歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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軍編成

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「では、この軍の編成について教えてもらえますか?」
「分かりました」
 
 キサラはサナンの必死の熱弁もあって、俺に全軍の指揮権を委ねる事を約束する。
 そして、軍の総数など、状況の説明に入るのであった。
 
「まず、この坑道の他にも、向かいの山にも同じような坑道が掘られており、そちらにも軍がいます。両方合わせて戦える者は五百程ですね」

 ここはちょっとした渓谷のようになっており、小さな川を挟んですぐ向こう側に山がある。
 そこにも軍勢が居るらしいのだが……

「合わせて五百!? 思ったよりも少ないな……」
 
 共に居る家族のせいでもっと居るように見えたが、非常に少なかった。
 それは、少し計算外であった。
 
「そうですね。魔都につながる道は一本なのですが、そこを封じる要塞があります。現在はそこに兵力が集中し、新兵とかも掻き集めて魔王軍の全戦力、一万の兵が駐屯しています。私達は念の為の備えです」

 キサラは机の上の地図を指差しながら説明する。

「要塞は一本道を封じてますが、守りは完璧とは言えません。要塞は分かれ道を封じる形で作られたので、メインのこの道以外にも、山道から要塞に至る道もあります。そちらは守りが決して強くはありません。敵は包囲を狙うはずなので、必ず部隊を分けて来るかと。ただ、この道は山道で広くはなく、渡れる兵も限られています。決して多くはないかと思われます」
「……全戦力でも一万か……少ないな。まぁ、陽動に戦力を割いてちゃ意味が無いからな……だとしても五百は少ないと思うが。これで一体どれだけの兵が釣れるか……そして、その釣った兵をいかにして留められるかが要ってことか……」
 
 恐らく人類側の魔王討伐軍は少なくとも総勢三万はくだらないだろう。
 多くて五万と見ている。
 そこから割かれる戦力。
 絶対に勝利を狙うのであれば……。
 
「恐らく、五千だな」
「……因みに、どうしてですか?」
「敵だってこちらがその弱点を補う為に動いているのは理解している筈だろう。ただ、局所的とはいえ負けるわけにも行かない。魔王軍が想定通りに、山道側に兵力を配置したとして、人類側が魔王軍側の割ける戦力が多くて三千~五千と推定したならば、最大数の五千で対応してくるはず。ということです」
「……なぜ、三千から五千なのでしょうか」

 すると、フィアナが質問してくる。
 フィアナのその積極的な姿勢に嬉しく思い、勿論すぐに答えた。

「この要塞は魔王軍最後の砦。敵もそれを重々承知している。だからこそ、弱点である山道側に展開する兵力は半分近くだと想像した。要塞を守る為にそっちを少なくしてやられたら元も子もないからな」
「成る程……勉強になります」
 
 キサラも頷き、納得したようであった。
 
「つまりは、五千対五百……十倍ですか」
「そうですね……」
 
 そして軽く咳払いする。
 
「孫氏曰く」
「……え?」
 
 キサラは唐突に始まったそれに少し戸惑って居たが、迷わずに続ける。
 
「用兵の法は、十なれば則ち之を囲む。五なれば則ち之を攻む。倍すれば則ち之を分かつ。敵すれば則ち能く之と戦う。少なければ則ち能く之を逃る。若かざれば則ち能く之を避く。故に、小敵の堅なるは大敵の擒なり。と、あります」
「……はぁ」
 
 キサラは全く意味を理解していなかった。
 無論、そのまま伝えた所で理解出来るはずも無いので、しっかりと解説する。
 
「まぁ、簡単に言うと自軍が敵の十倍ならばこれを囲み、五倍であればこれを攻め、二倍であれば分断し、互角の時は全力で戦い、少ない時は退却し、勝ち目がないと見たら戦わない。勝ち目がないときに戦えば敵の餌食になるという事です」
「……成る程」
 
 どうやら、キサラは理解してくれたようであった。
 
「ならば、この状況は一つ目の敵の十倍ならばこれを囲み、の逆になってます」
「……そうですね……しかし我々には逃げる選択肢は無い。この状況、その一節は何の約にも立たないのでは?」
 
 そのキサラの言葉に、笑顔で返す。
 
「この一節、軍を率いるものであればよくよく考えてみればすぐにでも分かる事。我々はそれを逆手に取ります」
 
 キサラはこちらの話を淡々と聞いてくれている。
 聞く耳は持ってくれそうだ。
 
「まず、兵力を増やします。それでもって、兵力差を縮める」
「……一体どうやって?」
「それは……」
 
 キサラに自分の策を説明していく。
 軍師の腕の見せどころである。
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