 その勢いは凄まじかった。
 不思議に思い、下水道の出口を見る。
 すると、鉄砲水かのように凄まじい勢いの流れが押し寄せて来ていた。

「うわぁっ!」

 水を飲もうとしていた衛兵はすぐさまその場を離れる。
 すると、下水道の中から、一艘の船が流れが増した川に乗って飛び出して来た。
 
「どけどけ! 邪魔だ!」
 
 その船は十数人乗せていたように見えたが、一瞬の内に衛兵の二人を追い越し、川の流れに乗って消えて行く。
 
「な……何だ」
「お、おい! 何してる! 追うぞ!」
 
 水を飲もうとしていた男は度肝を抜かれ、尻もちをついていた。
 
「い、いやあれには追いつけねぇだろ……」
「……確かにな。とにかく報告だな」
 
 二人の衛兵は、追うのを諦めるのであった。
 
 
 
「いやぁ、こんなにも上手くいくなんてな! 流石は軍師殿!」
「……いや、運が良かっただけだ」
 
 激流となった川の上、船に揺られながらサナンと話す。
 
「下水道の一部をせき止め、船を浮かべ、水かさの頃合いを見て堰を切って流れに乗って敵の警備を突破。知り合いの伝手で今夜の警備が俺達を捕捉できるスキルを持ってなかったのは知っていたからな」

 ジョバンニに王都を脱出する旨を伝えると、こちらの望んだ情報をくれた。
 ジョバンニにとっては魔王派を逃がす事と同意となり、裏切られる可能性もあったが、ジョバンニは裏切らなかったのだ。

「最初は全員が乗れるだけの船を作るなんて言われたから何かと思いましたよ……あんな短期間であり合わせのもので作った船でこの激流を乗り越えられるか不安でしたよ……」
 
 フィアナが不安を口にする。
 確かにそのとおりであり、そこが一番の不安要素でもあった。
 しかし、今のところ耐えられているのだから大丈夫だろう。
 すると、サナンがとある事を思い出す。
 
「そうそう、これは例の孫子の兵法とやらでは何に当たるんだ?」
「ん? そうだな……」
 
 顎に手を当て、少し考える。
 
「……地形は兵の助けなり、かな」
 
 実は何も考えてはいなかったのだが、そこは勢いでごまかす。
 少し意味は違う気もするが、孫子の兵法を知らない人間がこの一節だけ聞けば納得するだろう。
 すると案の定フィアナが乗ってくる。
 
「成る程! 流石は佐切様ですね!」
「……様付けはよしてくれ」
 
 何はともあれ、王都を脱出することに成功したのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...