歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
20 / 155

要塞街ファレス

しおりを挟む
「ここか……」
 
 北方、人類軍と魔王軍との最前線。
 ノアジール国、要衝街ファレス。
 ここは街全てが城壁に囲まれているどころか、二重三重と防壁が築かれている。
 更には常に膨大な数の兵士が駐屯している。
 まさに難攻不落の要塞都市であった。
 
「凄いな……」
 
 関所を越えてすぐに城壁は見えていたが、そこを越えてもまた城壁、それを越えて初めて街を囲っている城壁を目にすることが出来る。
 そして、巡回している兵は皆精鋭。
 見ただけでも歴戦の猛者である事は分かった。
 そして街に入れば、また度肝を抜かれる。
 
「こんなにも賑わってるとは……」
「でも……最前線だっていうのにこんなにも一般人がいるなんて……」
「見た所、観光客も多そうだな」
 
 サナンの言う通り、街には多くの人が行き交っていた。
 それは、身なり等からも観光客だということは明白であった。
 しかし、フィアナが不思議に感じるのも道理であり、ここは最前線である。
 それならば戦火を避け、人はあまり集まらず、寂しい街になるか、常に勤務明けの兵士等がいる街になるのが普通だ。
 
「それ程、魔王軍を脅威に感じていない証拠なんだろ……さて、何はともあれ、ここからどうするかだが……」
「流石に今日中に魔王領へ抜けるのは無理がある。ここは一先ず、手分けして宿を確保したり情報を集めたりが先じゃないか? 軍師殿」
「……あぁ。サナンの言う通りだな。そうしよう。……ん?」
 
 すると、すれ違った女性の耳が長い事に気がつく。
 
「あれは……エルフか」
「あぁ。ノージリアは元々エルフが暮らしていた地域でな。魔王軍が劣勢になり、この地が占領されると多くが魔王軍を離れ、移住させられた。今ははるか東の砂漠地帯に国を築いているらしい」
「成る程……念の為魔王と離して連携させない為か」
 
 すると、フィアナが頷く。
 
「はい。それに、この辺りは良質な木材がよく採れ、それがエルフの得意な弓に使われたとのことですが、草木が殆ど生えない砂漠に移住させ、その長所を奪おうとしたのだと噂されていますね」
「へぇ……書物じゃそこまでは書かれていなかったな」
 
 すると、先程のエルフの女性が城門を通ってすぐの建物に入って行く。
 そこは、娼館であった。
 
「……」
「そういえば、入ってすぐの娼館の裏路地に商人がいるとか……早速接触してみますか?」
「……いや、まずは宿を取ろう。その商人についてももう少し下調べしてから接触したい。手分けして取り掛かろう」
 
 皆は頷く。
 
「サナン。一班六人位で三つに分けて、それぞれ荷物を見張る班、宿を取る班、情報を集める班に振り分けてくれ」
「あぁ。了解した。あんたはどうするんだ?」
 
 サナンの問いに、少し間をおいてから周りに、いや、フィアナとレナに聞こえないように近くで答える。
 
「……フィアナとレナを暫く頼んだ」
「……ああ、成る程」
 
 サナンは察したようで、頷いた。
 
「任せろ。二人がお前の後を追わないようにしておくぜ」
「感謝する……が、別にやましい事をするわけじゃないからな?」
「なぁに、少し位は良いんだぜ?」
 
 ため息をつきつつ、改めて指示を出す。
 
「では、それぞれよろしく頼んだ。時は指定しないが、それぞれ頃合いを見て荷物の所に合流してくれ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...